Rainger FXのRecycle Boxは、アナログ・ディストーションとデジタル・ディレイをひとつの筐体にまとめたペダルです。名前だけを見ると環境への配慮を思わせますが、由来はもっと具体的なところにあります。Break Boxの最終生産ロット用に用意した筐体が手元に残っていて、それを使い切るかたちで企画されたのがこの一台で、その成り立ちがそのまま製品名になりました。中身はBreak Boxと同じ歪み回路に、まったく性格の異なる時間軸エフェクトを組み合わせたもので、足元の大きなラバーパッドひとつで荒れたエコーを出し入れできる構成になっています。
Break Boxから受け継いだアナログ・ディストーション
Recycle Boxのディストーション回路はBreak Boxと同一のもので、その源流をたどると2009年に登場したRainger FXのオーバードライブ、El Distortoに行き着きます。ここにColorsoundとのコラボレーションから生まれたTonebender「Freakenbender」の歪み回路の後段部分が組み合わされており、二つの回路が地続きになったところにこのペダルの歪みの性格があります。ゲイン量は相当なものですが、それでいてピッキングへの追従性が失われず、エッジの立ったアタックとファットな胴鳴りが同居するサウンドにまとまっています。
TONEはFreakenbenderのトーンスタックを引き継いだもので、ディープなローから焼け付くようなトレブルまでを一本のノブでたどれます。ただしオリジナルのTonebender系にありがちな極端なミドルのスクープは抑えられていて、バンドの中で音が痩せにくい方向に整えられています。GAINを絞ればライトなクランチ、上げていけばルーズで荒々しいオーバードライブ、さらに回し切れば一線を越えたヘヴィなディストーションへと連続的に変化していくので、歪みペダル単体としても守備範囲は広く取られています。
歪みの後段に置かれたトリプルタップ・ディレイ
ディレイ回路はディストーションの後段に置かれています。つまり、太くクリップしたギター・サウンドがそのままクリーンなデジタル・エコーとして繰り返されるわけで、歪みの前にディレイを置いた場合の混濁とはまったく違う聴こえ方になります。しかもこのディレイは3つのタップをそれぞれ個別にタイミング設定した「トリプルタップ・ディレイ」で、等間隔に減衰していく一般的なディレイとは異なり、複雑に絡み合ったリピートが返ってきます。TIMEノブで長さを変えると、そのタップ同士の関係もまとめて動くため、リズミカルなパターンからカオスな反復まで表情が大きく変わります。最大リピートタイムは770msです。
Break Boxの筐体をそのまま使うという前提があったため、コントロールの数は元のペダルと同じに制約されました。通常のディレイが持つ「Amount」「Time」「Feedback」の3つのうち、優先されたのはTimeとFeedbackで、Amountノブは搭載されていません。エコー量は「LOTS of echo」に固定されています。控えめなショート・ディレイを薄く足すといった使い方はできない代わりに、パッドを踏んだ瞬間の変化が誰の耳にもはっきり届く設計になっています。
FEEDBACKは筐体上でもっとも大きなノブが割り当てられています。絞った位置では3回のマルチタップ・リピートにとどまりますが、上げていくと反復が減衰せずに積み上がり、最終的には暴走するようなワイルドなフィードバックに達します。なお、ディレイ側のプログラムにはノイズゲートが組み込まれています。ハイゲインのアナログ回路とクリーンなデジタル・エコーが隣り合う構成では意図しない発振が起きやすく、それを目立たないかたちで抑えるための仕組みです。
ラバーパッドで切り替える2つのモード
このペダルの操作の中心は、筐体上面を占める大きなラバーパッドです。ノンラッチ式(モーメンタリー)のスイッチになっていて、標準の設定では踏んでいる間だけディストーション+ディレイに切り替わり、足を離した瞬間にドライなディストーションへ戻ります。フレーズの終わりで一瞬だけ踏み込めば、その音だけが激しいエコーに飲み込まれて次のフレーズはすっきり立ち上がる、という使い分けが足だけで完結します。
入出力端子側のパネルにあるPAD FLIPを押すと、この動作が反転します。反転後はディレイが掛かった状態が標準になり、パッドを踏んでいる間だけエコーが切れます。ディレイを掛けっぱなしにして曲を進めたい場合はこちらが扱いやすく、逆にパッドで一瞬だけ素の歪みに戻して輪郭を取り戻す、という組み立ても可能です。FEEDBACKを高めに設定しておけば、パッドを踏むたびに暴走気味の反復が立ち上がり、離せば断ち切られるという、かなり乱暴な演出も足元だけで作れます。オン/オフを担当するのは別途用意されたトゥルーバイパスのフットスイッチで、ペダル全体の状態はホワイトLEDが示します。
「Recycle Box」という名前の由来
Rainger FXのペダルは、モデルごとに左右非対称の独自筐体をあつらえることで知られています。Break Boxもそのひとつで、ピンクと黒の奇妙なフォルムが強い印象を残しました。この筐体は一定数まとめて発注する必要があるため、最終生産ロットの分が在庫として残っていました。それをそのまま活かし、内部の回路構成だけを組み替えて新しいペダルに仕立て直したのがRecycle Boxです。製品名は、この筐体の再利用をそのまま指しています。
そのため、Recycle Boxは同じ仕様が長く供給され続けるタイプの製品ではなく、手持ちの筐体の数に規定された特別生産という性格を持ちます。見た目はBreak Boxとほぼ共通で、非対称のピンク筐体に5つのノブと大きなラバーパッドが並びます。制約から出発したはずの企画が、結果としてBreak Boxとは別の遊び方を持つペダルに着地しているところが、このブランドらしい部分と言えます。
Break Boxとの違い
歪みの土台が共通である一方、その後段に何を置いたかで両者は別のペダルになっています。Break Boxが持っていたコーラスのフェードイン(Active Sustain)とヴァイナル・スクラッチは、Recycle Boxには搭載されていません。
| Break Box | Recycle Box | |
|---|---|---|
| 歪み回路 | El Distorto+Freakenbender後段 | 同一 |
| 後段エフェクト | Active Sustain(コーラス・フェードイン)/ヴァイナル・スクラッチ | トリプルタップ・デジタル・ディレイ |
| ラバーパッドの役割 | スクラッチ音のトリガー | ディレイ・モードの切り替え |
| 消費電流 | 60mA | 65mA |
| 筐体 | 非対称ピンク筐体 | 同一筐体(最終生産ロット分を使用) |
コントロールと仕様
コントロール
- VOL:ペダル全体の出力レベルを調整します。かなりラウドな設定まで対応します。
- TONE:ディープなローから焼け付くようなトレブルまでを設定します。Tonebender系のトーンスタックを基にしつつ、ミドルのスクープ感を軽減しています。
- GAIN:ディストーションのゲイン量を調整します。ライトなクランチからルーズで荒々しいオーバードライブ、さらにヘヴィなディストーションまで。
- FEEDBACK:ディレイ・モード時のリピート量を調整する大型ノブです。3回のマルチタップ・リピートから暴走するようなワイルドなフィードバックまで設定できます。
- TIME:ディレイの長さを変更します。最大リピートタイムは770msです。
- PAD:大きなラバー製のノンラッチ式(モーメンタリー)スイッチです。「ディストーション+ドライ」と「ディストーション+ディレイ」を切り替えます。
- PAD FLIP:上部パネルのプッシュボタンです。PADの動作を反転させ、ディレイを掛けた状態を標準にできます。
- フットスイッチ:ペダルのオン/オフを切り替えます。トゥルーバイパスです。
- ホワイトLED:ペダル全体のステータスを表示します。
仕様
| 電源 | 9Vセンターマイナスの電源アダプター |
| 消費電流 | 約65mA |
| バイパス | トゥルーバイパス |
| 最大ディレイタイム | 770ms |
| インジケーター | ホワイトLED |
| 筐体 | Rainger FXオリジナルの左右非対称ピンク筐体 |
| 製品寸法 | 約W80×D127×H50mm(突起含む) |
よくある質問
- ディレイのエコー量は調整できますか
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エコー量を調整するAmountノブは搭載されておらず、最大値に固定されています。リピートの伸びはFEEDBACK、長さはTIMEで調整します。
- ディレイだけを単体で使えますか
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ディレイはディストーションの後段に固定されており、ペダルがオンの間は常にディストーションが掛かった状態です。PADで切り替わるのは、そのディストーションにディレイを重ねるかどうかという点になります。
- Break Boxとサウンドは同じですか
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ディストーション回路は同一です。ただしBreak Boxのコーラス・フェードイン(Active Sustain)とヴァイナル・スクラッチは搭載されておらず、代わりにトリプルタップ・ディレイが入っています。歪みの土台は共通で、後段のエフェクトが入れ替わっていると考えると分かりやすい構成です。
- 電源は何を用意すればよいですか
-
スタンダードな9Vセンターマイナスの電源アダプターで動作します。消費電流は約65mAです。
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