アンプのクランチを、あと一歩だけ前に出したい。そう思ってオーバードライブを踏んだのに、返ってきたのは自分のアンプとは別の顔をした音だった。ローゲインで使いたい場面ほど、ペダル選びは難しくなります。
深く歪ませるなら、多少の癖はむしろ個性として歓迎できます。けれどクリーンと歪みのちょうど境目、ゲインを一割か二割足すだけの使い方では、ペダル側のキャラクターがそのまま表に出てしまう。ローゲインは、ごまかしが効きません。
One Control Cranberry OverDriveは、まさにその領域のために作られた一台です。定番として広く支持されてきたStrawberry Red OverDrive(SROD)を、設計者のBjörn Juhl(BJF)自身がローゲイン専用に振り直しました。ゲインの幅を狭めただけでなく、フィルター特性そのものにも手が入っています。
ローゲイン用のオーバードライブが、実はいちばんむずかしい
ハイゲインのペダルは、ある意味わかりやすい存在です。強く歪ませれば音は太くまとまり、細かな粗はゲインの中に溶けていきます。ところがゲインを絞った領域では、そうはいきません。ピッキングの強弱、ギター側のボリューム操作、ピックアップの持ち味。そのすべてが、加工されないまま出力に現れます。
だからこそ、ローゲインで気持ちよく鳴らせるペダルは限られます。多くのオーバードライブは、ゲインを絞ると中域が痩せたり、逆に妙にこもったりする。DRIVEノブの下から四分の一しか使わないのに、その狭い範囲で音づくりが決まってしまうという不自由さもあります。
Cranberry OverDriveは、その狭い領域を丸ごとノブ一本分に引き伸ばしたペダルだと考えるとわかりやすいはずです。
Cranberry OverDriveがSRODから変えたもの
設計はBJF本人によるもの
本機はOne ControlのBJF Seriesに属する製品で、回路設計はスウェーデンのビルダー、Björn Juhl(BJF)が手がけています。BJFEブランドのハンドメイドペダルで知られる人物で、SROD系のオーバードライブも同じ設計者の手によるものです。
Björn Juhl自身の言葉によれば、SRODがBJF Seriesの中でも特によく売れたことを受けて、そこから二つの派生モデルへ展開したとのこと。ローゲイン側に振ったのがCranberry、ハイゲイン側に振ったのがLingonberryです。つまりCranberryは、限定的な企画品ではなく、SRODという軸に対して意図的に用意された「もう一方の端」にあたります。
ゲインレンジを絞り、フィルター特性も変更
ここが、単なる「ゲイン控えめ版」と決定的に違う部分です。BJFはゲインレンジをローゲイン側に限定したうえで、フィルター特性そのものにも手を入れ、低域と高域がよりフラットに出る方向へ作り替えました。
ゲインを絞ったペダルは、そのままだと帯域バランスが崩れて眠く聞こえがちです。そこを回路側で作り直しているため、DRIVEを浅く設定しても輪郭が保たれる。ローゲイン専用モデルとして成立している理由は、この一点にあります。
ブースト量はSRODと同等
ローゲインと聞くと、音量も控えめなのではと不安になるかもしれません。その点は心配無用で、Cranberry OverDriveとSRODが得られるレベルブースト量は同程度とされています。歪みの深さは抑えつつ、音量だけをしっかり持ち上げられる。ソロで前に出るための道具として、この設計はそのまま強みになります。
3つのノブと、1つのトリムポット
操作系は、上面の3ノブに加えて、ローエンドを追い込むためのトリムポットが一つという構成です。
VOL / DRIVE / TREBLE
| コントロール | 働き |
|---|---|
| VOL | 出力音量を調整します。 |
| DRIVE | 歪みの量を調整します。右に回すほどゲインが上がります。 |
| TREBLE | 高域を中心に音色を調整します。右に回すほど高域が強く出ます。 |
TREBLEは、やわらかい響きから少し噛みつくような鳴りまでを行き来するコントロールです。ハムバッカーで少しこもる、シングルコイルで少し硬い、といった組み合わせ側の癖を、このノブで寄せていくことになります。
LOWトリムポットの調整
LOWは、ノブではなくトリムポットとして用意されています。低域の出方を微調整するためのもので、左に回すとローがカットされ、右に回しきった状態が工場出荷時のデフォルトです。
頻繁に動かす前提のコントロールではなく、使うアンプ、スピーカー、ピックアップの組み合わせに合わせて一度追い込み、あとはその状態で使うという性格のものです。調整には精密ドライバーを使い、丁寧に回してください。
ローが膨らみやすい大口径スピーカーのコンボや、出力の高いハムバッカーとの組み合わせでは、ここを少し左に振るだけでアンサンブルの中での見通しが変わります。
知っておきたい仕様
音を出していない状態でDRIVEを回すと、ガサガサとしたノイズが出ることがあります。これは故障ではなく、回路上の仕様によるものです。中古で入手した場合などに不安になりやすいポイントなので、あらかじめ知っておくと安心です。
どう使うと生きるペダルか
アンプをプッシュする
本機がもっとも力を発揮するのは、すでにできあがっているアンプの音を、そのまま一段押し上げる使い方です。ゲインの上限が低いぶん、アンプ側のキャラクターを塗り替えてしまう心配が小さく、音量と密度だけが素直に増えていきます。
ハイゲインアンプと組み合わせる場合も同様です。アンプ側のゲインを上げすぎると音が飽和して潰れがちですが、アンプのゲインをやや控えめにしてCranberryで前段から押してやると、同じ歪み量でも粒立ちが残ります。
リードブーストとして
One Controlは、ブルースやフュージョンからヘヴィロック、メタル、ジェントに至るまでを想定したリードブースターとして本機を位置づけています。歪みを足すのではなく音量と存在感を足す方向のブーストなので、バッキングで作り込んだ音色を崩さずにソロへ移れます。
メインの歪みとして
クリーンアンプに対してメインの歪みとして使うこともできます。ただし想定されているのはクランチから軽い歪みまでの範囲で、ここ一本でハードロック以上の歪み量をまかなうという設計ではありません。ディストーション領域まで欲しい場合は、後述するSTRAWBERRY RED OVERDRIVE 4Kや、よりゲインの高いモデルを検討したほうが近道です。
STRAWBERRY RED OVERDRIVE 4Kとの違い
迷いやすいのが、同じBJF設計の現行標準機であるSTRAWBERRY RED OVERDRIVE 4K(SROD 4K)との比較です。公式スペックを並べると、性格の違いがはっきり見えてきます。
| Cranberry OverDrive | STRAWBERRY RED OVERDRIVE 4K | |
|---|---|---|
| ゲインレンジ | ローゲインに限定 | クリーンブーストからディストーションまで |
| LOWコントロール | トリムポット | ノブ |
| 入力インピーダンス | 330K | 390K |
| 出力インピーダンス | 25K | 50K |
| 駆動電圧 | 9V | 9V〜18V |
| 消費電流 | 4mA | 10.7mA |
| S/N比 | -86dB | -90dB |
| 公式価格(税込) | 17,050円 | 18,150円 |
判断の分かれ目は三つあります。
一つめはゲインの幅。一本で強い歪みまでカバーしたいならSROD 4K、ローゲイン領域を細かく作り込みたいならCranberryです。
二つめはLOWの扱い。曲やアンプごとに低域を動かしたい人にはノブのSROD 4Kが合いますが、一度決めたら触らない運用なら、足元で誤って動かす心配のないトリムポットのほうが安心です。
三つめは電源。SROD 4Kは18V駆動に対応し、ヘッドルームを稼ぐ選択肢がありますが、Cranberryは9V専用です。18V運用を前提にボードを組んでいる場合は、ここを見落とさないでください。
なお、消費電流はCranberryが4mAと非常に小さく、パワーサプライの空きポートが心もとないボードでも扱いやすい部類に入ります。
スペック
| 型番 | OC-CBODn |
| 種類 | オーバードライブ |
| コントロール | VOL、TREBLE、DRIVE、LOW(トリムポット) |
| インプットインピーダンス | 330K |
| アウトプットインピーダンス | 25K |
| 駆動電圧 | 9V |
| 消費電流 | 4mA |
| S/N比 | -86dB |
| 電源 | 9Vセンターマイナスアダプター/9V電池(電池は付属しません) |
| スイッチング | トゥルーバイパス |
| 筐体 | アルミ削り出しミニサイズケース |
| サイズ | 39W×100D×31H mm(突起含まず)/47W×100D×48H mm(突起含む) |
| 重量 | 約160g(電池挿入時 約200g) |
| JAN | 4562459897311 |
向いている人、向いていない人
向いている人
- アンプで音を作り込んでいて、その延長線上でもう一段押したい人
- 音色を変えずに音量と密度だけ足せるリードブースターを探している人
- クランチから軽い歪みの範囲を、ノブの可動域いっぱいで細かく作りたい人
- ハイゲインアンプの粒立ちを保ったままリードトーンを作りたい人
- ボードのスペースと電源に余裕がなく、小型かつ低消費電流のペダルが必要な人
向いていない人
- 一本でクリーンからディストーションまでまかないたい人(SROD 4Kが適します)
- 18V駆動でヘッドルームを稼ぐ運用を前提にしている人
- 曲ごとに足元でローの量を動かしたい人(LOWはトリムポットのため即時操作には向きません)
- 強く歪ませてこそのメタル系リフを、このペダル単体で作りたい人
よくある質問
- 18V駆動はできますか?
-
できません。駆動電圧は9Vのみです。9Vセンターマイナスのアダプター、または9V電池で使用してください。18V駆動に対応しているのはSTRAWBERRY RED OVERDRIVE 4Kのほうです。
- DRIVEを回すとガサガサと音が鳴ります。故障でしょうか?
-
故障ではありません。無音状態でDRIVEを動かした際にノイズが出ることがありますが、回路上の仕様によるものです。
- LOWトリムポットはどう調整すればいいですか?
-
精密ドライバーで丁寧に回してください。右に回しきった状態がデフォルトで、左に回すほどローがカットされます。まずはデフォルトのまま使い、低域が膨らむと感じたら少しずつ左へ振っていくのがおすすめです。
- STRAWBERRY RED OVERDRIVE 4Kとどちらを選ぶべきですか?
-
ローゲイン領域を細かく作り込みたい、あるいはアンププッシュとリードブーストが主目的ならCranberry OverDriveです。一本でクリーンから強い歪みまでカバーしたい、18V駆動を使いたい、LOWをノブで即座に動かしたいならSTRAWBERRY RED OVERDRIVE 4Kが適しています。
- 電池は付属しますか?
-
付属しません。9V電池を別途ご用意ください。電池を入れた状態の重量は約200gです。
- メインの歪みとして使えますか?
-
クランチから軽い歪みまでであれば十分に使えます。ただしゲインレンジがローゲイン側に限定されているため、ディストーション領域までを単体でまかなう用途には向きません。
- Lingonberry OverDriveとは何が違いますか?
-
どちらもBJFがStrawberry Red OverDriveから派生させたモデルで、Cranberryがローゲイン側、Lingonberryがハイゲイン側にあたります。より強い歪みが欲しい場合はLingonberryが選択肢になります。
まとめ
Cranberry OverDriveは、器用に何でもこなすペダルではありません。ゲインの上限を意図的に低く抑え、そのぶんローゲイン領域だけを丁寧に作り込んだ、目的のはっきりした一台です。
アンプの音が気に入っている。だからこそ、それを壊さずに一段だけ押し出したい。そういう思いでオーバードライブを探しているなら、選択肢の中に入れておく価値があります。手のひらに収まる筐体に、消費電流4mAという控えめな要求。ボードのどこに置いても、邪魔にならないはずです。
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