初心者からはじめる「エフェクター自作 講座」〜組み立て編〜

初心者からはじめる「エフェクター自作 講座」〜組み立て編〜

エフェクターを自作してみたいけど何から始めればいいんだろう?道具やパーツは何が必要?費用は一体どれくらいかかるんだろう…。

そこで!これからエフェクター作りに挑戦してみたい初心者の皆さまにむけて自作エフェクター入門講座を開講いたします。

講師は”痛エフェクター”のパイオニア的ブランド「Sound Project “SIVA”」を主宰するビルダー小澤博氏。エフェクター作りの基本や基礎知識が学べるのはもちろん、実際に小澤氏が使用しているおすすめの工具やパーツもご紹介していただきます!趣味としてはもちろん、もっとスキルアップしたい方、さらには将来自分のエフェクターブランドを立ち上げてみたい本格派の方も必見のコンテンツです。


小澤博氏プロフィール
小澤博氏プロフィール
”痛エフェクター”のパイオニア的ブランド「Sound Project “SIVA”」を主宰するエフェクタービルダー。完全オリジナルのイラストを纏ったケースはもちろん、優れた機能とハイクオリティサウンドで世界中のアーティストから注目を集めている。最近ではエフェクターのみならずアンプキャビネットの開発を行うなど活躍の幅を広げている。
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エフェクター自作 講座メニュー

こちらでは、エフェクターの自作をこれから始めてみたいという初心者向けの内容から初めて、オリジナルのエフェクターを作るところまでを連続講座としてご紹介してまいります。

 
» 道具編
» 部品編(前編)
» 部品編(後編)
» 筐体加工編
» 塗装編
» 基板製作編
» 組み立て編
» 回路図記号と回路図のルール
» 各種作例(comming soon)
» PCB基板製作編[KiCAD](comming soon)
 

※メニュー項目は予定となります。再編する場合がございますのでご了承ください。
組み立て編

今回の自作エフェクター講座は組み立て編です。

前回までにエフェクターの外観となる筐体と、内部の基板が出来上がりました。これらを組み立てて最終的にエフェクターとして完成させます。

この記事ではエフェクターのOn/Offの切り替えは、『トゥルーバイパス』という方式を使います。エフェクターのOff(バイパス時)にバッファーを通らない方式です。

トゥルーバイパス方式は、エフェクターのOn/Off(Effect/Bypass)のためのFETを使った回路を組まなくて済み、比較的作りやすいのでこの方式を採用しました。

たくさんの配線材を使って配線をして行きます。配線材のビニール皮膜をたくさん剥くので、ワイヤーストリッパーを使うとかなり省力化出来ます。

今回も半田ごてを使います。半田ごては先端がとても高温になりますので、くれぐれも火傷や火事に気をつけて作業をしてください。

組み立て編は下記の構成で解説を進めていきます。

  1. 準備
  2. 道具や材料、配線図を準備します。

  3. トゥルーバイパスの配線
  4. 筐体に取り付けた部品と基板を組み立てます。

  5. 仕上げ
  6. エフェクターが正しく動作するか確認を行ったり、ノブをつけたり、細かい処理をして仕上げをします。

1:準備

1-1:道具、材料

まずは必要な道具と材料を用意します。

・基板と筐体
・スイッチなど部品
・ホットボンド
・ビニールテープ
・ハサミ
・ドライバー
・半田ごて
・半田ごて台
・はんだ
・ニッパー
・ラジオペンチ
・ワイヤーストリッパー
・ヘルピングハンズ

基板と筐体

前回の基板制作編で作った基板と、部品をある程度取り付けた筐体を準備します。
筐体にはすでに、ステレオジャック、モノラルジャック、DCジャックが取り付けてあります。

準備-01

スイッチなど部品

下記の部品を使います。

●3PDTスイッチ
バイパス回路を組むために使います。

●POT 10K Bカーブ
ボリューム操作のために使います。

●LED 5mm
エフェクターのOn/Offを視認するために使います。

●抵抗器 470Ω
LEDの過電流を防ぐ保護抵抗です。

●ダイオード 1N4007 一般整流用ダイオード
+と-の極性を間違えた電源を繋いでしまった時の保護対策として使います。

●熱収縮チューブ
配線が筐体などに触ってショートしないように、絶縁のために使います。普通のハサミで簡単に切れます。

準備-02

準備-03

ホットボンド

グルーガンという道具を使って、溶かした樹脂を使って対処物を固定するための道具です。普通の接着剤のように対象物に染み込んだりして破損させる心配が少ないので、LEDの固定と基板の絶縁などで使います。

準備-04

ビニールテープ

ビニールテープは読んだまま、ビニールで出来たテープです。ビニールは電気を通さないので、筐体内の絶縁処理に使います。

・半田ごて
・半田ごて台
・はんだ
・ニッパー
・ラジオペンチ
・ワイヤーストリッパー
・ヘルピングハンズ

これらに関しては前回の基板制作編でも使いましたので、そちらの説明をご覧ください。

1-2:配線図

基板制作編で用意しました基板レイアウト図と同じように、トゥルーバイパスの配線も配線図を用意します。

こちらが最終的に出来上がる配線を模式的に表した、トゥルーバイパス配線図です。

配線図最終

この図だけ見るとかなり配線が入り組んでいるように見えますが、実際に順を追って作業をしていけばそれほど難しいものではありません。

トゥルーバイパスの配線は今回作るブースター以外のディストーションやオーバードライブなど、ほかのエフェクターでも共通して使えるやり方です。一度覚えてしまえば、トゥルーバイパスの配線だけなら配線図を見ないでも組み立てられるようになるものです。

しかし、まずは配線図をしっかり確認して、間違いのない作業を心がけましょう。

2:トゥルーバイパスの配線

では、トゥルーバイパスの配線をしましょう。

2-1:3PDTスイッチの取り付け

まずは筐体に3PDTスイッチを取り付けます。このスイッチは、エフェクターのOn/Offを切り替えるために使うフットスイッチとなります。

3PDTスイッチは分解するとこのようになります。スイッチ本体とそれを取り付けるためのいくつかのパーツで出来ています。

トゥルーバイパスの配線-01

3PDTスイッチを取り付ける時には、まず最初にナットを本体に取り付けます。これはネジの完全に奥まで入れるのではなく、半回転くらい緩ませておきましょう。完全に奥まで入れてしまうと、滅多にありませんが固定する時に必要以上にナットが奥に回転して押し込まれ、スイッチ本体を破損することがあります。

ナットの次に菊ワッシャーを入れます。菊ワッシャーはスイッチの回転をある程度防いでくれます。

トゥルーバイパスの配線-02

この状態でスイッチを筐体に内側から差し込みます。スイッチには向きがあります。上から見ると端子が長方形をしていますので、写真にあります向きになるようにしましょう。

トゥルーバイパスの配線-03

トゥルーバイパスの配線-04

ナットは手で締められるうちは手で締めていきます。手では締められないようになったら、レンチを使います。いろいろな大きさのナットに対応できるからと、モンキースパナを使うのはあまりオススメしません。

適正な大きさのソケットレンチやメガネレンチを使うことをオススメします。3PDTスイッチに使われるナットは、ほとんどの製品で14mmのナットが使われていると思われます。

トゥルーバイパスの配線-05

トゥルーバイパスの配線-06

レンチでナットを締めていき、スイッチ本体が回転するようになったらペンチなどでしっかりとスイッチ本体をつかんで、さらに少しナットを締め込んで固定します。

あまり強く締め込みすぎるとネジ山を壊してしまいますので、手でスイッチを回そうとして回転しないくらいに固定できていれば大丈夫です。

トゥルーバイパスの配線-07

2-2:3PDTスイッチLED関係の配線

いよいよここからが組み立て作業の本番です。下記に示します配線図のピンクのラインを配線します。配線図にはスイッチの端子に端子番号が書いてあります。本文中に書かれますの端子番号と合わせて確認してください。

配線図(配線順)-01

まずは、前回の基板制作編でとっておいた抵抗器などの脚を使って、2番端子と9番端子の配線を作ります。抵抗器の脚を捨ててしまった方は配線材を使っても大丈夫です。

2番端子側から抵抗器の脚を入れて、9番端子へ通します。

トゥルーバイパスの配線-08

トゥルーバイパスの配線-09

9番端子ではラジオペンチを使って、抵抗器の脚がしっかりと端子に接するようにからげます。その状態で、9番端子と抵抗器の脚を半田付けして固定します。

半田の量は、端子の穴が塞がる程度に流し込めれば大丈夫です。端子に丸く団子のように半田が乗るのは、半田の量が多すぎます。

トゥルーバイパスの配線-10

トゥルーバイパスの配線-11

このままでは抵抗器の脚が他の余分な端子と接してしまう可能性が高いので、ラジオペンチで調整して写真のように他の端子との距離を取れるように調整します。

トゥルーバイパスの配線-12

トゥルーバイパスの配線-13

次は、Inputジャックのスリーブ端子に、3PDTスイッチの2番端子につながる配線材を半田付けします。スリーブ端子の位置はジャックの種類によって違いますので、選ばれましたジャックのどこの端子がスリーブ端子か確認して作業をしてください。

配線材を50mm程度に切り出して、ワイヤーストリッパーで両端の皮膜を剥きます。片側はInputジャックのスリーブ端子にからげるために、少し長めに皮膜を剥きましょう。

トゥルーバイパスの配線-14

トゥルーバイパスの配線-15

長めに皮膜を剥いた方をInputジャックのスリーブ端子にからげて、半田付けします。あらかじめ配線材の皮膜を剥いた部分を曲げおくと端子の穴に通しやすいです。

トゥルーバイパスの配線-16

スリーブ端子付近は狭くて指が入りづらいので、マイナスドライバーとラジオペンチを使って、配線材が端子にしっかりと接するようにからげてください。

トゥルーバイパスの配線-17

トゥルーバイパスの配線-18

トゥルーバイパスの配線-19

トゥルーバイパスの配線-20

しっかりとからげることができたら、半田付けします。狭い所にはんだごてを入れますので、ジャックの樹脂部分に半田ごてが触って樹脂を溶かさないように気をつけましょう。

半田の量は、配線材にしっかりと染み込み端子にも半田が乗るくらいにします。あまり多すぎてもよくありませんが、半田の量が少なくて後から外れてしまうこともあるので、最初のうちは多めに半田を溶かし入れるくらいで丁度いいと思います。

トゥルーバイパスの配線-21

トゥルーバイパスの配線-22

3PDTスイッチの2番端子に、Inputジャックのスリーブ端子に取り付けた配線材の反対側を繋ぎます。

2番端子にはすでに9番端子へとつながる抵抗器の脚が通っているので、これを少し端に寄せて端子の穴にスペースを作って配線材を通します。

普通の3PDTスイッチの端子の穴の大きさなら、22AWGの太さの配線材なら2本は入ります。小型の3PDTスイッチだと、端子の穴が小さいので配線材なども細いものにするか、より線をほぐして端子の穴に通すなどの工夫をしてください。

トゥルーバイパスの配線-23

ここでも、ラジオペンチを使って配線材をしっかりと端子にからげるようにします。

トゥルーバイパスの配線-24

2番端子に通した抵抗器の脚と配線材を半田付けします。抵抗器の脚と配線材の二つを半田付けしますので、両方がしっかりと半田付けされる十分な量の半田を流し込みましょう。

片側だけにしか半田ごての熱が伝わっていないと全体に半田が流れてくれないので、気をつけましょう。

トゥルーバイパスの配線-25

トゥルーバイパスの配線-26

2番端子の半田付けができたら、抵抗器の脚の余分なところがまだ伸びていると思いますので、ニッパーで切り落とします。

トゥルーバイパスの配線-27

2-3:LED関係の配線

次はLEDの保護抵抗の取り付け、LEDを筐体への取り付け配線をします。

配線図(配線順)-02

まずは、LEDに保護抵抗を取り付けます。
LEDにそのまま電気を通すと、電流が流れすぎて(過電流)LEDを破損してしまいます。これを防ぐためにつなぐ抵抗器のことを、保護抵抗と
言います。

抵抗器の抵抗値は小さいほどLEDは明るく、大きいほどLEDは暗く光ります。今回は470Ωを選びましたので、結構な明るさでLEDは光ります。もう少し暗くしたい方は、100K程度までの間で抵抗値を好みの明るさに合わせて調整してください。

LEDには2本の脚が出ています。脚の長い方がアノード(A)、短い方がカソード(C)です。LEDはアノードを電圧の高い方(電源の+9V)に、カソードを電圧の低い方(GND)に繋ぎます。

トゥルーバイパスの配線2-01

LEDのアノードの脚をラジオペンチを使って曲げて、抵抗器の脚とからげやすいようにします。同じように抵抗器の脚もラジオペンチで曲げます。

トゥルーバイパスの配線2-02

LEDのアノードの脚と抵抗器をしっかりとからげて、半田付けをします。この時にヘルピングハンズがあると作業がやりやすくなります。

トゥルーバイパスの配線2-03

トゥルーバイパスの配線2-04

トゥルーバイパスの配線2-05

トゥルーバイパスの配線2-06

このままでは電源のDCジャックまで届かないので、保護抵抗のLEDと反対側に配線材(長さ50mm。配線図(配線順)-02.jpgに記載)を半田付けして延長します。それぞれの脚を曲げてしっかりとからげてから、半田付けするのはLEDと保護抵抗を半田付けしたのと同じ要領です。

トゥルーバイパスの配線2-07

トゥルーバイパスの配線2-08

トゥルーバイパスの配線2-09

同じようにLEDのカソードも3PDTスイッチの6番端子まで届かないので、配線材(長さ30mm。配線図(配線順)-02.jpgに記載)を半田付けして延長します。

トゥルーバイパスの配線2-10

このままLEDを筐体に取り付けてしまうと、むき出しの導線の部分が筐体などと接触してショートしてしまうので、この部分を熱収縮チューブで覆って絶縁します。

導線が露出しているところの長さより少し長めに熱収縮チューブをハサミで切って、その中に絶縁したい部分を通します。

トゥルーバイパスの配線2-11

トゥルーバイパスの配線2-12

トゥルーバイパスの配線2-13

半田ごての側面を使ってチューブを撫でるように加熱して、チューブを収縮させて固定して出来上がりです。熱収縮チューブは、半田ごてではなくドライヤーなどの熱風を使っても収縮させることができます。

トゥルーバイパスの配線2-14

トゥルーバイパスの配線2-15

絶縁処理の済んだLEDを筐体に取り付けます。

まずはLEDのカソード側を3PDTスイッチの6番端子に半田付けします。ここでも配線材は、ラジオペンチでしっかりと端子にからげてから、半田付けをしましょう。

トゥルーバイパスの配線2-16

トゥルーバイパスの配線2-17

LED本体を筐体の中央、所定の穴に差し込みます。このままでは簡単に取れてしまうので、ホットボンドを使ってLEDを筐体に固定します。ホットボンドはLEDと筐体の両方にかかるように、十分な量を流し込んで固定しましょう。

トゥルーバイパスの配線2-18

トゥルーバイパスの配線2-19

配線が筐体の端を通るように調整して、LEDの取り付けはひとまず完成です。DCジャック側がまだ半田付けしていませんが、ここは後ほど基板から伸びる配線材と一緒に半田付けをするので、今はまだ半田付けはしません。

トゥルーバイパスの配線2-20

2-4:バイパス信号ラインの配線

次は、エフェクトのバイパス(Off)時の音声ラインを、次の配線図を参考に配線します。

配線図(配線順)-03

この配線図の青い配線が、バイパス時の音声ラインになります。ここでは配線材しか使いませんので、半田付けのやり方はこれ以前にやったやり方と同じで、新しく覚えることはありません。端子に配線材をしっかりとからげてから、半田付けするように心がけましょう。

まずは所定の長さ(40mm)に配線材を切って両端の皮膜を剥き、3PDTスイッチの8番端子に配線材を半田付けします。手前側から配線材を端子に通して、半田付けします。まだ配線材の反対側は、1番端子には半田付けしません。

トゥルーバイパスの配線3-01

所定の長さ(60mm)に配線材を切り、Inputジャックのチップ端子に配線材を半田付けします。

ジャックの端子は大きいので、配線材の皮膜はジャック側を少し大きめに剥きましょう。

トゥルーバイパスの配線3-02

しっかりと端子に配線材をからげて、半田付けします。

トゥルーバイパスの配線3-03

トゥルーバイパスの配線3-04

3PDTスイッチの8番端子、Inputジャックのチップ端子に、それぞれ半田付けした配線材の反対側を、3PDTスイッチの1番端子に半田付けします。2番端子を半田付けした時と同様に、1番端子の穴に二本の配線材を通して半田付けします。

トゥルーバイパスの配線3-05

トゥルーバイパスの配線3-06

トゥルーバイパスの配線3-07

トゥルーバイパスの配線3-08

配線材2本分の半田付けですので、両方の配線材にしっかりと半田が流れ込むように十分な量で半田付けしましょう。

トゥルーバイパスの配線3-09

トゥルーバイパスの配線3-10

最後は3PDTスイッチの4番端子とOutputジャックのチップ端子を配線材(70mm)で繋ぎます。

一箇所の端子にそれぞれ一本だけ配線材を半田付けしますので、やりやすい方からで結構です。私はOutputジャックのチップ端子から半田付けするのがやりやすいので、こちらから半田付けをします。

トゥルーバイパスの配線3-11

トゥルーバイパスの配線3-12

配線材の反対側を3PDTスイッチの4番端子に半田付けします。

トゥルーバイパスの配線3-13

トゥルーバイパスの配線3-14

トゥルーバイパスの配線3-15

ここまで配線ができると、バイパス時の音だけは鳴らすことができるようになります。

試しに、ギターとアンプをつないでいただくと、スイッチを押すたびに音が出る状態(バイパス)と音が出ない状態(エフェクト)が切り替わります。

トゥルーバイパスの配線3-16

2-5:電池スナップ、逆電流防止ダイオードの配線

電池スナップ、逆電流防止ダイオードをInputジャックとDCジャックに配線します。配線図(配線順)-04にある電池スナップと黄色ラインのにある1N4007が逆電流防止ダイオードです。

今回は電池でも動かせるように電池スナップを取り付けますが、電池での駆動をしない方は電池スナップの配線は省略していただいても結構です。電池スナップを使わない方でも、逆電流防止ダイオードは必要です。

配線図(配線順)-04

まずは電池スナップの赤いライン(+極)をDCジャックに取り付けます。DCジャックには端子が三つあります。それぞれに繋ぐものが決まっているので、間違わないように気をつけてましょう。

トゥルーバイパスの配線4-01

電池スナップの赤い配線材は下から通すようにすると、半田付けがやりやすくなります。通した配線材は、しっかりと端子にからげてから半田付けをします。

トゥルーバイパスの配線4-02

トゥルーバイパスの配線4-03

次に、DCジャックに逆電流防止ダイオードの1N4007を半田付けします。

ダイオードにはアノードとカソードという極性があります。1N4007には片側に白いラインで目印があります。この白いラインの入っている方がカソードで、DCジャックに半田付けする方になります。

なぜここにダイオードを入れると逆電流の防止になるかは、後の記事で説明します。安全対策としてぜひ入れておきたいものですので、ここではまずこの通りに入れておきましょう。

トゥルーバイパスの配線4-04

DCジャックの端子にしっかりとダイオードの脚をからげます。脚が横向きに伸びた状態だと綺麗に筐体の端を沿わせて配線することができないので、DCジャックから下向きに伸びるように調整して、半田付けします。

トゥルーバイパスの配線4-05

トゥルーバイパスの配線4-06

トゥルーバイパスの配線4-07

このままではダイオードの脚がInputジャックのチップ端子まで届きませんので、配線材を使って延長します。

ダイオードのアノード側の脚の先端をラジオペンチで曲げて輪を作り、配線材を止めやすくする端子のようにします。

トゥルーバイパスの配線4-08

適当な長さ(40mm)の配線材を切り、両端の皮膜を剥きます。片側を先ほどダイオードの脚を曲げて作った端子に通して、はんだ付けをします。

ラジオペンチを使ってしっかりとからげると、ヘルピングハンズがなくてもしっかり固定できるので、半田付けがやりづらいということはないと思います。

トゥルーバイパスの配線4-09

トゥルーバイパスの配線4-10

トゥルーバイパスの配線4-11

トゥルーバイパスの配線4-12

このままではダイオードの脚がむき出しのままで、筐体に接触してショートしてしまいます。LEDの脚を絶縁した時と同じように、熱収縮チューブを使ってダイオード全体を包んでしまい絶縁処理をしておきましょう。

トゥルーバイパスの配線4-13

トゥルーバイパスの配線4-14

トゥルーバイパスの配線4-15

電池スナップの黒い配線材(-極)とダイオードのカソード側を、Inputジャックのリング端子に繋ぎます。

この二つをInputジャックのリング端子に繋ぐことで、Inputジャックにプラグが挿さっている時だけGNDに繋がり回路が成立して動くようになります。こうすることで、何もしていないときにつけたままの電池の消耗を抑えることができます。

ダイオードのカソードから延長した配線材と、電池スナップの黒い配線材を、Inputジャックのリング端子にしっかりとからげます。Inputジャックの端子は大きいので、配線材2本くらいでしたら余裕を持って通せます。

ラジオペンチを使ってしっかりと端子に配線材をからげます。半田付けは配線材2本分ですので、十分な量のはんだを流し込んでしっかり半田付けします。

トゥルーバイパスの配線4-16

トゥルーバイパスの配線4-17

トゥルーバイパスの配線4-18

トゥルーバイパスの配線4-19

トゥルーバイパスの配線4-20

熱収縮チューブで包んだダイオードが、筐体の端に沿うように位置を調整しましょう。InputジャックとDCジャックの間のスペースは電池が入りますので、下に余計なものがあると電池の向きによっては蓋が閉まらないことがあります。

トゥルーバイパスの配線4-21

トゥルーバイパスの配線4-22

2-6:基板の配線

ついに基板をケースに組み込みます。

配線図(配線順)-05

先に付けてしまうと筐体がグラグラして作業がやりづらかったので、まだ付けていなかった10K BカーズのPOTを筐体に取り付けます。

POTには回転防止用の『ツメ』が付いています。今回は使わないので、折って取ってしまいましょう。

トゥルーバイパスの配線5-01

ナットとワッシャーを一度外して、ペンチで根元までしっかりと摘んで曲げると、簡単に折ることができます。

トゥルーバイパスの配線5-02

トゥルーバイパスの配線5-03

トゥルーバイパスの配線5-04

トゥルーバイパスの配線5-05

筐体の内側からPOTのシャフトを穴に通して、ワッシャー、ナットの順番で取り付けてます。ナットを手で回せるうちは手で回しましょう。

トゥルーバイパスの配線5-06

トゥルーバイパスの配線5-07

トゥルーバイパスの配線5-08

POTの向きを調整しながら、レンチでナットを締め込みます。ナットを締めるときにPOTが回転してしまう場合は、ペンチでPOTを掴んでナットを締めるといいでしょう。

トゥルーバイパスの配線5-09

トゥルーバイパスの配線5-10

DCジャックの基板電源ラインとLEDにつながる端子は穴が小さく二つも線を通すことができないので、取っておいた抵抗器などの脚を使って繋げやすいように端子を拡張します。

抵抗器などの脚をDCジャックの端子に半田付けします。

トゥルーバイパスの配線5-11

トゥルーバイパスの配線5-12

トゥルーバイパスの配線5-13

取り付けた抵抗器などの脚をペンチで曲げて輪を作ることで、自由に穴の大きさを調整できる端子を作ることができます。

トゥルーバイパスの配線5-14

次にPOTの2番端子と1番端子を繋いで、さらに端子を増設します。これも取っておいた抵抗器の脚などを利用します。

抵抗器などの脚を写真のように片側が長いコの字型にラジオペンチで曲げます。

トゥルーバイパスの配線5-15

これの短い方をPOTの2番端子、長い方を1番端子に通してそれぞれの端子に半田付けします。

それぞれの端子にしっかりとからげるように、ラジオペンチでしっかりと押さえます。1番端子に通した脚は、外に伸びるようにして半田付けしましょう。

DCジャックの時と同じように、この伸びた脚をラジオペンチで曲げて輪を作ると、POTの2番端子と1番端子につながる新しい端子を作ることができます。

トゥルーバイパスの配線5-16

トゥルーバイパスの配線5-17

トゥルーバイパスの配線5-18

トゥルーバイパスの配線5-19

これで基板の取り付けの準備ができましたので、諸々基板から伸びている配線材を繋いでいきます。

まずは筐体の奥になるところから半田付けをしていくとやりやすいと思いますので、POTの3番端子に基板の左側から伸びる配線材を半田付けします。基板のどの位置から伸びている配線材かは、配線図をよく見て確認してください。

端子にはしっかりと配線材をからげて、半田付けしましょう。

トゥルーバイパスの配線5-20

次は、先ほど端子を拡張したPOTの2番端子と1番端子にから伸びる新しい端子に、基板から伸びるPOTの2番端子と1番端子につながる配線材を半田付けします。

しっかりと端子と配線材をからげて、半田付けしましょう。

トゥルーバイパスの配線5-21

トゥルーバイパスの配線5-22

LEDのアノード側からの配線材、基板のDCジャックへつなぐ配線材を、DCジャックに抵抗器の脚を使って増設した端子に繋ぎます。

LEDのアノード側からの配線材、基板のDCジャックへつなぐ配線材を、それぞれDCジャックに抵抗器の脚を使って増設した端子しっかりとラジオペンチを使ってからげるます。

トゥルーバイパスの配線5-23

トゥルーバイパスの配線5-24

トゥルーバイパスの配線5-25

トゥルーバイパスの配線5-26

二本の配線材をいっぺんに半田付けしますので、十分な量の半田を流し込んで半田付けしましょう。

トゥルーバイパスの配線5-27

トゥルーバイパスの配線5-28

あとは、基板中央下側から伸びるGNDの配線材をOutputジャックのスリーブ端子に、基板左下から伸びるS(Send)の配線材を3PDTスイッチの5番端子に、基板右下から伸びるR(Return)の配線材を3PDTスイッチの7番端子に、それぞれ端子にしっかりからげて半田付けします。

トゥルーバイパスの配線5-29

トゥルーバイパスの配線5-30

トゥルーバイパスの配線5-31

これで配線は全て完了です。

トゥルーバイパスの配線5-32

3:仕上げ

3-1:動作確認

エフェクターがしっかりと動作するか、確認を行います。

まずは、バイパス音(エフェクターOff)で音が出るかのチェックです。
筐体右側のInputジャックにギターを、筐体左側のOutputジャックにギターアンプを、それぞれ繋ぎます。

仕上げ1-01

この状態でギターを弾き、バイパス音が出るかを確認します。

もしバイパス音が出ない場合は、3PDTスイッチがエフェクトOnの状態になっている可能性があります。3PDTスイッチを一回押して、もう一度確認をしてください。

次は、エフェクターとして機能するかを確認します。

基板のソケットにトランジスタ(2N3904)を挿して確認をします。トランジスタの向きを間違えたからといって、壊れることはまずありませんが、音が出ないので向きに気をつけてソケットに挿しましょう。

この段階ではまだトランジスタの脚は長いままで大丈夫です。まだ裏蓋は閉めません。

仕上げ1-02

仕上げ1-03

先ほどと同じようにそれぞれギターとアンプを繋ぎ、DCジャックにエフェクター用のアダプター(+9Vセンターマイナス)を繋ぎます。

バイパス音が出たら、POTのシャフトを左に回し切った状態で3PDTスイッチを押してエフェクトOnにします。少しバイパス音より小さい音が出たら成功です。

POTのシャフトを半分くらい右に回すと、バイパス音と同程度の音量になるはずです。さらに右に回していくと、音量が増していきます。ここまで確認ができたら成功です。

仕上げ1-04

仕上げ1-05

もしエフェクト音が出ない場合は、基板から伸びる配線材が指定通りに半田付けされているか確認をしてください。

前回の基板制作編で基板は動作すること、先ほどバイパス音が出ることを確認していますので、問題があるすれば基板周りの配線かトランジスタの向きの間違いの可能性が高いです。

3-2:トランジスタの脚の整形

まだトランジスタの脚が長いままなので、筐体の裏蓋を閉めるのは適しません。トランジスタの脚の長さを適正な長さにして整形します。

適当なユニバーサル基板の切れ端に、トランジスタの脚を通してグッと押し込みます。すると写真のように放射状に脚が広がります。

仕上げ1-06

広がった脚を指で閉めるようにすると、脚がソケットに挿すのに適した位置で綺麗に整列します。

仕上げ1-07

脚を半分くらいの長さで、ニッパーで切ります。これでソケットに挿して裏蓋を閉めるのに適した形のトランジスタに整形ができました。整形できたトランジスタをもう一度基板のソケットに挿し直しましょう。

仕上げ1-08

仕上げ1-09

仕上げ1-10

3-3:絶縁処理など

このまま基板を筐体内に入れると、筐体の内側やPOTなどと基板の半田面が接触してショートしてしまいます。触れても通電しないように基板の半田面、筐体の裏蓋の内側を絶縁処理します。

裏蓋内側の絶縁は、ビニールテープを適当な長さに切って貼り付けると手軽にできます。貼るのは基板が当たる可能性のある、筐体の半分ぐらいの広さで大丈夫です。

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基板の半田面の絶縁には、ホットボンドを使うとやりやすいです。全体的に満遍なくホットボンドを塗ればOKです。

ビニールテープなど貼る方法もありますが、半田面は凹凸があるのでテープが剥がれる可能性があるので、私はホットボンドを使うやり方をお勧めします。

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ソケットに挿したトランジスタもケースの中で抜けてしまわないように、ホットボンドで固定しましょう。

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『ホットボンドで固定するなら、半田付けしてしまった方が良いのでは?』と思われる方もいらっしゃるかと思います。

私の経験では、エフェクターの故障箇所の多くは、オペアンプかトランジスタの半導体の故障です。半導体をソケット化をしておくことで、故障箇所の交換が簡単にできます。

ソケットからの抜け防止にホットボンドをしておいても、ニッパーでホットボンドを細かく切ることでそれほど苦労せずに固定を解除することができます。後々のメンテナンスのことも考えると、半導体のソケット化とホットボンドでの固定をお勧めします。

3-4:仕上げ

いよいよ最後の仕上げです。

電池スナップに電池を付けて、筐体内に入れます。InputとOutputジャック、POTの間にスペースがあるので、そこに電池が収まるはずです。

電池を入れるスペースの下にLEDからの配線などがあると、電池を縦にして収める場合に裏蓋が閉まらないことがあるので、配線は筐体の端に沿わせておきましょう。

電池スナップの赤と黒の配線は、よじっておくと取り回しがやりやすくなります。基板はPOTの上に置くようにしましょう。
裏蓋の内側はビニールテープで、基板の半田面はホットボンドで絶縁していますので、基板は表向きでも裏向きでもどちらにして置いても大丈夫です。

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裏蓋を閉めてネジで固定します。ネジは手で回せるうちは手で締めます。手で回せなくなったら、ドライバーを使って締めていきます。

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ノブを付けます。

今回はスプリットシャフトというタイプのシャフトのPOTを選びましたので、押し込んで付けるタイプのノブを使います。

左か右にPOTのシャフトを回し切って、ノブの目印が適正な位置になるようにノブを付けます。適正な方向を向いたノブを、グッと奥まで押し込みます。

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これでクリーンブースターのエフェクターが完成です。

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最後にもう一度ギターとアンプをつないで、動作の確認をしてください。

裏蓋を閉める前は動いていたのに、蓋を閉めたら動かないというのはよくあるトラブルです。そのような場合は、どこかが裏蓋と接触してショートしているか、裏蓋を閉めることで何かが押されて何処かが接触してショートしてしまっていることが考えられます。注意深く観察して原因を特定して、絶縁処理をするなど対処をしましょう。

まとめ

これで、エフェクター作りの一連の流れをご紹介できました。文章にするととてもたくさんのことをしているように見えますが、実際に作業をしてみると意外と同じ作業の繰り返しだったりすることが多く、作業手順として覚えることはそれほど多くありません。

筐体の穴あけ、塗装、基板の作成、筐体への組み込み、これから他のエフェクターを作るにあたり行う作業自体は一緒で、穴の数が増えたり半田付けの箇所が増えたりするだけです。

今後は、様々なエフェクターの作例も紹介していきたいと思います。作例では基本的に、回路図と基板レイアウト、部品表と回路の解説という構成で書いて行く予定です。

筐体への組み込みなどはそのままこの組み立て編の記事が応用で使えます。穴あけや基板作りなどの技術的なものも、今までの記事を参考に作業をすることができると思います。作業自体でわからないことがありましたら、各記事に戻って確認をしていただければ大丈夫です。

エフェクターは作れるけど、回路図の読み方や回路のこの位置でどんな働きをしているのかがわからない、という話を良く聞きます。エフェクターで使われる回路にはパターンが多くあるので、個別で説明するよりも実際にその回路がどのように働いているかは作って動かしながら理解していくのが覚えやすいので、作例と合わせて回路の解説もできるだけしていきたいと思います。

回路規模が大きくなると、ユニバーサル基板での制作が大変になって失敗も多くなります。どこかの段階で、プリント基板の作り方も早めに紹介したいと思います。

以前はエッチングを自分で行ってプリント基板を作るのが、少数ロットでは一般的でした。今は送料込みで10枚3000円程度で、安価に基板製造をしてくれる業者さんもあります。そういった業者さんやフリーソフトの基板制作CADを利用して、少ないコストと知識でプリント基板を作るやり方をお伝えしたいと思います。

この記事を参考に、エフェクター作りを楽しんでいただければ幸いです。
次回の記事まで、少しお待ちください。ありがとうございました。

ご注意
本講座をもとにエフェクターを製作される際は、安全に留意のうえ個人責任で行ってください。作り方や道具の取り扱いを誤ると怪我や火災など大きな事故につながる可能性もあります。万一損害や不利益が発生した場合でも、当サイトおよび執筆者は一切の責任を負う事はできませんので、あらかじめご了承お願いいたします。
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こちらでは、エフェクターの自作をこれから始めてみたいという初心者向けの内容から初めて、オリジナルのエフェクターを作るところまでを連続講座としてご紹介してまいります。

 
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