strymon ストライモン / Iridium イリジウム【アンプシミュレーター】【プリアンプ】

アンプを担いで現場へ向かうのが年々つらくなってきた。自宅では本来の音量まで上げられない。会場に置いてあるアンプが毎回違って、そのたび音作りをやり直している。ギターやペダルには納得しているのに、それを鳴らす環境のほうで消耗しているギタリストは少なくありません。

strymon Iridium(ストライモン イリジウム)は、チューブアンプ・スピーカーキャビネット・部屋の響きという3つの要素をコンパクトペダル1台にまとめたアンプ&IRキャビネット・エミュレーターです。ペダルボードの最後尾に置いてPAやオーディオインターフェースへ直接つなげば、そこから完成したギターサウンドがそのまま出ていきます。

strymon ストライモン / Iridium イリジウム【アンプシミュレーター】
目次

アンプ・キャビネット・ルームを1台に

Iridiumの構成はシンプルです。3種類のアンプモデルがあり、それぞれに3種類のステレオIRキャビネットが割り当てられ、さらに部屋の響きを足すROOMコントロールが乗ります。ノブはDRIVE、LEVEL、BASS、MIDDLE、TREBLE、ROOMの6つだけ。ディスプレイもメニュー階層もなく、アンプのパネルを触る感覚でそのまま音が決まります。

入力段には高性能JFETディスクリート回路を採用し、ここで最大22dBのアナログゲインを稼いだうえでDSPに送り込む設計です。ピッキングの強弱やギター側のボリューム操作がそのまま歪み方に反映されるのは、このアナログ+デジタルの組み合わせによるものです。

3種類のアンプモデル

Matrix Modeling™と名付けられたモデリング手法で、トーン回路の定数、バイアス、カットオフ周波数、真空管各段のゲインといった要素を回路動作のレベルから解析しています。トランジェント信号によって回路内の電圧が一瞬落ち込む挙動まで含めて再現されているため、コードを弾いたときの倍音の変化や、音が減衰していく過程の質感が実機に近いものになります。

round — Fender Deluxe Reverb

Fender Deluxe Reverbのノーマルチャンネルがベース。クリーンでブライト、ミッドが軽くスクープしたヘッドルームの広いキャラクターです。オリジナルにはないMIDDLEノブが加えられており、12時でDeluxe Reverb本来の固定抵抗値に相当する特性、絞ればよりスクープした音、上げればツイード期を思わせる中域の押し出しへと動きます。

chime — Vox AC30TB Brilliantチャンネル

Vox AC30TBのBrilliantチャンネルがベース。軽いタッチではエアー感のある響き、強く弾き込めば独特のエッジが立ち上がります。このモデルではMIDDLEがオリジナルのTone Cutと同じ働きになり、上げるほど高域が落ちる操作系です。DRIVEを上げ切る手前からは低域を締めるフロントエンドブーストが加わり、オリジナルのゲインレンジを超えたサチュレーションまで届きます。

punch — Marshall Plexi(Super Lead 1959)

Marshall Plexi(Super Lead model 1959)がベースで、3つのなかでは最も太くゲインが高いモデルです。中域の押し出しとなめらかなオーバードライブが持ち味。DRIVEの2時付近がオリジナル回路で得られる最大ゲインに相当し、そこから先はホットロッド改造を施したPlexiの領域に入ります。

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9種類のステレオIRキャビネット

キャビネットは24bit / 96kHz、長さ500msのステレオIRを採用しています。この解像度と長さのIRは、長らくスタジオのコンボリューション系ソフトウェアの領域でした。それをペダルサイズの筐体で扱えるのがIridiumの中心的な特徴です。キャビネットの箱鳴り、コーンの振動、マイクや床・天井からの反射といった細部が残るため、実際にキャビネットの前で鳴っている感触に近づきます。

出荷時にロードされているIRは、OwnHammer、cabIR.eu、Celestion、Valhallir.atという定評あるプロバイダーから選ばれたものです。

round用

  • a:1×12 Fender Deluxe Reverb(1978年製Fender CTSセラミック/OwnHammer)
  • b:1×12 Fender Blues Junior(Jensen C12N/cabIR.eu)
  • c:2×10 Fender Vibrolux(Jensen C10NS/cabIR.eu)

chime用

  • a:2×12 Vox AC30/6 オープンバック(Celestion T0530 Blue AlNiCo/OwnHammer)
  • b:1×12 クローズドバック(Celestion Blue AlNiCo/Celestion)
  • c:4×12 Mesa/Boogie Half-Back(Celestion Black Shadow MC-90+Electro-Voice Black Shadow EVM12-L/Valhallir.at)

punch用

  • a:4×12 Marshall(Celestion T1221 G12M-25/OwnHammer)
  • b:2×12 オープンバック(Celestion Vintage 30/Celestion)
  • c:8×12 Marshall(Celestion T652 AlNiCo/cabIR.eu)

これら9スロットは固定ではありません。無償の「Strymon Impulse Manager」をPCにインストールし、USB経由で接続すれば、手持ちのIRやサードパーティ製IRに入れ替えられます。24bit / 96kHzのWAVであればギターキャビネット以外でもよく、ベースキャビネット、アコースティック楽器のボディレスポンス、音楽サンプルなども読み込めます。IRを差し替えたセットは「コレクション」として名前を付けて保存でき、用途ごとに組み替えて運用できます。

部屋の響きを足すROOMコントロール

アンプとキャビネットだけを直接モニターすると、どこか平面的で耳に張り付いた音になりがちです。IridiumのROOMは、実際の部屋のアーリーリフレクションを捉えた256msのインパルス・レスポンスに、残響のテール部分をstrymonのリバーブアルゴリズムで補うハイブリッド構成です。空間系エフェクトとしてのリバーブとは役割が違い、スピーカーが空気を動かしている感じを取り戻すための処理と考えるとイメージしやすいと思います。

ルームサイズはSmall / Medium / Largeの3種類。ONフットスイッチの長押しでセカンダリー機能に入り、ROOMノブで選択します。設定はFAVやプリセットごとに保存されます。

strymon ストライモン / Iridium イリジウム【アンプシミュレーター】

ステージ・スタジオ・自宅での使い方

ステージ

ペダルボードの出力をDIボックス経由でPAへ送り、ハウスモニターやイヤモニでモニターする形になります。アンプのマイキングをエンジニアに委ねる必要がなく、会場が変わっても手元の設定がそのまま音になります。個人用にフルレンジのパワードモニターを立てる運用も相性が良い方法です。

スタジオ

出力をオーディオインターフェースへ直接接続すれば、マイキングも大音量も不要でステレオのアンプ+キャビ+ルームが録れます。ディレイやリバーブの前にIridiumを置いて、アンプとキャビを通したあとの信号を空間系に送る組み方も可能です。

自宅

ヘッドフォン出力は1/8インチのステレオミニ。25〜70Ω程度のヘッドフォンに合わせて設計されており、インピーダンスの高いモデルでは出力レベルが下がります。LEVELノブで音量を調整できるほか、FAVに保存した設定を変えずに一時的にモニターレベルだけを動かせる「レベルトリム」機能もあり、夜間の練習では重宝します。

アンプ部・キャビ部だけを使う

Iridiumはアンプ部とキャビ部を切り離して使えます。ONフットスイッチを押しながら電源を入れると出力モードの設定に入り、DRIVEノブで3つのモードを選択します。

  • Cabバイパス:アンプ+ルームのみ動作。出力をギターアンプのリターンやパワーアンプ入力へ送り、プリアンプとして使う構成
  • Ampバイパス:キャビ+ルームのみ動作。手持ちのプリアンプやプリアンプペダルの出力を受けて、IRローダーとして使う構成
  • ノーマル:アンプ・キャビ・ルームすべてが動作(初期設定)

アンプシミュレーターとして買ったあとで手持ちのプリアンプが増えても、IRローダーとして役割を変えられる。長く使ううえで効いてくる部分です。

プリセットと外部コントロール

本体のFAVフットスイッチには、全ノブとスイッチの設定を含む「お気に入り」を1つ保存できます。長押しでLEDがブルーに点滅したら、もう一度押して上書きする操作です。

さらに拡張する手段も用意されています。Strymon MultiSwitch Plusを接続すれば3つのプリセットを足せ、本体のFAVと合わせて4音色を足元で切り替えられます。MIDI EXPケーブルやMIDI→TRSインターフェース経由では300のプリセットロケーションにアクセスでき、各ノブのリアルタイムコントロールも可能です。TRSタイプのエクスプレッションペダルを挿せばボリュームペダルとして機能し、ヒール側とトウ側に複数ノブの位置を割り当てて、ペダルの踏み込みで音色をモーフィングさせる使い方もできます。

入出力とルーティング

リアパネルのセレクターで3つのルーティングを切り替えます。

  • MONO:ギターなどモノ信号を入力し、出力はステレオ
  • STEREO:ステレオ入力・ステレオ出力(入力にはTRSアダプターケーブルが必要)
  • SUM:ステレオ入力をモノにまとめ、OUT Lから出力

入力レベルはインストゥルメントとラインを切り替えられ、ラインを選ぶとヘッドルームが10dB上がります。ステレオモジュレーションやステレオディレイを前段に置いた構成でも、左右の広がりを保ったままアンプ+キャビ+ルームを通せます。

なお、Iridiumはアンプとキャビネットを鳴らす位置に置く機材です。出力をギターアンプの入力へ接続する使い方は想定されていません。ペダルボードからギターアンプへ送る系統がある場合は、その経路ではIridiumをバイパスしてください。

仕様

・アンプモデル:3種類(round / chime / punch)
・IRキャビネット:9種類(アンプごとに3種類)24bit / 96kHz 500ms ステレオIR
・ルーム:256msインパルス・レスポンス+アルゴリズムのハイブリッド、3サイズ選択
・入力段:高性能JFETディスクリート、最大22dBのアナログゲイン
・入力インピーダンス:1MΩ
・出力インピーダンス:100Ω
・最大入力レベル:+8dBu
・周波数特性:20Hz〜20kHz
・S/N比:110dB
・A/D&D/Aコンバーター:24bit / 96kHz
・プロセッサー:SHARC DSP+ARMコプロセッサー、32bit浮動小数点演算
・DSPパフォーマンス:1585 Mega FLOPS
・ヘッドフォン出力:1/8インチステレオ(25〜70Ω対応)
・バイパス:バッファードスイッチング
・電源:9V DC センターマイナス、500mA以上
・サイズ:奥行114mm × 幅102mm × 高さ44mm
・軽量かつ堅牢なアルマイト処理アルミシャーシ
・Designed and built in the USA

よくある質問

電源アダプターは何を使えばいいですか?

9V DC センターマイナス、500mA以上の電流容量を持つアダプターが必要です。プラグは5.5mm×2.1mmの標準サイズ。strymon純正のOjaiやZuma R300などのパワーサプライも使用できます。付属品の内容は販売形態によって異なるため、購入前に販売店でご確認ください。

PAに送るときDIは必要ですか?

Iridiumの出力は標準フォーンのアンバランス出力です。ケーブルが長くなるライブ現場では、DIボックスを挟んでバランス化してPAへ送る方法が確実です。

ギターアンプにつないで使えますか?

アンプのインプットへ接続する使い方は想定されていません。ギターアンプと組み合わせる場合は、Cabバイパスモードにしてアンプのリターンやパワーアンプ入力へ接続します。逆に、アンプのラインアウトやエフェクトセンドをIridiumの入力へ送り、IRキャビネットだけを使うことも可能です(この場合は入力をラインレベルに設定し、アンプのスピーカー出力には必ず負荷を接続してください)。

キャビネットIRは自分で入れ替えられますか?

できます。無償配布の「Strymon Impulse Manager」をインストールし、USBでIridiumとPCを接続すれば、9つのスロットのIRを自由に差し替えられます。対応フォーマットは24bit / 96kHzのWAVファイルです。

保存できる音色はいくつですか?

本体のFAVスイッチに1つ。MultiSwitch Plusを追加すると3つ増えて計4つを足元で切り替えられます。MIDI接続時は300のプリセットロケーションが使用できます。

ノブは6つ、スイッチは2つ。触ってみればすぐに音が決まる操作系でありながら、IRの差し替えやアンプ・キャビの独立バイパス、MIDIによる300プリセットまで踏み込める懐の深さがあります。アンプを持ち運ばない前提でギターの音を完成させたい人にとって、Iridiumは長く軸になり続ける一台です。

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この記事を書いた人

13歳よりエレキギターを始め、学生時代はバンド活動に明け暮れる。音響機器やPAの基礎を専門学校で学びつつ、18歳頃にアルバイトとして始めた大手楽器店にて楽器の買い取り業務を担当。約10年間にわたり音楽機材の買取査定、販売・リペアなどに携わり、数多くのエフェクターに触れる。楽器店退職後、2009年よりエフェクター専門サイト『EFFECTOR COLLECTION BOX』の運営をスタート。

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