ディストーションと聞いて思い浮かべるのは、鋭く尖った、いかにも「エフェクターで作った歪み」らしい音かもしれません。Effects BakeryのCroissant Distortionが出すのは、それとは少し違うところにある音です。アンプのゲインを上げていったときに立ち上がってくる、太くて粘りのある歪み。そこにわずかなエッジが乗る、という質感を狙って作られています。
回路のベースになっているのはプレキシアンプの音色で、クリーンなアンプと組み合わせたときに本領を発揮するように設計されています。ミニサイズで手に取りやすい価格帯ながら、音の方向性ははっきりと定まった一台です。
Croissant Distortionの基本仕様
コントロールはVOL・TONE・GAINの3つ。歪みペダルとしては王道の構成で、ミニサイズの筐体に対してノブは大きめに作られているため、足元での操作もしやすくなっています。
| 種類 | ディストーション |
| コントロール | VOL、TONE、GAIN |
| 電源 | センターマイナス DC9Vアダプター |
| 電池駆動 | 非対応 |
| 消費電流 | 6mA |
| 入力インピーダンス | 500kΩ |
| 出力インピーダンス | 10kΩ |
| サイズ | 47 × 94 × 51mm(突起含む) |
| 重量 | 152g |
| JANコード | 4562459901346 |
消費電流6mAは歪みペダルとしてもかなり少ない部類で、パワーサプライの空きポートに余裕がない状況でも組み込みやすいところです。
「エフェクターの歪み」ではなく「アンプの歪み」を作るペダル
Croissant Distortionのサウンドを一言でまとめるなら、太く粘るオーバードライブの質感にエッジを加えたような歪み、ということになります。ディストーションペダルにありがちな、高域が刃物のように立って前に出てくるタイプの歪みとは方向性が異なります。
この違いは回路の出自に由来しています。Croissant Distortionはプレキシアンプの音色をベースにした回路として設計されており、多くの定番ディストーションとは異なり、真空管アンプに近い特性を持っています。だからこそ、すでに歪んでいるアンプに重ねるより、クリーンなアンプと組み合わせたときにいちばん素直に鳴ります。
スタジオやライブハウスの常設アンプをクリーンで使い、歪みは足元で作る。そういう組み立て方をしている場合、このペダルの性格はかなり噛み合います。逆にアンプ側ですでにクランチを作っているところへ足すと、狙いどおりの太さは出にくくなります。
GAINノブは12時を境に性格が変わる
音作りの鍵になるのがGAINの効き方です。12時付近までは、上げていくほど音色のエッジが強くなっていきます。そして12時を超えたあたりから、ローエンドの迫力が加わってくる、という二段構えになっています。
つまり「歪みの量」だけが増えていくノブではなく、回していく途中で音の重心そのものが動きます。輪郭を立てたいのか、それとも低域の押し出しが欲しいのか。目的によって12時の前後どちらに置くかが変わってくる、と考えると設定しやすくなります。
まずは全ノブ12時から
ロックサウンドを作るときの手順は、公式マニュアルにも具体的に示されています。すべてのノブを12時に合わせ、VOLで適切な音量を取る。そのうえでGAINを動かし、迫力が足りなければ上げ、音が重苦しく感じたら下げる。最後にTONEで音色を整える、という流れです。
もうひとつ触れておきたいのが、ノブをフルアップにしても音のバランスが破綻しないよう設計されている点です。歪みペダルを初めて手にすると、つい全部上げてみたくなるものですが、そこで音が壊れてしまわない。この設計上の配慮は、最初の一台としての扱いやすさに直結しています。
シングルコイルでも痩せず、手元のボリュームに反応する
ディストーションを使うときに悩みどころになりやすいのが、シングルコイル搭載のギターとの相性です。歪ませたときに音が薄く、軽くなってしまうことがあります。Croissant Distortionはシングルコイルでも奥行きと重さを作れるように調整されており、TONEコントロールの可変幅も広く取られています。
加えて、ギター側のボリューム操作に対するレスポンスも確保されています。ペダルを踏み替えずに、手元のボリュームを絞るだけで歪みの量を落とせる。アンプライクな歪みを目指したペダルらしい挙動で、曲中でバッキングとリードを切り替えるような場面では、この追従性がそのまま表現の幅になります。
電源まわりで先に知っておきたいこと
購入前にいちばん確認しておきたいのが電源です。Croissant Distortionは電池が使えません。センターマイナスのDC9Vアダプターによる駆動のみに対応しています。
- 9V電池は使用不可。アダプターまたはパワーサプライが必須です
- プラグ極性はセンターマイナス
- 安定化されたエフェクター用DC9Vアダプターを使用してください。安定化されていないアダプターではノイズが発生することがあります
- 消費電流は6mA。推奨アダプターとしてOne Control EPA-2000が挙げられています
低価格のミニペダルということで、電池を入れてすぐ試せると考えて手に取ると、いざ音を出す段になって足止めを食うことになります。パワーサプライをまだ持っていない場合は、ペダル本体とあわせて電源も用意しておくのが確実です。
なお、ノイズが気になる場合の切り分けとしては、パワーサプライで他のペダルと電源を共有している状態から本機のみに電源を供給する形に変えて、ノイズの出方が変わるかを確認する方法が案内されています。電源側から回り込んでいるのか、ケーブルや環境に由来するのかを見分ける手がかりになります。
向いている人、そうでない人
噛み合いやすいのはこんな場合
- アンプはクリーンで使い、歪みは足元で作りたい
- ブリティッシュ系アンプの、太くて粘りのあるロックサウンドが好み
- シングルコイルのギターで、痩せない歪みが欲しい
- ボードに余裕がなく、小さくて消費電流の少ない歪みを探している
- 手元のボリューム操作で歪み量をコントロールしたい
別の選択肢を考えたほうがよい場合
- 電池駆動で完結させたい。本機は電池に対応していません
- ハイゲインでミッドをスクープした、モダンなメタルトーンが目的
- すでにアンプ側で歪みを作っており、その上に重ねる用途を想定している
- ノイズゲートやEQを内蔵した多機能なペダルを求めている
もっと攻撃的な歪みが欲しいなら MECHA-CROISSANT DISTORTION
Croissant Distortionの方向性は気に入ったものの、もう一段踏み込んだゲインが欲しい。そう感じる場合に受け皿になるのが、MECHA-PAN BAKERY SeriesのMECHA-CROISSANT DISTORTIONです。これはCroissant Distortionの回路をEffects Bakery自身がモディファイしたモデルで、プレキシベースの回路を80年代の改造アンプヘッドのような方向へ振ったものにあたります。
内部には2つのスイッチが追加されています。SMOOTHスイッチはダイオードのハードクリッピングステージを加えるもので、コンプレッション感が増し、リードトーンで扱いやすい滑らかさが出ます。BODYスイッチは中域の量を切り替えるもので、オフでミッドを削ったメタリックなトーン、オンで中域の押し出しが強くなります。
その分だけ演奏のニュアンスがそのまま出るセンシティブな性格にもなっているため、扱いやすさを重視するなら通常のCroissant Distortion、音の強さと作り込みの幅を取るならMECHA-CROISSANT DISTORTION、という選び分けになります。
よくある質問
- 9V電池で動かせますか?
-
電池には対応していません。センターマイナスのDC9Vアダプターでの駆動のみとなります。
- どんなアンプと組み合わせるのが良いですか?
-
クリーンなアンプとの組み合わせで本領を発揮する設計です。アンプのゲインを上げたときに得られるようなディストーションサウンドを作るためのペダルなので、アンプ側はクリーンに保っておくほうが狙いどおりの音になります。
- GAINはどのくらいに設定するのが基本ですか?
-
まずは全ノブ12時から始めるのがおすすめです。12時付近まではエッジが強くなり、12時を超えるとローエンドの迫力が加わるという効き方なので、輪郭が欲しいか低域の押し出しが欲しいかで前後させてください。フルアップでもバランスが崩れないように設計されています。
- シングルコイルのギターでも使えますか?
-
シングルコイルでも奥行きと重さが出るように調整されています。TONEの可変幅も広いため、ギターやアンプの特性に合わせた追い込みがしやすくなっています。
- パワーサプライは何でも良いですか?
-
安定化されたエフェクター用のDC9Vアダプターを使用してください。安定化されていないものではノイズが発生することがあります。消費電流は6mAと少ないため、電流容量の面では多くのパワーサプライで問題なく供給できます。
まとめ
Croissant Distortionは、ディストーションという名前から連想される鋭い歪みではなく、真空管アンプのゲインを上げたときに現れる太く粘る歪みを、ミニサイズの筐体で作るためのペダルです。プレキシアンプの音色をベースにした回路という出自がそのまま音の性格になっており、クリーンなアンプと合わせたときにいちばん素直に鳴ります。
GAINが12時を境に性格を変えること、フルアップでもバランスが破綻しないこと、そしてギターのボリュームに素直に反応すること。この3つが揃っているおかげで、歪みペダルを初めて選ぶ場合でも迷いにくく、使い込んでいく余地も残されています。電池が使えない点だけは先に押さえたうえで、足元の電源環境を整えてから迎えたい一台です。
BRAND
Effects Bakery
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