コーラスやフランジャーで音を揺らし、ディレイで音を重ね、リバーブで残響を足す。空間系のエフェクトは、フレーズの印象や曲の奥行きを大きく変えてくれます。ただ、コーラス、ディレイ、リバーブと単体ペダルを1台ずつそろえていくと、ボードのスペースも電源も配線も、あっという間に増えていきます。
そこで便利なのが、空間系のエフェクトをまとめて扱えるマルチエフェクターです。この記事では、歪みやアンプシミュレーターは使わず、モジュレーション・ディレイ・リバーブを1台に集約したい方に向けて、空間系に強いモデルを入門機からフラッグシップまで10機種紹介します。目的別の結論を先にまとめているので、迷ったらそこから読んでみてください。
目的別・早わかり(迷ったらここ)
- まず1台で空間系をひと通り → ZOOM MS-70CDR+
- ディレイとリバーブを手頃に1台で → NUX Atlantic
- ミニボードに小さく足したい → ROWIN DAP-3
- モジュレーションを充実させたい → BOSS MD-200/EHX MOD 11
- ディレイとリバーブの質感にこだわりたい → UAFX Del-Verb/Walrus Audio Mako D1・R1 MKII
- ファズと揺れ・エコーで70年代の音を → Keeley Dark Side
- 音質と自由度を最優先 → Eventide H90
- モジュールを組み合わせて音を作り込みたい → Poly Effects Beebo
空間系マルチを選ぶ前に知っておきたいこと
空間系(モジュレーション系)は、おおまかに次の3つのグループに分けられます。
- モジュレーション系:コーラス/フランジャー/フェイザー/トレモロ/ロータリー(音を揺らす)
- ディレイ系:デジタル/アナログ/テープ(音を繰り返す)
- リバーブ系:ルーム/ホール/プレート/スプリング(残響を加える)
それぞれの仕組みや単体ペダルの選び方は、コーラス・ディレイ・リバーブの各記事で詳しく紹介しています。
マルチにまとめるいちばんのメリットは、省スペースと配線のシンプルさです。1台でコーラスもディレイもリバーブもまかなえるので、ボードがすっきりし、電源も1系統で済みます。プリセットに対応したモデルなら、曲ごとの音色の切り替えもボタンひとつです。
一方で、単体の専用機に比べると、1つのエフェクトあたりのつまみが少なかったり、同時に使えるエフェクトの組み合わせに制限があったりします。機能が多いモデルほど、操作に慣れるまで少し時間もかかります。「どのエフェクトを同時に使いたいか」「プリセットの切り替えが必要か」「ステレオで鳴らしたいか」を先に決めておくと、選びやすくなります。
空間系マルチエフェクターおすすめ10選
比較早見表
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| # | モデル | タイプ | 主な構成 | こんな人に |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ZOOM MS-70CDR+ | オールインワン | 149種類・最大6エフェクト同時・ステレオ入出力 | まず1台で空間系をそろえたい |
| 2 | NUX Atlantic | ディレイ+リバーブ | ディレイ3種・リバーブ3種、直列/並列の切り替え | ディレイとリバーブを手頃にまとめたい |
| 3 | ROWIN DAP-3 | 3-in-1コンパクト | ディレイ+モジュレーション3種+リバーブ3種 | ミニボードに小さく足したい |
| 4 | BOSS MD-200 | モジュレーション | 12モード・127メモリー・MIDI | 揺れ物を高音質で1台に |
| 5 | EHX MOD 11 | モジュレーション | 11種類・タップテンポ | 手軽に多彩な揺れ物を使いたい |
| 6 | UAFX Del-Verb | ディレイ+リバーブ | ディレイ3種・リバーブ3種を独立したステレオで | ディレイとリバーブの質感を上げたい |
| 7 | Walrus Audio Mako D1/R1 MKII | ディレイ/リバーブ(2台) | 各6プログラム・128プリセット | 残響まわりを細かく作り込みたい |
| 8 | Keeley Dark Side | ファズ+ディレイ/モジュレーション | ファズ+テープ・ディレイか4種のモジュレーション | 70年代の質感を1台で |
| 9 | Eventide H90 | フラッグシップ | 70種類以上・2アルゴリズム同時 | 音質と自由度を最優先したい |
| 10 | Poly Effects Beebo | バーチャル・モジュラー | タッチ画面でモジュールを組み合わせ | 音作りを徹底的に作り込みたい |
入門・コスパ重視
1. ZOOM MS-70CDR+【空間系をまず1台でそろえるなら】
コーラス/モジュレーション43種類、ディレイ29種類、リバーブ33種類に、EQやコンプレッサーなどのダイナミクス・フィルター系44種類を加えた、合計149種類のエフェクトを内蔵したマルチストンプです。最大6つのエフェクトを同時に組み合わせられ、作った音は100個のパッチに保存できます。
ステレオ入出力に対応しているので、ステレオのコーラスやディレイを左右に広げて鳴らせます。ギターだけでなくベースやシンセサイザーにも使え、単3電池2本でも動きます。種類が多いぶん、最初はプリセットを順に試して、気に入った音から調整していくと迷いません。詳しくは「ZOOM MS-70CDR+」の記事で紹介しています。
2. NUX Atlantic【ディレイとリバーブを手頃に1台で】
一緒に使うことの多いディレイとリバーブを、1台にまとめたペダルです。ディレイは60年代のテープエコー、70年代のBBDアナログ、80年代のデジタルの3種類、リバーブはスプリング、プレート、ホールの3種類。プレートではシマー、ホールではフリーズを使え、残響に倍音を重ねたり、音を伸ばし続けたりできます。
ディレイとリバーブのつなぎ順の入れ替えや、直列/並列の切り替えに対応し、出力はステレオです。タップテンポは、ディレイのフットスイッチを踏むだけで入力できます。詳しくは「NUX Atlantic」の記事へ。
3. ROWIN DAP-3【ミニボードに空間系を小さく足すなら】
横長のコンパクトな筐体に、ディレイ、モジュレーション、リバーブの3つのエフェクトを並べたペダルです。ディレイはアナログ回路、モジュレーションはフェイザー/ヴァイブ/コーラスの3モード、リバーブはルーム/スプリング/シマーの3モードを切り替えられます。3つのフットスイッチで、コンパクトエフェクターを並べたときと同じ感覚で操作できます。
ヘッドホン出力も付いているので、自宅練習用の小さなシステムにも向いています。プリセットの保存やステレオ出力には対応していないので、曲ごとに音を切り替えたい方は、ほかのモデルを選ぶとよいでしょう。詳しくは「ROWIN DAP-3」の記事へ。
中級・主力
4. BOSS MD-200【モジュレーションを高音質で1台に】
フラッグシップのMD-500のアルゴリズムを受け継いだ、200シリーズのモジュレーションペダルです。コーラス、CE-1、フランジャー、フェイザー、ビンテージ・フェイザー、クラシック・ヴァイブ、ビブラート、トレモロ、ロータリー、オートワウ、スライサー、オーバートーンの12モードを搭載しています。
作った音は127のユーザー・メモリーに保存でき、MIDIのプログラム・チェンジでも呼び出せます。外部のペダルをMD-200の前段・後段のどちらに置くかをメモリーごとに設定できるインサート機能もあり、歪みペダルとの順番まで1台で管理できます。同時に使えるのは1つのモードなので、2つのモジュレーションを重ねたい場合は、上位のBOSS MD-500を選ぶとよいでしょう。詳しくは「BOSS MD-200」の記事へ。
5. Electro-Harmonix MOD 11【11種類の揺れ物を気軽に】
ロータリースイッチを回すだけで、トレモロ、ハーモニック・トレモロ、ビブラート、ユニヴァイブ系、コーラス、ロータリー、フランジャー、スルーゼロ・フランジャー、フェイザー、ピッチ、フィルターの11種類を切り替えられるモジュレーションペダルです。各エフェクトに2〜3のモードがあり、隠しパラメーターで細かな調整もできます。
タップテンポ(本体・外部スイッチ)や、踏んでいる間だけ効果をかけるモメンタリー・モードも使えます。プリセットの保存には対応しておらず、出力はモノラルなので、曲ごとに音を切り替えたい方やステレオで鳴らしたい方は、MD-200を選ぶとよいでしょう。詳しくは「EHX MOD 11」の記事へ。
6. Universal Audio UAFX Del-Verb【ディレイとリバーブの質感にこだわるなら】
リバーブにはGolden Reverberator、ディレイにはStarlight Echo Stationと同じアルゴリズムを使った、ディレイ+リバーブの一体型ペダルです。リバーブは60年代のアンプのスプリング、スタジオのプレート、80年代のデジタル・ホールの3種類、ディレイはテープエコー、BBDアナログ、UAのPrecision Delayの3種類。リバーブとディレイは、それぞれ独立したステレオのエンジンで動きます。
スマートフォン用のUAFX Controlアプリを使うと、タップテンポの追加や、エフェクトごとのボイシングの読み込みができます。電源は400mA以上の9Vアイソレート電源が必要なので、パワーサプライの出力も確認しておきましょう。詳しくは「UAFX Del-Verb」の記事へ。
7. Walrus Audio Mako D1 MKII/R1 MKII【残響まわりを2台で作り込むなら】
アメリカのWalrus Audioのハイエンドライン「Mako」シリーズのディレイとリバーブです。1台の空間系マルチではありませんが、ディレイとリバーブをこの2台にまとめると、どちらも細かく追い込めます。MKIIでは画面が付いて操作しやすくなり、各ペダルに128個のプリセットを保存できるようになりました。
D1 MKIIはデジタル、モジュレーション、ビンテージ、デュアル、リバース、グレインの6種類のディレイ、R1 MKIIはスプリング、ホール、プレートなど6種類のリバーブを搭載しています。どちらもステレオ入出力とMIDIに対応しています。2台そろえるぶんスペースも増えるので、まずは足りないほうを1台加えるのもよいでしょう。
8. Keeley Dark Side【ファズと揺れ・エコーで70年代のサウンドを】
70年代のデヴィッド・ギルモアのサウンドをイメージして作られた、ファズとディレイ/モジュレーションの複合ペダルです。ファズは1977年ごろのオペアンプ型ファズを下敷きにした回路で、もう一方のセクションでは、マルチヘッドのテープ・ディレイか、フランジャー/ロータリー/フェイザー/ユニヴァイブのモジュレーションを切り替えて使います。
ディレイとモジュレーションは同時には使えないので、揺れとエコーを重ねたい場合は、別のペダルを組み合わせる必要があります。ファズとモジュレーション部の順番を入れ替えるスイッチや、エクスプレッション・ペダルの入力も備えています。詳しくは「Keeley Dark Side」の記事へ。
フラッグシップ
9. Eventide H90【音質と自由度を最優先するなら】
Eventideのハーモナイザー・シリーズを受け継ぐ、ペダル型のフラッグシップです。リバーブ、ディレイ、モジュレーション、ピッチなどのアルゴリズムを、アップデートで追加されたものを含めて70種類以上搭載し、1つのプリセットで2つのアルゴリズムを同時に使えます。
同じ処理基盤を使った小型モデルのH9 Harmonizer Gen 2(2026年6月発売)は、H90のアルゴリズムを1つずつ使うペダルです。2つのエフェクトを同時に使う必要がなければ、こちらを選ぶとよいでしょう。詳しくは「Eventide H90」の記事へ。
10. Poly Effects Beebo【モジュールを組み合わせて音を作り込むなら】
タッチスクリーンでモジュールを並べ、つなぎ合わせて音を作る「バーチャル・モジュラー」ペダルです。コーラス、フェイザー、ロータリー、スルーゼロ・フランジャー、ディレイ、コンボリューション・リバーブ、ルーパーなどのエフェクトに加え、ユーロラック・モジュール由来のグラニュラー処理やオシレーターも使えます。LFOやエンベロープ・フォロワーで別のモジュールのパラメーターを動かすといった、モジュラーシンセのような使い方ができるのが特徴です。
自由度が高いぶん、思い通りの音にするにはモジュラー的な考え方に慣れる必要があります。まずはプリセットを読み込んで、少しずつ中身を変えていくところから始めるのがおすすめです。詳しくは「Poly Effects Beebo」の記事へ。
生産を終えたモデルと、いま選ぶなら
空間系の複合ペダルとして知られていたモデルの中には、すでに新品の入手が難しくなっているものもあります。
- Electro-Harmonix Tone Tattoo(2024年に生産完了):Metal Muff、Neo Clone、Memory Toyを1台にまとめたアナログのマルチ。コーラスとディレイの部分を置き換えるなら、ZOOM MS-70CDR+がおすすめです。
- HOTONE Binary Mod:24種類のモジュレーションを収めたコンパクトなモジュレーション・マルチ。いま選ぶなら、BOSS MD-200かEHX MOD 11がおすすめです。
空間系マルチエフェクターの選び方
- 何を重視するか:揺れ物が中心ならモジュレーション特化(MD-200/MOD 11)、残響が中心ならディレイ+リバーブ(Atlantic/Del-Verb)、全部まとめたいならMS-70CDR+やH90。
- 1台で完結させるか、組み合わせるか:単体ペダルと併用するなら特化型、これ1台で済ませたいならオールインワン。
- 同時に使いたいエフェクトの数:重ねがけが必要なら、同時使用数を確認しましょう。
- 機能:ステレオ出力、プリセット、MIDIが必要かどうか。
- サイズと電源:ボードのスペースと消費電流。電源の選び方は「パワーサプライおすすめ10選」で紹介しています。
ほかのタイプも見てみたい方へ
- モジュレーションをさらに充実させたい:BOSS MD-500/Strymon Mobius/Donner Mod Square II
- 大型のマルチで空間系も使いたい:TC Electronic Plethora X5
- ディレイ+リバーブ+ルーパー:Mooer Ocean Machine II
- さらに手頃に:Behringer FX600
- アンプシミュレーターも含めた総合マルチ:マルチエフェクターおすすめ
よくある質問(FAQ)
- 空間系マルチと単体ペダル、どちらがいいですか?
-
使うエフェクトが1〜2種類なら単体ペダル、3種類以上を曲ごとに切り替えるならマルチのほうが、ボードのスペースも配線もすっきりします。
- ベースでも使えますか?
-
ZOOM MS-70CDR+はギターだけでなくベースやシンセサイザーにも使えます。BOSS MD-200は、フランジャー・フェイザー・オートワウをギター用とベース用に切り替えて最適化できます。
- ステレオで鳴らしたい場合は?
-
MS-70CDR+、MD-200、UAFX Del-Verb、Walrus Audio Mako D1/R1 MKII、Eventide H90はステレオ入出力に、NUX Atlanticはステレオ出力に対応しています。EHX MOD 11、ROWIN DAP-3、Keeley Dark Sideはモノラル出力です。
- 曲ごとに音を切り替えたいときは?
-
プリセットを保存できるモデルを選びましょう。MS-70CDR+は100パッチ、MD-200は127メモリー、Mako D1/R1 MKIIはそれぞれ128プリセットを保存できます。EHX MOD 11はプリセット保存に対応していません。
- 電源で気をつけることは?
-
UAFX Del-Verbは400mA以上の9Vアイソレート電源が必要です。MD-200(225mA)やNUX Atlantic(240mA以下)も一般的なコンパクトより消費電流が大きいので、パワーサプライの出力を確認しておきましょう。
まとめ
空間系をまず1台でそろえるならZOOM MS-70CDR+、ディレイとリバーブだけを手頃にまとめるならNUX Atlantic。揺れ物を充実させたいならBOSS MD-200かEHX MOD 11、残響の質感にこだわるならUAFX Del-VerbやWalrus AudioのMakoシリーズがおすすめです。
音質と自由度を最優先するならEventide H90、音作りそのものを楽しみたいならPoly Effects Beebo。どのエフェクトを同時に使いたいか、プリセットやステレオが必要かを先に決めておくと、自分に合う1台が選びやすくなります。



