ペダルボードの空きスペースは限られているのに、アンプシミュレーターもエフェクトも一台でまかないたい。そう考えたときに引っかかるのが、「小さいマルチは音や機能が物足りないのでは」という不安ではないでしょうか。
HOTONEのAmpero Mini(型番MP-50)は、コンパクトエフェクター2〜3台分ほどのアルミ筐体に、199種類のエフェクトと4インチのタッチスクリーンを収めたアンプモデラー兼マルチエフェクターです。同時に使えるエフェクトは最大9モジュール、パッチ数は198。IRローダーやUSBオーディオインターフェース機能まで備え、練習から宅録、ライブまで一台で通せる設計になっています。
HOTONE Ampero Miniの基本スペック
Ampero Miniは、HOTONEのAmperoシリーズの中でもっともコンパクトなモデルです。入出力を必要最小限に絞り込むことで、この筐体サイズを実現しています。まずは主要なスペックを一覧で確認しておきましょう。
| 型番 | MP-50 |
| エフェクト数 | 199 |
| 同時使用モジュール数 | 最大9 |
| パッチ数 | 198(ユーザー99/ファクトリー99) |
| ディスプレイ | 4インチ 800×480 カラータッチスクリーン |
| 信号処理 | 24bit/44.1kHz、DNR 112dB |
| ルーパー | モノラル最大100秒/ステレオ最大50秒 |
| ドラムマシン | 100リズムパターン |
| 入力 | 1/4インチTS インストゥルメント、1/8インチ ステレオAux In、1/4インチTRS エクスプレッションペダル(10k〜25kΩ) |
| 出力 | 1/4インチTRS バランスステレオ出力、1/8インチ ステレオヘッドホン |
| USB | USB 2.0 Type-C(USB Audio 2.0) |
| IRプロセッサー | 24bit/44.1kHz モノWAV、1024ポイント |
| 電源 | 9V DC センターマイナス/最大500mA |
| サイズ・重量 | 134(W)×120(D)×49(H)mm/529g |

CDCM HD+F.I.R.E.モデリングという設計思想
Ampero Miniのサウンドの土台になっているのが、HOTONEが独自に開発したCDCM HDとF.I.R.E.(Field Impulse Response Enhancement)というモデリング技術です。
HOTONEはこの技術を、ホワイトボックスモデリングともブラックボックスモデリングとも異なる第三のアプローチと位置づけています。同社が開発目標に掲げているのは、オリジナル機材のパーツが持つ音色に加えて、入力信号の変化に追従するサウンドの動きまで再現することです。この技術にたどり着くまでに、十年以上のリサーチとテストを重ねたと公表しています。
処理を支えるハードウェア面では、オーディオエンジン専用にNXP® RTクロスオーバープロセッサーを搭載し、別途NXP® RTコプロセッサーがタッチスクリーンやUSB、I/Oなどの制御を受け持ちます。メインプロセッサーを音声処理だけに専念させる構成で、この筐体サイズでAmperoシリーズのサウンドを成立させる土台になっています。
199エフェクトと最大9モジュールで組み立てる音作り
Ampero Miniのシグナルチェーンは、FX1・FX2・AMP・NR・CAB・EQ・FX3・DLY・RVBという9つのモジュールと、テンポ/ボリュームのブロックで構成されています。パッチは3つで1バンクという単位にまとめられ、ユーザーバンク33個とファクトリーバンク33個の計66バンクが用意されています。
アンプ・キャビネットとマイクシミュレーション
収録されているのは、Amperoシリーズのライブラリから選ばれた100種類以上のアンプ、キャビネット、そして著名なペダルをモデリングしたアルゴリズムです。加えて、ドライブ、ダイナミクス、フィルター、モジュレーション、ディレイ、リバーブといったHOTONEオリジナルのエフェクトも収められています。
キャビネットまわりでは、マイクのポジションとマイクタイプのシミュレーションが用意されている点が実用的です。同じキャビネットモデルでも、マイクを立てる位置や種類を変えることで音の芯や空気感が変わるため、ライン録りやヘッドホンでの音作りの幅がぐっと広がります。

サードパーティIRに対応したIRローダー
内蔵のキャビネットモデルだけでなく、市販のIRデータや自作のIRを読み込んで使うこともできます。対応フォーマットは24bit/44.1kHzのモノラルWAVファイルで、長さは1024ポイントです。
手持ちのIRライブラリに2048ポイント以上のデータが含まれている場合は、そのままでは読み込めません。IR配布元が複数の長さを用意しているケースも多いので、購入前にお使いのIRのフォーマットを確認しておくと安心です。
アコースティックシミュレーションと専用設計のインプット
Ampero Miniのインプットジャックは、エレクトリックとアコースティックの両方に対応する設計になっています。あわせてアコースティックシミュレーションのアルゴリズムが搭載されており、エレクトリックギターからスチール弦やナイロン弦のニュアンスを想定したサウンドを引き出すプリセットが用意されています。
アコースティックギターを持ち込めない現場や、曲中で一瞬だけアコギの質感が欲しい場面で活きる機能です。
タッチスクリーン操作とエディットソフト
本体前面の大部分を占めるのが、4インチ800×480のカラータッチスクリーンです。モジュールをタップして選び、パラメーターをスライド操作で動かすという流れで、スマートフォンに近い感覚で扱えます。画面上には「+/−」ボタンも用意されているため、スライドでは追い込みにくい細かい数値もタップで詰められます。
表示モードはパッチ番号を大きく見せるモードと、パッチ名を大きく見せるモードの2種類から選べます。テーマカラーやUIの言語も変更できるので、暗いステージでの視認性に合わせた調整も可能です。
本体だけで完結する操作系ではありますが、パソコンで腰を据えて音作りをしたい場合は、Windows/Mac対応の無償エディターソフト「Ampero Editor」が使えます。USB-Cで接続すれば、エフェクトやIRの読み込み・編集・管理、ファームウェアのアップデートまで一括で行えます。
ファームウェアのアップデートで追加された機能
Ampero Miniは発売後も継続してファームウェアが更新されており、現行のV1.2(Ampero Editor V1.4.3対応)では次のような追加・改善が行われています。
- 編集画面でモジュールをドラッグして並び順を変更できる機能
- ボリュームペダルの位置をPre/Postで切り替える機能(TEMPO/VOLUMEモジュール内)
- メイン画面での外部フットスイッチ状態表示
- パラメーターバーの左右をタップして値を増減・切り替えするタッチ操作
- ディレイモジュールに「2290 Mod」を追加
- リバーブモジュールに「Cloud」を追加
それ以前のV1.1では、Timmy®やBluesbreaker®、Whammy®、Fender® Tweed Princeton、Blackface Princeton®などをベースにしたモデルが追加されています。中古で入手した場合は、まずファームウェアのバージョンを確認しておくとよいでしょう。

練習と宅録での使い勝手
ドラムマシンとルーパー
100種類のリズムパターンを持つドラムマシンと、ルーパーが本体に内蔵されています。ルーパーの録音時間はモノラルで最大100秒、ステレオでは最大50秒です。1/2スピード再生やリバース再生といった機能も備えており、フレーズの確認から簡単な多重録音まで対応できます。
リズムに合わせて弾く練習も、コードを流しながらソロを重ねる練習も、これ一台とヘッドホンがあれば成立します。
USBオーディオインターフェースとして使う
USB-CポートはUSB Audio 2.0に対応しており、Ampero Mini単体でオーディオインターフェースとして機能します。WindowsとmacOSの両方に対応し、スマートフォンを使ったモバイル録音も可能です。
Windows環境で使う場合はHOTONE純正のASIOドライバーの導入が必要になりますが、macOSでは設定なしで認識されます。オーディオインターフェースを別途用意しなくてよいのは、機材を増やしたくない方には大きな利点です。
Aux Inとヘッドホン出力
1/8インチのAux Inジャックが用意されているので、スマートフォンや音楽プレーヤーを接続して音源に合わせて弾くことができます。このAux In信号はAmpero Mini内部のエフェクトやUSBオーディオの影響を受けない仕様なので、原曲の音はそのままの状態でモニターできます。

購入前に確認しておきたい4つのポイント
コンパクトさと引き換えに、割り切られている部分もあります。使い方によっては影響が出るところなので、あらかじめ押さえておきましょう。
1. 電源は最大500mAが必要
電源仕様は9V DCセンターマイナス、必要電流量は最大500mAです。一般的なパワーサプライは1系統あたり100mA〜300mA程度の出力であることも多いため、既存のボードに組み込む場合は500mAを供給できる端子があるかどうかを先に確認してください。容量が足りないと、ノイズや動作の不安定さにつながります。
2. ステレオ出力はTRS1系統
出力は1/4インチTRSのバランスステレオ出力が1系統という構成です。ステレオで運用する場合は、Yケーブルを使ってL/Rのチャンネルを分ける必要があります(Tipが左チャンネル、Ringが右チャンネル)。左右別々のアウトプットジャックを想定していると、現場でケーブルが足りない事態になりかねません。
3. MIDI端子とセンド/リターンは非搭載
入出力を絞り込んだモデルのため、MIDI端子とエフェクトループ(センド/リターン)は搭載されていません。外部機器とのMIDI同期や、お気に入りのアナログペダルをループ内に組み込むといった運用を前提にしている場合は、上位機種を検討することになります。
一方で、外部コントローラージャック(1/4インチTRS)は備わっているため、外部フットスイッチやエクスプレッションペダルを追加してパッチ切り替えやワウ、ボリュームをコントロールすることは可能です。
4. 小さいが軽量ではない
サイズは134×120×49mm、重量は529gです。耐久性を重視したアルミケースを採用しているぶん、見た目の小ささから想像するよりはずしりときます。とはいえ500g台であれば、ギグバッグのポケットに入れて持ち歩ける範囲でしょう。
Ampero Miniが向いている人
ここまでの内容をふまえると、Ampero Miniは次のような使い方をする方と相性がよさそうです。
- すでに組んだボードに、アンプシミュレーターを1台だけ足したい方。コンパクト2〜3台分のスペースがあれば収まります
- スタジオやリハーサルへの持ち込み機材を減らしたい方。ドラムマシンとルーパーがあるため、これ一台で個人練習も完結します
- 宅録の入り口を一台でまとめたい方。USBオーディオインターフェース機能があるので、別途機材を買い足さずにDAWへ録音できます
- タッチスクリーンで直感的に音作りをしたい方。階層の深いメニューを覚える必要がありません
反対に、MIDIによる外部機器の制御や、アナログペダルを組み込んだ複雑なルーティングを前提にしている場合は、Ampero IIシリーズなど入出力が充実したモデルのほうが素直に運用できます。
価格と入手状況
Ampero Miniはオープンプライスで、国内の実売価格は2万円台後半から3万円前後で推移しています。取り扱い店舗やタイミングによって価格は変動するため、購入時は複数の販売店を比較してみてください。
カラーバリエーションについては、国内で通常流通しているのはバニラカラーです。MatchaやMarigold、Orange、Mustardといった限定カラーも登場しましたが、数量限定での展開だったため、現在は在庫を見つけにくい状況です。
なお、国内の輸入代理店業務は2025年12月26日でオールアクセスインターナショナル株式会社が終了し、2026年1月初旬より株式会社Hotone Japanが引き継いでいます。修理の依頼や製品に関する問い合わせは、移管後の窓口が対応窓口となります。
よくある質問
- 電源はどのようなものを用意すればよいですか?
-
9V DCセンターマイナス、必要電流量は最大500mAです。パワーサプライから供給する場合は、500mAを出力できる端子があるかを事前に確認してください。
- ステレオで出力するにはどうすればよいですか?
-
出力は1/4インチTRSのステレオ出力が1系統です。TRS端子をL/Rに分岐するYケーブルを使用します。Tipが左チャンネル、Ringが右チャンネルに対応しています。
- MIDI端子やエフェクトループはありますか?
-
どちらも搭載されていません。ただし外部コントローラージャックを備えているため、外部フットスイッチやエクスプレッションペダルを接続してコントロールすることは可能です。
- 手持ちのIRデータは読み込めますか?
-
サードパーティ製IRに対応しています。対応フォーマットは24bit/44.1kHzのモノラルWAVファイルで、長さは1024ポイントです。お使いのIRがこの仕様に合うかを確認してください。
- アコースティックギターやベースでも使えますか?
-
インプットジャックはエレクトリックとアコースティックの両方に対応する設計です。ベースについてHOTONEは公式に対応を明記しておらず、搭載されているアンプ/キャビネットモデルの構成もギター向けが中心です。ベースで使う前提であれば、収録モデルの一覧を確認してください。
- 修理や問い合わせはどこに連絡すればよいですか?
-
国内の輸入代理店業務は2026年1月初旬より株式会社Hotone Japanが引き継いでいます。修理依頼や製品に関する問い合わせは同社の窓口が対応しています。
まとめ
HOTONE Ampero Miniは、134×120mmという設置面積に199エフェクト、最大9モジュール、IRローダー、ドラムマシン、ルーパー、USBオーディオインターフェース機能までを収めたモデルです。MIDIやエフェクトループは省かれていますが、そのぶん価格と設置スペースの両方で導入しやすくなっています。
ボードの空きスペースは限られているけれど、音作りの選択肢は増やしたい。そうした状況にある方にとって、現実的な一台として検討する価値があるモデルといえるでしょう。

