ビッグマフの分厚い低音は手放しがたい。けれどバンドで音を出した瞬間、自分のギターだけが霧の向こうに沈んでいく——マフ系ファズを使ったことがある人なら、一度は経験する現象だと思います。原因はミッドレンジ。オリジナルのマフはトーンスタックの構造上、中域が大きく削られるため、単体では最高に気持ちよくても、アンサンブルの中では居場所を失いやすいのです。
FUZZROCIOUS PEDALSのGrey Stache Diode Modは、そこに独立したミッドコントロールを据えることで解決を図ったファズです。ギターにもベースにも使える設計で、削るか、平坦にするか、押し出すか——中域の扱いを自分の手に取り戻せます。
2つのマフ回路を土台にした設計
Grey Stacheのベースになっているのは、マフ系ファズのうち「GGG Tuned」と呼ばれるバリエーションと、ロシア製ビッグマフの初期モデル「Civil War」の2つです。GGGはEHX Big Muff Piのレプリカキットを頒布しているGeneral Guitar Gadgetsのことで、GGG Tunedはそのキットで組めるバージョンのひとつ。低域の量感で知られるこの2系統を掛け合わせた結果、ギターとベースの両方に対応する懐の深いファズが生まれました。
製作するのは、アメリカ・ニュージャージー州でRyan Ratajski氏とShannon Ratajski氏の夫妻が営むFUZZROCIOUS PEDALS。回路の設計と組み立て、塗装まで手作業で行う小規模なビルダーです。
音作りの中心はミッドコントロール
Grey Stacheのトーンスタックは、ミッドレンジを3つの方向へ振り分けられます。
- スクープ:中域を削り、重く深いサウンドへ。いわゆるマフらしい音の方向
- フラット:中域を平坦にした、癖の少ないバランス型のサウンド
- ブースト:中域を持ち上げたモダンな質感。ミックスの中で前に出て、スピーカーをしっかり駆動する
宅録でギターを何本も重ねるならスクープ側、バンドで一本勝負するならブースト側、というように、同じペダルのまま使う場面に合わせて性格を切り替えられます。MidsノブはToneノブと連動して効くため、この2つを行き来しながら詰めていくのがGrey Stacheの音作りの勘所です。
4つのコントロール
- V(Volume):出力レベルを調整
- T(Tone):時計回りでベース寄りからトレブル寄りへ移行
- M(Mids):時計回りで、中域の完全なカットから強調まで可変。Toneと連動して働く
- S(Sustain):時計回りでサステインとファズ量が増加
サステインを絞ればオーバードライブとしても使える
Grey Stacheが単なるファズにとどまらないのは、Sustainを絞り込んだときの挙動にあります。歪み量を抑えていくと、ファズというよりオーバードライブに近い領域まで下がってくる。バッキングは軽めの歪みで、ソロでファズを踏み込む、といった使い分けをする代わりに、この一台で歪みの深さそのものを設計し直せるということです。ボードの枠を一つ節約したい人にとっては、地味に効いてくる特性だと思います。
Diode Modが変えるもの
本機の名前にある「Diode Mod」は、歪みを作り出すクリッピングダイオードを切り替えるための追加仕様です。トグルスイッチは3ポジションで、中央がダイオードなし、上下にそれぞれ異なるダイオードのセットが割り当てられます。
使用されるダイオードは、1n914シリコン、LED、1n4001シリコン、ゲルマニウムの中から2組。ダイオードの種類が変われば波形の潰れ方が変わり、歪みの粒立ちや圧縮感のキャラクターも変わります。中央のダイオードなしのポジションは、ダイオードによる波形の抑え込みがかからない状態です。
ミッドで帯域を、Sustainで歪みの量を、そしてこのスイッチで歪みの質を決める。3つの軸が揃っているので、マフ系ファズとしてはかなり踏み込んだ音作りができます。
Grey Stacheには複数のモッド仕様がある
FUZZROCIOUS PEDALSはGrey Stache向けに複数のモッドを用意しており、Diode Modはそのひとつです。ほかにも、信号をフィードバックさせて発振ノイズを作るOscillation Mod、トーンとミッドのポットを迂回してより開いた音にするTone Bypass Mod、音を瞬間的にミュートするKillswitch Mod、2つのサステイン設定をフットスイッチで切り替える2nd Sustain Modがあります。
つまり、同じGrey Stacheという名前でも仕様は一台ごとに異なります。中古で探す場合は、どのモッドが載った個体なのかを必ず確認してください。
電源は9VDCセンターマイナスのみ
FUZZROCIOUS PEDALSの製品は電池に対応していません。本体の破損リスクと、電池の使用・廃棄にまつわる環境面の配慮が理由です。電源はセンターマイナス、2.1mmプラグの9VDCアダプターを使用します。
センターマイナス9VDC以外の電源を使用すると本体が破損し、保証の対象外となります。パワーサプライの出力仕様を必ず確認してから接続してください。
外観は一台ごとに違う
ハンドペイント仕様の個体は、Shannon Ratajski氏がエナメルまたはアクリル塗料で一台ずつ塗装しています。中にはRatajski家の子どもたちが手がけたものもあり、文字通り同じ絵柄は二つとありません。ディーラー流通向けの個体は、地元の業者によるパウダーコートとスクリーンプリントで仕上げられます。
そうした事情から、トグルスイッチやフットスイッチ、ノブ、筐体カラーは入荷時期によって異なり、外観を指定して選ぶことはできません。工業製品としての均一さを求めるなら気になる部分ですが、量産ラインではない作り方の結果でもあります。
スペック
| タイプ | ファズ(マフ系) |
| 回路のベース | GGG Tuned版およびCivil War版のマフ回路 |
| コントロール | Volume / Tone / Mids / Sustain |
| スイッチ | 3ポジション ダイオードクリッピング切替 |
| ダイオード | 1n914シリコン / LED / 1n4001シリコン / ゲルマニウムから2組+ダイオードなし |
| 対応楽器 | ギター・ベース |
| 電源 | 9VDC センターマイナス(2.1mmプラグ)/電池非対応 |
| 製造 | アメリカ・ニュージャージー州にてハンドメイド |
よくある質問
- ベースに使っても大丈夫ですか?
-
ギターとベースの両方に対応する設計です。ミッドコントロールがあるため、低域を残したまま中域を持ち上げて輪郭を出す、といった調整もできます。
- 電池は使えますか?
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使えません。センターマイナス、2.1mmプラグの9VDCアダプターで駆動してください。
- ダイオードスイッチの中央ポジションは何ですか?
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ダイオードなしの設定です。上下のポジションには、それぞれ異なるダイオードのセットが割り当てられています。
- 外観のカラーやノブは選べますか?
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選べません。一台ずつ手作業で組み立て・塗装されているため、スイッチやノブ、筐体カラーは入荷時期によって変わります。
- ファズ以外の使い方はできますか?
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Sustainを絞り込むと、オーバードライブに近い歪みまで下げられます。軽めの歪みから重いファズまで一台でカバーできます。
マフの低音は好きだが埋もれるのは困る。この矛盾を、ミッドの独立コントロールと3種類のクリッピングという二段構えで解いたのがGrey Stache Diode Modです。ギターでもベースでも、バンドの中で自分の音の居場所を確保したい人に向いた一台といえます。
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