バンドで音を出した瞬間に「あれ、思ったより前に出てこないな」と感じることがあります。特にシングルコイル搭載のギターだと、周りの音量が上がったときにフレーズの輪郭が埋もれてしまいがちです。かといってアンプのボリュームを上げれば済む話でもなく、曲中でギターを持ち替えれば音量差もそのまま露呈します。
MXR M133 Micro Ampは、そうした「あと少し信号を持ち上げたい」という場面に対して、ノブひとつで答えを出すクリーンブースターです。EQもモードもなく、やることはゲインを足すことだけ。だからこそ設定に迷わず、機材構成が変わっても居場所を失いません。
MXR M133 Micro Ampはどんなペダルか
M133は、GAINノブ1つとフットスイッチだけで構成されたシンプルなブースターです。ゲインの可変幅は+0.5dBから+26dBまで。ごくわずかな底上げから、アンプの入力段をしっかり押し込むレベルまで、1本のノブでカバーします。
周波数特性は20Hzから20kHzで、変動幅は+0dB / −1.4dBに収まります。つまり特定の帯域だけを持ち上げるのではなく、入ってきた信号をそのままの形で押し上げる設計です。トーンコントロールが付いていないのは省略ではなく、色を付けないことを前提にした構成だからです。
プリアンプ的な役割を担わせることもできますが、位置づけとしてはアンプの前段でレベルを整えるブースターと捉えるのが実態に近いペダルです。
M133が活きる3つの場面
出力差のあるギターの音量を揃える
ハムバッカーとシングルコイルを曲ごとに持ち替えると、同じアンプ設定でも音量が揃いません。出力の小さいギターを使う曲だけM133をオンにしておけば、その差を埋められます。ゲインを一度決めてしまえば踏むだけで再現できるので、ライブ中に手を伸ばしてアンプを触る必要がなくなります。
ソロで一段前に出る
もっとも分かりやすい使い方です。歪みの種類を変えずに音量だけを持ち上げるため、バッキングで作り込んだ音色を崩さずにソロへ移れます。歪みペダルの後ろに置けば音量が、前に置けば歪み量が主に動くので、どちらが欲しいかで置き場所を決めることになります。
長い信号チェーンでのレベル補正
ペダルを何台も直列につないだり、ケーブルの総延長が伸びたりすると、アンプに届くころには信号が痩せてきます。M133は入力インピーダンス1MΩで受けて、470Ωという低い出力インピーダンスで送り出すため、後段を駆動する力があります。ボード後半に常時オンで置いて、失われたぶんを取り戻す使い方が有効です。
主なスペック
| コントロール | GAIN |
| ゲイン可変幅 | +0.5dB 〜 +26dB |
| 入力インピーダンス | 1MΩ |
| 出力インピーダンス | 470Ω |
| 最大出力レベル | +6dBV |
| ノイズフロア | −80dBV(A特性・GAIN最大時) |
| 周波数特性 | 20Hz 〜 20kHz(+0dB / −1.4dB) |
| バイパス | ハードワイヤー |
| 消費電流 | 2.5mA |
| 電源 | 9V DC(9V電池 / ECB003・ECB003E / DC Brick・Iso-Brick・Mini Iso-Brick) |
注目したいのは消費電流の2.5mAです。デジタル系ペダルが数百mAを要求することを考えると桁が違う数字で、パワーサプライの空き口が少ないボードでも組み込みやすく、電池での運用も現実的な選択肢になります。
もうひとつ押さえておきたいのがバイパス方式です。M133はハードワイヤーバイパスなので、オフのときは信号が回路を通りません。つまり常時接続のバッファとして機能させることはできず、信号を押し出す働きが得られるのは踏み込んでいる間だけです。この点は購入前に把握しておくと、ボードの設計を誤らずに済みます。
セッティングの考え方
GAINを12時に合わせた状態からスタートして、時計回りでブースト量が増えていきます。用途別の目安は次のとおりです。
- 最小付近(+0.5dB前後):音量をほぼ変えずに、低い出力インピーダンスで信号を送り出したいとき
- 9時〜11時:ギター間の音量差を埋める、痩せた信号を戻す
- 12時前後:ソロ用のブースト。バッキングとの差をはっきりつける
- 2時以降:アンプやその後の歪みペダルの入力段を積極的に押し込む
ノイズフロアの−80dBVはGAIN最大時の数値です。大きく上げるほどノイズも一緒に持ち上がるので、必要な量だけ足すのが基本になります。まずは「足りない分をちょうど埋める」位置を探して、そこから微調整していく手順が扱いやすいはずです。
接続位置による効き方の違い
M133自体は信号を色付けせずに持ち上げるだけなので、実際にどう聞こえるかは「何を押しているか」で決まります。
- 歪みペダルの前:入力が大きくなるぶん、歪みペダル側のゲインが増した方向に動きます
- 歪みペダルの後ろ:歪み量はそのままに、出力レベルが上がります
- クリーンアンプの前:アンプのヘッドルーム次第で、音量が上がるか自然な飽和が加わるかが変わります
- ボードの最後段:チェーン全体で失われたレベルを取り戻す役割になります
1台で複数の役割を持てるペダルなので、まずは1か所に固定せず、ボード内で位置を変えながら効き方の違いを確かめてみると、自分の機材に合った定位置が見つかります。
Micro Amp+(M233)との違い
MXRには上位版としてMicro Amp+(M233)があり、どちらを選ぶか迷いやすいところです。違いは大きく2点に絞られます。
| Micro Amp(M133) | Micro Amp+(M233) | |
| コントロール | GAIN | GAIN / BASS / TREBLE |
| 最大ブースト量 | +26dB | +26dB |
| オペアンプ | — | 低ノイズタイプを採用 |
ブースト量の上限は同じで、M233にはBASSとTREBLEが追加されています。両方を12時にすればM133と同じ考え方のフラットなブーストになり、そこから低域・高域を足し引きできる構成です。加えて低ノイズオペアンプが採用されており、ゲインを大きく上げたときの静けさに差が出ます。
判断基準はシンプルで、ブーストと同時に音色も動かしたいならM233、素直に持ち上げるだけでよければM133です。会場やバックラインが毎回変わる環境ではEQが効いてきますし、自分のアンプで音を作り込んでいる人にとっては、余計なコントロールがないM133のほうが迷いなく使えます。筐体サイズもM133のほうがコンパクトで、ボードの面積という現実的な制約でも選ぶ理由になります。
よくある質問
- 電池でも実用的に使えますか?
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消費電流が2.5mAと非常に小さいため、9V電池での運用も現実的です。裏蓋を外して装填する構造なので、ライブ本番前に交換する運用であれば余裕を持って使えます。もちろんECB003などの9Vアダプターや、DC Brick・Iso-Brick・Mini Iso-Brickといったパワーサプライからの給電にも対応します。
- つなぎっぱなしにしてバッファ代わりに使えますか?
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バイパスがハードワイヤー方式のため、オフのときは信号が回路を通らず、バッファとしては働きません。低い出力インピーダンスで信号を送り出す効果を得たい場合は、GAINを最小付近にして常時オンにしておく形になります。この状態なら音量をほとんど変えずに、後段を駆動する力だけを得られます。
- M133単体で歪みますか?
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M133は信号レベルを上げるための回路で、それ自体が歪みを作るペダルではありません。ゲインを大きく上げたときに歪んで聞こえる場合、歪んでいるのは後段のアンプや歪みペダルの入力段です。逆に言えば、アンプを自然に押して飽和させる用途にはそのまま使えます。
- ベースにも使えますか?
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周波数特性は20Hzから20kHzをカバーしており、低域が削られる設計ではありません。ただし最大出力レベルは+6dBVなので、アクティブベースなど出力の大きい楽器と組み合わせる場合は、ゲインを上げすぎないほうが扱いやすくなります。
- ボードのどこに置くのが正解ですか?
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目的によって変わります。歪み量を増やしたいなら歪みペダルの前、音量だけを上げたいなら歪みペダルの後ろ、チェーン全体で失われたレベルを補いたいなら最後段が基本の考え方です。1台で複数の役割をこなせるので、置き場所を変えて比較してみる価値があります。
まとめ
MXR M133 Micro Ampは、+0.5dBから+26dBまでをノブ1つで扱えるクリーンブースターです。20Hz〜20kHzを素直に通す特性、1MΩ / 470Ωというインピーダンス設計、2.5mAという小さな消費電流。どれも派手さはありませんが、ボードに一台あることで解決する問題は少なくありません。
ギターごとの音量差、ソロでの押し出し、長い信号経路での目減り。それぞれ別の悩みに見えて、突き詰めれば「信号レベルをコントロールしたい」という同じ問題です。M133はそこにだけ集中した設計で、長く定番であり続けています。
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