5つ並んだノブ、そして「回しすぎると悲鳴を上げる」という評判。Z-VEX FUZZ FACTORYに惹かれながらも、自分に扱いきれるのか不安で手が止まっている方は少なくないと思います。しかも本家のハンドペイント版は、気軽に手を伸ばせる価格ではありません。そこで選択肢になるのが、VEXTERシリーズのFUZZ FACTORYです。
VEXTERシリーズは「中身が同じ」FUZZ FACTORY
VEXTERシリーズ最大のポイントは、内部のパーツがハンドペイントモデルとまったく同一である点です。廉価版という言葉から連想されがちな、部品のグレードダウンや回路の簡略化はありません。違いは筐体の仕上げで、一台ずつ手で描かれるアートワークの代わりに、UVプリントによるグラフィックが採用されています。
つまり、FUZZ FACTORYというペダルが出す音そのものを手に入れたいのであれば、VEXTERで何も欠けるところはありません。塗装工程のコストを外した分だけ、価格が現実的になったモデルだと考えていただければと思います。
FUZZ FACTORYの音のキャラクター
回路は1960年代製のNOSゲルマニウムトランジスタ2石で構成されており、特定のヴィンテージファズを手本にしたものではないオリジナル設計です。ZVEXが挙げる守備範囲は、弾き止めた瞬間にスパッと切れるタイトなファズから、音が減衰していく間に主導権を奪い合うように暴れる相互変調発振、短波ラジオのような濁った音、面ファスナーを引き剥がすような質感、オクターブがかったファズまで。ひとつのペダルが出す音の幅としては、かなり異様な広さです。
設計者Zachary Vex自身が、5つのノブの名前は「最も影響が大きそうなパラメーターに付けた便宜的な呼び名」であり、実際には各部の動作レベルとバイアスを直接いじるものだと説明しています。一般的なファズのように「このツマミを上げれば歪みが増える」という素直な対応関係にはなっていません。ここが、このペダルが難しいと言われる理由です。
5つのノブが実際にやっていること
VOLUME
出力レベルです。ここだけは素直に働きます。
GATE
サステインが終わったあとのノイズを抑えるノブです。右へ回していくとスクイールやヒス、バズが消えていくので、消えた直前の位置で止めるのが基本の使い方になります。左へ回せばゲートが開き、逆にフィードバックのピッチを狙って合わせ込むこともできます。
COMPRESS
左へ回すとアタック感が付き、右へ行くほど柔らかくなります。振り切ると音が急激にピンチしたような質感に変わります。太いフィードバックファズを作り込むときの要にもなるノブで、STABを下げた状態で動かすと反応がまったく別物になります。
DRIVE
普通のファズとして使うときの歪み量、そして発振時のピッチと音の太さを決めます。ただしCOMPRESSを右に振り切っている状態では、このノブは機能しなくなります。効いていないと感じたら、まずCOMPRESSの位置を確認してみてください。
STAB
フィードバックのピッチをコントロールするノブで、基本は右に振り切って使います。2時より下げると音が柔らかく潰れていき、そのまま下げ続けると発振の領域に入っていきます。FUZZ FACTORYらしい暴れ方を引き出すのも、収拾がつかなくなるのも、ここ次第です。
まず試したい、公式のセッティング例
ゼロから探るとまず迷子になるペダルですが、取扱説明書には出発点となる5つのセッティングが時計の針の位置で示されています。ここから少しずつ動かしていくのが、遠回りのようで一番の近道です。
| セッティング | Vol | Gate | Comp | Drive | Stab |
|---|---|---|---|---|---|
| ハイコンプレッションファズ | 10時 | 3時 | 9時 | 5時 | 5時 |
| ベルクロファズ | 10時 | 7時 | 5時 | 5時 | 2時 |
| クリーン寄りのオクターブ相互変調 | 10時 | 2〜3時 | 7時 | 7時 | 5時 |
| スムースファズ | 10時 | 7時 | 3時 | 5時 | 5時 |
| ラジオファズ | 10時 | 7時 | 10時 | 12時 | ※下記参照 |
スムースファズはSTABを下げるほど角が取れていきます。ラジオファズだけは固定値ではなく、開放5弦を鳴らしながらSTABを右いっぱいの位置から少しずつ戻していき、面白いと感じたところで手を止める、という探り方が示されています。この一台の性格が、いちばんよく表れている指示かもしれません。
仕様と電源まわり
VEXTERシリーズにはオン/オフを示すLEDとセンターマイナス方式のDCジャックが備わっており、電池でも駆動します。特筆すべきは消費電流で、オン時3mA未満に抑えられています。取扱説明書の中では、約40mAを消費するチューブスクリーマーと引き比べて、プロトタイプの電池を3年間交換していないというエピソードまで添えられています。パワーサプライの容量を気にせずボードに組み込める点は、実運用でありがたいところです。
| 回路構成 | 5ノブ/1960年代製NOSゲルマニウムトランジスタ2石 |
| コントロール | Volume、Gate、Compress、Drive、Stab |
| 電源 | センターマイナスDCジャック/電池駆動対応 |
| 消費電流 | 3mA未満(オン時) |
| サイズ | 約119 × 60 × 46mm |
| 保証 | 購入から1年(保証カード送付で2年) |
ハンドペイント版とVEXTER、どちらを選ぶか
音で選ぶのであれば、判断材料はありません。中身が同一である以上、迷う理由がないからです。違いが出るのは、それ以外の部分になります。
- 仕上げ:ハンドペイントは一台ずつ手描きで、同じ個体が存在しません。VEXTERはUVプリントによるグラフィックです
- 保証:ハンドペイントモデルは生涯保証。VEXTERは1年(保証カード送付で2年)
- 価格:VEXTERのほうが手に取りやすい価格帯に設定されています
一点物の塗装と長期保証に価値を感じるならハンドペイント、まずこの音を自分の手元で試したいならVEXTER。そういう分かれ方をするシリーズです。
よくある質問
- VEXTERとハンドペイント版で音は変わりますか?
-
内部のパーツは同一です。違いは筐体の仕上げ、保証期間、そして価格になります。
- 意図せず発振してしまうときは、どう抑えればいいですか?
-
まずGATEを右へ回していき、スクイールやノイズが消えた直前の位置で止めてみてください。あわせてSTABを2時より下げないようにすると、通常のファズとして扱いやすくなります。
- DRIVEを回しても変化を感じません。故障でしょうか?
-
COMPRESSを右に振り切っている場合、DRIVEは機能しなくなる仕様です。COMPRESSを少し戻した状態で確認してみてください。
- 電池でも使えますか?
-
電池駆動に対応しています。オン時の消費電流が3mA未満と非常に少ないため、電池の持ちは良好です。DCアダプターを使う場合はセンターマイナスのものを選んでください。
- もっと低い帯域で発振させたい場合は?
-
低域を扱えるようにした派生モデルとして、3ポジションのサブスイッチを備えたFat Fuzz Factory、9ポジションのロータリースイッチとトーンコントロールを搭載したFuzz Factory 7があります。
FUZZ FACTORYは、思い通りに鳴らそうとするほど遠ざかっていくペダルです。それでも、ノブの意味を知って公式のセッティングから触り始めれば、暴れる部分と使える部分の境目は少しずつ見えてきます。VEXTERシリーズは、その入り口を現実的な価格に引き寄せたモデルです。

![Z-VEX ジーベックス / FUZZ FACTORY [VEXTER] 【ファズ】](https://effectorbox.com/wp-content/uploads/2026/08/z-vex-fuzz-factory-vexter.jpg)