オーバードライブを踏んだ瞬間、音は前に出るのに、なぜか芯が細くなる。ピッキングのニュアンスが潰れて、バンドの中で低域が消えていく。トランスペアレント系と呼ばれるペダルでさえ、この感覚から完全に逃れることはできませんでした。JHS PedalsのMorning Glory Cleanは、その「歪ませると失われるもの」を取り戻すために、パラレルクリーン・ブレンドを軸としてゼロから設計し直されたモデルです。
きっかけは、長年Morning Gloryを愛用してきたジャズギタリスト、Julian Lageとの「オーバードライブに求めるものは何か」というやりとりでした。ここでは開発の背景から4つのコントロールの使い方、既存のMorning Glory V4との選び分けまで、購入を検討するうえで気になるポイントを順に見ていきます。
Morning Glory Cleanとは|クリーンをブレンドするという発想
Morning Glory Cleanは、JHS Pedalsの代表作であるトランスペアレントオーバードライブ「Morning Glory」に、クリーン信号を並列でブレンドする回路を組み込んだモデルです。ただしJHSによれば、これは既存回路にブレンドつまみを後付けしたものではなく、パラレルクリーン回路を前提に一から組み直された設計とされています。
Bluesbreaker系の系譜を受け継ぐ歪みセクション
歪みセクションのベースになっているのは、Marshall Bluesbreaker系のトポロジーを採用したMorning Glory V1の回路です。ピッキングの強弱にそのまま反応し、アンプを一段プッシュしたような自然なクランチが得られるキャラクターは、ここに由来しています。そこへV4で培われた設計を加えることで、V1よりも高いヘッドルームを確保したというのがJHSの説明です。
歪ませると低域が減るのは、クリッピングの宿命
「もともと透明なサウンドなのに、なぜクリーン信号を混ぜる必要があるのか」という疑問は当然のものです。JHSはその答えを、Morning Glory本来の魅力そのものに求めています。DRIVEを上げると回路は倍音を増幅し、自然なソフトコンプレッションを生み出します。ジャングリーできらびやか、それでいてミックスの中に自然と収まる。この気持ちよさと引き換えに、まるで完成した音源のマスタリングのように低域が削られていくというわけです。
これは欠点ではなく、クリッピングという現象が持つ性質です。だからこそ、歪んだ信号はそのままに、失われた低域とアタックだけを別経路から足し戻すという発想が生まれました。
デュアルギャングポットが生む、段差のないブレンド
Morning Glory Cleanの核心は、CLEANノブにデュアルギャング(2連)ポットを採用している点にあります。ノブを回すとクリーン側のゲインがドライブ信号に比例して変化するため、ブレンド量を変えても音量が飛んだり、位相の打ち消しで音が薄くなったりしない設計とされています。
一般的なクリーンブレンドは、完成した歪み回路にミックスつまみを追加したものが少なくありません。Morning Glory Cleanは順序が逆で、2つの信号がすべてのゲイン設定で連動して動くことを前提に組まれています。JHSはこのCLEANコントロールを「アンプの出力ワット数と明瞭さ、押し出し感を足し戻すもの」と表現しています。
±9Vデュアル電源による高いヘッドルーム
電源セクションには±9Vのデュアル供給方式が採用されており、V1をはじめとする従来のBluesbreaker系より高いヘッドルームを確保しています。大音量に頼らずとも、ハイワッテージアンプがブレイクアップし始めた瞬間のような密度と余裕を狙った設計です。なお、ペダル自体への給電は一般的なDC9Vセンターマイナスで、内部で±9Vを生成する仕組みになっています。
4つのコントロールと、公式推奨のセッティング手順
ノブはVOLUME、DRIVE、TONE、CLEANの4つ。シンプルですが、それぞれの効き方には設計上の前提があるので、順番を押さえておくと迷わずに音を作れます。
各ノブの役割
- VOLUME:ドライ(Clean)とウェット(Drive)を含めた、Morning Glory Clean全体の音量を調整します。
- TONE:Morning Glory V1のトーンスタックで、DRIVE回路のみに作用します。時計回りでクリアに、反時計回りでウォームな方向へ。クリーン側の信号には影響しません。
- CLEAN:最小(反時計回り)でMorning Gloryそのままの歪み、最大(時計回り)でピュアなクリーンサウンドが出力されます。その間はすべて両者のバランスです。
- DRIVE:ゲイン量をコントロールします。
まず両方を上げきってから、CLEANで戻す
JHSが推奨しているのは、DRIVEとCLEANを一度どちらも最大にしてから、CLEANノブを反時計回りに戻していく手順です。本機はこの使い方を前提に設計されているとアナウンスされており、控えめなゲインから少しずつ足していく一般的なやり方とは逆になります。
DRIVEを思いきり上げても、CLEANが混ざっているぶんアタックと低域は保たれます。そこからCLEANを絞っていくと、どのあたりで歪みの質感とクリーンの芯が最も気持ちよく噛み合うかが見つけやすくなります。慣れてきたらVOLUMEでバイパス時との音量差を合わせ、最後にTONEで抜けを整えるとまとまります。
クリーンブーストとして使う
CLEANノブを最大にしたままDRIVEノブを上げると、オーバードライブのクリッピングを発生させずに音量だけを持ち上げられます。ソロでの一段アップや、真空管アンプの入力を押してやりたい場面で使える手法として、JHSも公式に案内しています。歪みペダルを1台減らせるという意味でも、ボード整理に効いてくるポイントです。
Morning Glory V4との違いと選び分け
気になるのは「V4から買い替えるべきなのか」という点だと思いますが、JHSはMorning Glory CleanがV4を置き換えるモデルではないと明言しており、V4は引き続き主力製品としてラインナップに残ります。つまり上位互換ではなく、性格の異なる2台という位置づけです。
| 項目 | Morning Glory Clean | Morning Glory V4 |
|---|---|---|
| クリーンブレンド | 搭載(デュアルギャングポット) | 非搭載 |
| コントロール | VOLUME / DRIVE / TONE / CLEAN | VOLUME / DRIVE / TONE +トグルスイッチ |
| 外部スイッチ | 非対応 | リモートスイッチ対応 |
| 向いている使い方 | 常時ON、ベース、クリーンの芯を残したい | 王道のトランスペアレントOD、ゲイン切替 |
低域とアタックを保ったまま歪みを足したい、ジャズやフュージョンのようにクリーントーンの質感が音の土台になるジャンルで使いたい、あるいはベースで使いたいという方はMorning Glory Cleanが向きます。一方で、シンプルなブースト/クランチ用途で外部スイッチによるゲイン切替を活用したいならV4という選び方になるでしょう。
使いこなし|接続順とベースでの活用
ファーストステージのオーバードライブとして
JHSはMorning Glory Cleanを、ボードの最初に置く常時ON型のオーバードライブとして推しています。アンプの手前に置いて薄く掛けっぱなしにすると、クリーンの芯を残したまま倍音とコンプ感だけが乗るため、後段のエフェクトの掛かり方も安定します。Kemper、Quad Cortex、Helixといったアンプモデラーの前段でも相性が良いとアナウンスされています。
ディストーションの前段に置く
ゲインの高いディストーションの前に置いた場合、通常なら潰れてしまいがちなサスティーンがより自然に伸びるとJHSは説明しています。クリーン成分が残っているぶんコードの分離感が保たれるため、スタッキング前提でボードを組んでいる方には試す価値のある接続です。
ディレイの後ろに置く
変わった使い方として、ディレイの後段に配置する方法もJHSから提案されています。パラレルクリーン回路によってシリーズ/パラレルが混在した状態が生まれ、通常の接続順では出せない質感が加わるという考え方です。
ベースオーバードライブとして
低域が削られにくいという特性は、そのままベースでの使いやすさにつながります。JHSは本機について、これまで自社が製作したなかで最も洗練されたMorning Gloryであり、ベース用としても最良のオーバードライブになりうるとコメントしています。CLEANノブで戻す低域の量を調整できるため、使用するベースやアンプに合わせて追い込めるのも実用的なポイントです。
スペックと使用上の注意
| タイプ | アナログ・オーバードライブ(Bluesbreaker系+パラレルクリーンブレンド) |
| 入出力端子 | インプット、アウトプット |
| コントロール | VOLUME、DRIVE、TONE、CLEAN、ON/OFFスイッチ |
| バイパス | バッファード・バイパス |
| 電源 | DC9V センターマイナス/消費電力 60mA |
| サイズ | 約6.6cm × 12.2cm × 4.1cm |
公式には、DC9Vを超える電源を使用しないよう注意が促されています。18V駆動でヘッドルームを稼ぐ発想は他社ペダルでは珍しくありませんが、本機は故障の原因となり保証が無効になる場合があるとされているため、9Vの安定化電源で使用してください。内部で±9Vのデュアル電源が生成されているので、外部電圧を上げなくても十分なヘッドルームが確保されています。
価格帯は3万円台前半が目安です。JHS Pedalsのラインナップのなかでは標準的な水準ですが、販売店やタイミングによって変動しますので、最新の実売価格は各ショップでご確認ください。
よくある質問
- Morning Glory V4を持っていますが、買い替えるべきですか?
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JHSはMorning Glory CleanがV4の後継ではないと明言しており、V4は引き続き販売されます。クリーンブレンドによって低域とアタックを残したい場合や、ベースで使いたい場合は追加する価値がありますが、V4の音に不満がないなら無理に置き換える必要はありません。
- 18Vで駆動できますか?
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できません。公式にDC9Vを超える電源の使用は避けるよう案内されており、故障や保証対象外となる可能性があります。内部で±9Vのデュアル電源が生成されているため、9Vのままで高いヘッドルームが得られます。
- トゥルーバイパスですか?
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バッファード・バイパスです。長いケーブルや多数のエフェクターを経由する環境では、バッファがハイ落ちを防ぐ方向に働きます。
- ベースでも使えますか?
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使えます。JHSはベース用としても最良のオーバードライブになりうるとしており、CLEANノブで戻す低域量を調整できる点がベースとの相性につながっています。
- クリーンブースターとしてだけ使うこともできますか?
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可能です。CLEANノブを最大にしてDRIVEノブを上げると、クリッピングを起こさずに音量だけを持ち上げられます。
まとめ
Morning Glory Cleanは、トランスペアレント系オーバードライブが抱えてきた「歪ませるほど痩せる」という構造的な課題に、クリーン信号を並列で足し戻すという方法で向き合ったペダルです。デュアルギャングポットによって歪みとクリーンが常に連動するため、ブレンド量を動かしても音量や位相が破綻しにくい設計になっています。
常時ONで薄く掛けたい方、クリーントーンの芯を犠牲にしたくない方、そしてベースで使える歪みを探している方にとっては、これまでのMorning Gloryとは別の選択肢になるはずです。

