アンプのボリュームを上げられない場所で、クリーントーンにもう少しだけ艶と粘りが欲しい。そんなときに手が伸びるのが、真鍮の塊のようなボディを持つVEMURAM Jan Ray(ヴェムラム・ジャンレイ)です。歪みを足すというより、アンプが少しだけ鳴りはじめた瞬間の質感をペダルで引き寄せる、という発想のオーバードライブです。
VEMURAM Jan Rayとは

VEMURAMは東京のTri-Sound社が手がける国産ハンドメイドブランドで、Jan Rayはそのフラッグシップにあたるモデルです。VEMURAMはこのペダルを、60年代ブラックフェイス期のFenderアンプが持つパンチのあるクリアなトーン──いわゆる「Magic 6」と呼ばれるセッティングのサウンド──を再現するものとして設計しています。
不自然なコンプレッションを加えず、ギター本来のキャラクターを保ったままサステインを伸ばす。この方向性がJan Rayの設計の中心にあります。真鍮製の筐体は外来ノイズに対するシールドとしても機能しており、見た目の高級感だけでなく実用面の役割も担っています。
4つのノブとサチュレーション・トリマー
コントロールは4ノブ構成で、配置は次のとおりです。
- VOLUME(左上):出力音量。ヘッドルームに余裕があり、上げてもサウンドが崩れにくい設計です。
- GAIN(右上):歪み量。変化がゆるやかで、少し動かしただけで音色が激変するタイプではありません。
- BASS(左下):低域の調整。効きが極端ではなく、アンプ側の音作りを崩さずに微調整できます。
- TREBLE(右下):高域の調整。抜けを整える役割です。
そしてJan Rayを語るうえで欠かせないのが、サチュレーション・トリマーです。筐体の上部側面に設けられており、ミニドライバーで操作します。裏蓋を開ける必要がないため、ボードに組み込んだ状態のままでも調整できます。
このトリマーが担うのは、歪みの量ではなく飽和感と倍音の密度です。GAINを上げずに音の詰まり具合だけを変えられるため、同じセッティングでも輪郭を残したすっきりした鳴りから、艶のある密度の高い鳴りまで、キャラクターの土台そのものを動かせます。ギターのピックアップやアンプに合わせて一度追い込んでおくと、以降はノブ操作だけで完結する、という使い方が現実的です。
サウンドの方向性
Jan Rayはローゲイン領域に軸足を置いたペダルです。歪みを深く稼ぐことよりも、クリーンからクランチにかけての領域をどれだけ気持ちよく鳴らせるかに設計が寄っています。
コンプレッション感が強く出ないため、ピッキングの強弱がそのまま音量差として残ります。軽く弾けばほぼクリーン、強く弾けば自然に歪みが乗る。手元のボリュームを絞ったときの反応も素直なので、足元を踏み替えずにギター側だけでダイナミクスを作りたいプレイヤーとは相性が良い設計です。
一方で、GAINを上げていっても音が潰れにくくコードの分離が保たれる反面、ハイゲインな歪みを1台で完結させたい用途には向きません。ここは好みというより設計上の性格として、あらかじめ把握しておきたいところです。
こんな人に向いています
- アンプを大音量で鳴らせない環境で、アンプライクな質感を足したい方
- クリーン〜クランチの表現幅を広げたいブルース・ジャズ・ルーツ系のプレイヤー
- 常時オンにして、アンプのトーンを底上げする使い方をしたい方
- ハイゲイン歪みの前段に置く、上質なブースターを探している方
- ノブが少なく、音作りの方向性を掴みやすいペダルを求めている方
逆に、1台でメタルやハードロックのリードまでまかないたい場合は、別系統のディストーションを検討したほうが近道です。
実際の使用シーン
たとえばジャズやフュージョンで、クリーントーンの芯を太くしたい場面。GAINを絞ってVOLUMEを上げれば、歪みを足すというより音の密度が上がる感覚で使えます。
ブルースやルーツロックでは、GAINを9時前後に置いて踏みっぱなしにし、あとはギターのボリュームで濃淡をつけるという運用がはまります。バッキングでは絞り、ソロで開ける。この操作に素直に応えてくれるのがJan Rayの持ち味です。
ヘッドルームに余裕があるため、Roland JC-120のようなソリッドステートアンプのクリーンチャンネルに対しても、痩せずに厚みを足せます。ここでサチュレーション・トリマーを少し開けておくと、倍音が乗って硬さが和らぐ方向に振れます。
他の定番オーバードライブとの違い
| モデル名 | コントロール | 歪みの方向性 | キャラクター |
|---|---|---|---|
| VEMURAM Jan Ray | Volume / Gain / Bass / Treble + サチュレーション・トリマー | ローゲイン中心 | ブラックフェイス期Fenderを狙った設計。トリマーで飽和感を作り込める |
| Paul Cochrane Timmy | Volume / Gain / Bass / Treble | ローゲイン中心 | EQはカット方向で効く。原音の色付けが少ない |
| Fulltone OCD | Volume / Tone / Drive + HP/LPスイッチ | ミドル〜ハイゲイン | スイッチでキャラクターを大きく切り替えられる |
| Xotic RC Booster | Volume / Gain / Treble / Bass | クリーンブースト〜軽い歪み | ブースト用途に軸足を置いた設計 |
コントロール構成だけを見るとTimmyと近く見えますが、Jan Rayはトリマーによる飽和感の作り込みが加わる分、同じセッティングでも到達できる音の幅が異なります。
セッティングの出発点
最初の一歩として、次のあたりから探ってみてください。
- GAIN:9時〜10時。クランチ寄りの、踏みっぱなしにしやすい領域です。
- VOLUME:バイパス音と同程度になる位置から。ブースト用途なら12時以上へ。
- TREBLE:12時前後。抜けが足りなければ少しずつ開けます。
- BASS:12時前後。バンドで低域がぶつかるようなら控えめに。
- サチュレーション・トリマー:中央付近から。硬さが気になるなら飽和感を足す方向、輪郭が欲しいなら減らす方向へ。
トリマーは頻繁に触る場所ではありません。使用するギターとアンプの組み合わせで一度決めてしまえば、あとはノブだけで運用できます。
スペック
- コントロール:Volume、Gain、Bass、Treble、サチュレーション・トリマー
- スイッチ:ON/OFF
- 端子:Input、Output
- 電源:006P(9V電池)またはセンターマイナス仕様の9V ACアダプター
- 消費電流:5mA
- サイズ:約70(W)×113(D)×50(H)mm
- 重量:428g
FAQ|よくある質問
- 電池で駆動できますか?
-
できます。006P(9V電池)に対応しています。ACアダプターを使う場合は、センターマイナス仕様の9Vを使用してください。消費電流は5mAと少なめです。
- 18Vで動かしても大丈夫ですか?
-
VEMURAMはファズ以外のペダルについて18Vとの互換性がある旨を示しつつ、9V設計であることを理由に18Vでの使用を推奨していません。9Vを超える電圧での使用による損傷は保証対象外とされているため、9Vでの運用が無難です。
- サチュレーション・トリマーはどこにありますか?
-
筐体の上部側面にあります。ミニドライバーで操作するタイプで、裏蓋を開ける必要はありません。ボードに固定したままでも調整できます。
- ブースターとしても使えますか?
-
GAINを絞ってVOLUMEを上げる使い方が可能です。ヘッドルームに余裕があるため、原音のキャラクターを保ったまま出力を持ち上げられます。歪みペダルの前段に置く運用にも対応します。
- どんなアンプと組み合わせやすいですか?
-
設計上ブラックフェイス期Fenderのトーンを軸にしているため、Fender系のクリーンアンプとは方向性が揃います。ヘッドルームがあるので、JC-120のようなソリッドステートアンプのクリーンチャンネルに厚みを足す用途にも使えます。
- 派生モデルはありますか?
-
EQ特性やゲインレンジを調整した仕様違いのモデルが展開されています。標準モデルとは音の出方が異なるため、購入時はどの仕様かを確認しておくと安心です。
まとめ
- ブラックフェイス期Fenderの「Magic 6」サウンドを狙って設計されたローゲイン・オーバードライブ
- コンプレッション感が控えめで、ピッキングとギターボリュームに素直に反応する
- 上部側面のトリマーで飽和感・倍音の密度を作り込める
- 4ノブ構成でシンプル。9V電池でもACアダプターでも駆動可能
歪みを足す道具というより、アンプの鳴りはじめを手元に引き寄せる道具。そういう性格のペダルを探しているなら、候補に入れておく価値があります。
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