ペダルボードにBD-2が一台あれば、たいていの場面は乗り切れる。1995年の登場から30年以上、そう感じてきたギタリストは世界中にいます。ただ、長く使っていると、もう少しこうだったらと思う場面が出てくることもあります。そこに手を入れたのがBD-2Wです。BOSS自身がBD-2の回路をゼロから設計し直し、オペアンプICを使わない完全ディスクリート構成で組み上げたモデルで、オリジナルの音を新回路で再現するスタンダードと、キレを保ったまま太さと粘りを加えるカスタム、性格の異なる2つの回路を1台で使い分けられます。
BD-2Wはどんなペダルなのか
BOSS自身が手がけたBD-2のカスタム版
BD-2Wは、2014年7月にSUMMER NAMMで発表され、同年9月下旬に発売された「技 WAZA CRAFT」シリーズの第1弾です。同時に登場したのはSD-1WとDM-2Wの2機種で、いずれもBOSSの定番機を開発チーム自身が回路レベルから作り直すという企画でした。
BD-2は他社によるモディファイが数多く存在するペダルですが、BD-2Wはその流れとは出発点が違います。オリジナルを設計した側が、当時の設計思想を踏まえたうえで手を入れているという点が、外部モディファイとの決定的な差です。
「部品を替えるだけ」のはずが、別の回路になった
興味深いのは、開発が当初はそこまで大がかりなものとして構想されていなかったことです。はじめは部品を上位のものに置き換えるレベルで進める予定だったものが、作業を進めるうちに結果としてすべてをやり直すことになり、最終的にはまったく別の回路が組み上がりました。
とはいえ、オリジナルのキャラクターを変えてしまっては意味がありません。基本的にはBD-2の回路をもとにしながら、設計し直された結果として別回路になっている部分がある、というのが実際のところです。「別物になった」とも「オリジナルのまま」とも言い切れないところに、このペダルの性格がよく表れています。
完全ディスクリート回路がもたらすもの
オペアンプICを使わないという選択
BD-2Wの増幅段には、既製のオペアンプICが使われていません。トランジスタや抵抗、ダイオードといった個別部品で構成する、いわゆる完全ディスクリート構成です。
この構成を選んだ理由は明快で、既製のICを使うと特性がそのICに縛られてしまい、設計者が思い描いたとおりの音にできないためです。ディスクリート・アンプにすれば、増幅段の性格そのものを自分たちで決められます。一つひとつのパーツを選び直しているのも、その自由度があってこそ活きてくる部分です。
ゲインの高い回路と、ノイズへの対処
もうひとつ、ディスクリート化にはノイズ面の狙いもありました。BD-2WとSD-1Wは回路のゲインが高いため、部品の配置には慎重を期する必要があり、オペアンプを使わない構成を採ったことでノイズを減らすことができています。
アナログ回路を組み直したペダルというと、どうしても音色の話ばかりが先に立ちますが、ノイズの少なさは録音でもライブでも効いてきます。ゲインを上げて使う機会が多い人ほど、恩恵を感じやすい部分だと思います。
スタンダードとカスタム、2つのモード
回路設計そのものが切り替わる
ノブの間に追加されたS/Cのモード・スイッチは、BD-2Wでもっとも目を引く変更点です。ここで押さえておきたいのは、これがクリッピング・ダイオードを1組差し替えるような単純な切り替えではないということ。それぞれのキャラクターに合わせて、回路設計自体が最適なものへ切り替わる仕組みになっています。
ひとつの筐体に2種類の設計を収めているわけで、スイッチひとつぶんの追加としてはずいぶん贅沢な作りです。
Sモード:オリジナルの音、ただし「完全に同じ」ではない
スタンダード・モードは、BD-2特有のブルージーなクランチを新設計のディスクリート回路で再現したものです。ただし、ここは誤解されやすいところで、BD-2とそっくりそのまま同じ音が出るわけではありません。
基本的には同じサウンドが出るものの、まったく同じではなく、耳の良い人であれば気づく程度の差がある。弾き心地の面でも印象が変わる可能性がある。BOSSの開発陣自身がそう位置づけています。「オリジナル完全再現」という説明を見かけることがありますが、実際にはもう少し慎重な表現が正確です。
Cモード:キレを保ったまま、太さと粘りを足す
カスタム・モードは新規に設計されたキャラクターです。こちらでよく受け取られがちなのが、「Cモードはワイドレンジ版」という理解でしょう。BD-2Wのカスタム・モードで目指されたのは、レンジを広げることではなく、BD-2らしいキレとアタックを維持したまま、そこに太さと粘りを足すことでした。
あわせて、繊細なピッキング・ニュアンスへの反応が俊敏になり、サスティンも向上しています。同じシリーズでもSD-1Wのカスタム・モードはレンジを広げてゲインも上げる方向に振られており、両者は明確に別の設計思想で作られています。
- Sモード:BD-2のキャラクターを新設計のディスクリート回路で再現。オリジナルと同一ではなく、わずかな差がある
- Cモード:キレとアタックを保ったまま太さと粘りを付加。ピッキングへの反応とサスティンが向上
コントロールと音作りの考え方
コントロールはLEVEL、TONE、GAINの3つに、S/Cのモード・スイッチが加わるだけの構成です。オリジナルBD-2を使ったことがあれば、迷う場面はまずありません。
音作りの手順としては、まずモードを決めてから3ノブを詰めていくほうが早道です。SとCでは回路が入れ替わるため、片方で追い込んだセッティングをそのまま切り替えても、狙いどおりの結果にはなりにくいところがあります。歪みの量感やTONEの効き方が変わるので、モードごとに一度セッティングを取り直すつもりで向き合うと、それぞれの性格がつかみやすくなります。
入力インピーダンスは1MΩ、出力インピーダンスは1kΩ、規定入出力レベルはいずれも−20dBuです。推奨負荷インピーダンスは10kΩ以上とされているので、後段に極端に入力インピーダンスの低い機材を置く場合だけ、順番を意識しておくと安心です。
BD-2とBD-2W、どちらを選ぶか
BD-2Wの登場後もオリジナルのBD-2は生産が続いており、現在も両方が現行品として並んでいます。つまりこれは上位機種への置き換えではなく、性格の違う2つの選択肢が並んでいる状態です。
BD-2Wが向いている人
- BD-2の質感は好きだが、ゲインを上げたときの音の詰まり方が気になっている
- 低音弦の粘りやハイポジションでの太さを、もう少し欲しいと感じている
- ゲインを高めに設定して使うことが多く、ノイズを一段抑えたい
- 1台で歪みのキャラクターを2種類持ちたい
BD-2のままで十分な人
正直に書いておくと、すべての人がBD-2Wに買い替えるべきだとは言えません。BD-2のあのややピーキーなところ、歪ませたときに少しコンプレッションがかかる感じ自体を含めて音楽的だと考えて使っているなら、その質感はオリジナルにしかないものです。
また、BD-2Wの改良点は微細な部分に集中しています。ピッキングの強弱やギター側のボリューム操作で音を作り込むタイプの弾き方をしていないと、その差を実感しにくい可能性もあります。ブースター的に常時オンで踏みっぱなし、という使い方が中心なら、BD-2で不足を感じる場面は少ないでしょう。
ペダルボードに組み込むときの実務情報
筐体サイズと質量はBOSSコンパクトの標準どおりで、73(W)×129(D)×59(H)mm、430gです。既存のボードにBD-2が載っているなら、そのまま置き換えられます。
| 規定入力レベル | −20dBu |
| 入力インピーダンス | 1MΩ |
| 規定出力レベル | −20dBu |
| 出力インピーダンス | 1kΩ |
| 推奨負荷インピーダンス | 10kΩ以上 |
| コントロール | ペダル・スイッチ、モード・スイッチ、LEVEL、TONE、GAIN |
| 接続端子 | INPUT、OUTPUT、DC IN |
| 消費電流 | 18mA |
| 外形寸法 | 73(W)×129(D)×59(H)mm |
| 質量 | 430g |
電源は9V電池(アルカリまたはマンガン)と、別売ACアダプターに対応します。連続使用時の電池寿命はマンガンで約20時間、アルカリで約35時間が目安です。
指定されているACアダプターはPSAシリーズ(国内はPSA-100)で、DC9V・500mA・センターマイナスの仕様です。他社製パワーサプライから供給する場合も、この条件を満たしていることを確認してください。消費電流は18mAと軽いので、出力端子の容量で困る場面はまずありません。
インジケーターはCHECKインジケーターがバッテリー・チェックを兼ねており、電池駆動時は点灯の様子で残量の目安を確認できます。
INSPECTED IN JAPANという特別対応
技 WAZA CRAFTシリーズには、通常のBOSSコンパクトにはない出荷前の工程が設けられています。国内の設計開発チームと同じ建物ですべての機能をチェックし、音の確認はもちろん、衝撃を与えて異常が出ないか、外観の品質はどうかまで見たうえで出荷される、というものです。
そして、国内でチェックされた証として「INSPECTED IN JAPAN」のプレートと連番が貼られ、シリアル・ナンバーが付けられます。これはWAZA CRAFTシリーズだけの特別対応として、発売時に案内されたものです。
BOSSは技 WAZA CRAFTをメイド・イン・ジャパンのシリーズとして位置づけており、保証期間も通常より長い5年が設定されています。長く使う前提のペダルとして、この点は安心材料になります。
よくある質問
- SモードにすればオリジナルのBD-2とまったく同じ音になりますか?
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基本的には同じサウンドが出ますが、まったく同じではありません。BD-2Wは新設計のディスクリート回路でBD-2のキャラクターを再現したもので、注意深く聴けば違いが分かる程度の差があります。弾き心地の面でも印象が変わる可能性があります。
- Cモードはワイドレンジになるモードですか?
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BD-2Wのカスタム・モードはレンジを広げる方向ではなく、BD-2らしいキレとアタックを保ったまま太さと粘りを加える設計です。レンジを広げてゲインも上げる方向に振られているのは、同シリーズのSD-1Wのカスタム・モードになります。
- モード・スイッチは足元で踏み替えできますか?
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モード・スイッチはノブの間に配置された小型のスイッチで、フットスイッチとは別のものです。演奏中に瞬時に切り替える用途ではなく、曲やセッション単位でキャラクターを決めておく使い方が前提になります。
- オリジナルBD-2用のパワーサプライをそのまま使えますか?
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BD-2WもDC9V・センターマイナスで、消費電流は18mAです。BD-2に使っていた電源環境をそのまま流用できます。純正ではPSAシリーズ(国内はPSA-100)が指定されています。
- BD-2Wは現在も購入できますか?
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2014年9月の発売以降、現行製品として継続して展開されています。オリジナルのBD-2も並行して生産が続いているため、両方を店頭で比較できる場合があります。
まとめ
BD-2Wは、部品交換で済ませるつもりだった計画が結果として全面的な回路の作り直しに至った、という経緯を持つペダルです。オペアンプICを使わない完全ディスクリート構成、回路そのものが入れ替わる2つのモード、そして国内での全数チェックと5年保証。どれも派手な機能ではありませんが、細部を積み上げた結果として生まれた差がそのまま音に出ています。
言い換えれば、その細部に反応できる弾き方をしている人にこそ意味のある一台ということでもあります。BD-2を使い込んできて、もう少しこうだったらと思う場面があるなら、Cモードの粘りは試してみる価値があるはずです。
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BOSS
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僕、最近までBD-2Wに日本製と台湾製がある事を知らなかった。
この人のMY COLLECTION BOXで見るたまたま日本製に出会い、台湾製も持ってたけど、勢いで購入してしまった😅
やっぱりCモードの音は最高👍