アンプの音をペダルに落とし込む、という試みは珍しくありません。ただしFortin NATASの場合、出発点になっているのは「モダンハイゲインの代名詞」と言われながら、すでに生産を終えて中古市場でも簡単には出会えなくなった1台のヘッドアンプです。
9V駆動のペダル1台で、あのゲインとレスポンスをボードに載せる。Fortin NATASはそこに真正面から取り組んだモデルです。
NATASアンプのハイゲイン・チャンネルをペダルへ
オリジナルのNATASは、2010年にFortin Amplificationが発表したオールチューブの2チャンネル・ヘッドです。エクストリーム・メタルを想定して設計され、8弦やエクステンデッド・スケールのギターにも対応する広いレンジを持っていました。現在は生産を終了しています。
興味深いのは、当時のアンプのフロントパネルにもGIRTH、GRIND、GAIN、KILL、VOLUME、BASS、MIDDLE、HIGHが並んでいたこと。つまりペダル版NATASのコントロール構成は、アンプのハイゲイン・チャンネルをほぼそのまま引き継いだものです。カスケード接続された複数のゲインステージという回路の骨格も、アンプ由来のものになっています。
Fortinの製品ラインでは、MESHUGGAHやKaliと同じ「プリアンプ・ペダル」のカテゴリに属します。単なる歪みものというより、アンプのプリ部をボードに置くという性格の製品です。
コントロールとサウンドメイキング
音作りの主役はGRINDとGIRTH
3バンドEQとは別に用意された小径ノブが、GRINDとGIRTHです。この2つはEQのように帯域全体を上下させるのではなく、特定の周波数だけを持ち上げます。ピッキングに対する反応そのものが変わる部分で、Fortinはマニュアルの中で「音作りの鍵はGRINDとGIRTHにすべてある」と言い切っています。
裏を返せば、EQだけを触っていても本領には届かないということ。まずこの2つで芯を決めてから、BASS/MIDDLE/HIGHで整えるという順番が理にかなっています。
カットもブーストもできる3バンド・アクティブEQ
BASS、MIDDLE、HIGHはいずれもアクティブ回路です。パッシブEQのように「削る」だけでなく、足りない帯域を積極的に足せます。ペダル単体でアンプのキャラクターを大きく書き換えられるのは、この可変幅の広さによるところが大きい部分です。
加えてMID SHAPEスイッチが、EQの土台そのものにカーブをかけます。Scoop側はミッドを削ったモダンなドンシャリ、Hump側はミッドを持ち上げたクラシックな設定です。Humpは音を締めてバンドの中で前に出したいとき、Scoopは思い切りスラッシュ寄りに振りたいときという住み分けになります。
KILLフットスイッチでゲインステージをもう一段
ONフットスイッチの隣に置かれたKILLは、踏むとゲインステージが1段追加されます。ノブを回してゲイン量を増やすのではなく、回路そのものを増やす仕組みなので、単なる音量ブーストとは質が違います。リードで一段押し出したいときや、リズムをさらに重くしたいときに足元で切り替えられます。
ONフットスイッチは状態を記憶する
ONはDPDTリレーによるトゥルーバイパスのソフト・フットスイッチです。電源を切ったときの状態をそのまま覚えていて、次に電源を入れると同じ状態で立ち上がります。ボードごと電源を落とす運用でも、毎回踏み直す必要がありません。
Fortinが示す4つのセッティング例
付属マニュアルには、Fortin自身によるスタート地点が4つ載っています。コントロールの効き方をつかむ手がかりになります。
- モダンなリード:KILLをオン、ミッドを前に出す
- チャグ:KILLをオン、ミッドをスクープ
- 90年代のダート:ミッドを押し出すことで、実際のゲイン量以上に歪んで感じられる
- 80年代のトーン:ゲインは控えめ、KILLも使わない
KILLを使わない80年代設定まで含まれているところに、このペダルのレンジの広さが表れています。
電源選びだけは妥協できない
NATASを導入するうえで、事前に確認しておきたいのが電源です。電池は使えず、9V DCセンターマイナスの安定化電源(別売)専用となっています。電池駆動に対応しないのは消費電流が大きいためで、Fortinによれば電池では1時間程度しか持たない計算です。
そして最大の注意点が突入電流。回路の性質上、起動には最低600mAが必要で、立ち上がったあとは約150mAで安定します。つまり「150mA対応」のアウトプットに挿しても、そもそも起動しない可能性があるということです。パワーサプライを選ぶ際は、定格150mAではなく、1系統で600mA以上を供給できるアウトプットを確保しておくのが確実です。
製品仕様
| 製品名 | Fortin Amplification NATAS |
| タイプ | ディストーション/プリアンプ・ペダル |
| コントロール | GAIN、VOLUME、BASS、MIDDLE、HIGH、GRIND、GIRTH、MID SHAPE(Scoop/Hump) |
| フットスイッチ | ON(トゥルーバイパス)、KILL(ゲインステージ追加) |
| EQ | 3バンド・アクティブEQ |
| スイッチング | DPDTリレーによるトゥルーバイパス |
| 電源 | 9V DCセンターマイナス(安定化電源)/ACアダプター専用・電池不可 |
| 消費電流 | 約150mA(起動時に最低600mAの突入電流が必要) |
| サイズ | 122×67×39.5mm(W×D×H/ノブ・スイッチを除く) |
| 出荷重量 | 0.4kg |
| 生産国 | アメリカ |
| 保証 | 1年間の限定保証 |
よくある質問
- 電池で駆動できますか?
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電池には対応していません。バッテリークリップ自体が搭載されておらず、9V DCセンターマイナスの安定化電源(別売)が必要です。消費電流が大きく、電池では1時間程度しか持たないためです。
- EQは帯域をブーストできますか?
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できます。3バンドEQはアクティブ回路のため、カットだけでなくブーストにも対応します。
- KILLは足元で切り替えられますか?
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KILLはフットスイッチとしてONフットスイッチの隣に配置されています。踏むとゲインステージが1段追加されます。
- どこで製造されていますか?
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アメリカ製です。Fortinのペダルはすべてアメリカ国内で製造されています。
アンプのプリ部をそのままボードに移すという発想の製品であるだけに、NATASは目の前のアンプに色を足すタイプのペダルではありません。GRINDとGIRTHで芯を決め、アクティブEQで積極的に作り込む。その手順を踏んだときに、生産完了となったヘッドが持っていたゲインの深さと粒立ちが姿を現します。ハイゲイン・ディストーションを本気で1台に絞り込むなら、有力な選択肢です。
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