アンプにリバーブやトレモロが備わっていない。あるいは備わってはいても、スプリングリバーブ特有の弾けるような響きまでは出せない。そうした環境で有力な候補になるのが、Crazy Tube CircuitsのWhite Whale V2です。デジタル処理でスプリングの質感を似せるのではなく、本物のスプリングタンクを筐体の中に収めたオールアナログのリバーブ&トレモロペダルです。
White Whale V2の概要
White Whale V2は、ギリシャのビルダーであるCrazy Tube Circuitsが手がけるリバーブ&トレモロペダルです。最大の特徴は、筐体の内部に3バネのスプリングリバーブ・タンクを実際に搭載していることにあります。金属のバネが物理的に振動して生まれた残響が、そのまま音として出力されます。
V2で手が加えられたのは、そのタンクを鳴らす側の回路です。タンク本体は初代と共通ですが、バネを駆動するパワーアンプ部が刷新され、ヘッドルームと周波数レンジが広がりました。同じバネでも、余裕のある回路で駆動すれば残響の伸び方や密度は変わってきます。
60年代のアメリカ製チューブアンプや外付けリバーブユニットでは、真空管のパワーアンプが出力トランスを介してバネを駆動していました。White Whale V2は、その真空管と出力トランスが深く飽和したときの質感までアナログ回路で作り込んでいます。dwellを上げていくと現れる、わずかに歪んだ残響がそれにあたります。
リバーブ・セクション
リバーブサイズは3段階から選べる
reverb sizeトグルスイッチでは、残響のサイズと減衰の長さを3段階から選択できます。
- ショート:2バネ・タンク相当の設定です。穏やかで原音の輪郭を邪魔せず、常時かけておきやすい残響になります。
- ミディアム:ブラックフェイス期のアンプに多く見られる2バネ・タンク相当の設定です。反応が生き生きとしていて、ピッキングの強弱がそのまま残響の量に表れます。
- ロング:3バネ・タンク相当の設定です。密度が高く、サーフミュージックで耳にするような深い残響が得られます。
ここで切り替わるのはタンクそのものではありません。3つの設定はいずれも同じスプリングタンクを使用しており、リバーブドライバーの手前に置かれたアナログのトーンシェイピング・フィルターによって、それぞれのキャラクターを作り分けています。ヴィンテージ機ごとに異なっていた残響の個性を、1台の中で行き来できる仕組みです。
dwellが残響の性格を決める
dwellは、スプリングタンクを駆動するパワーアンプにどれだけの信号を送り込むかを決めるノブです。絞れば芯の残った落ち着いた響きになり、上げていくほど水しぶきが飛ぶようなスプラッシーな響きへ変わります。ドリップ感だけでなく音色や減衰の長さも同時に動くため、リバーブの性格そのものを決める役割を担っています。
さらに上げるとクリップして歪みを帯びた残響になりますが、これは不具合ではありません。ヴィンテージ機で実際に起きていた飽和を、そのまま持ち込んだ挙動です。
toneとmix、そして最大20dBのvolume
toneは、リバーブタンク出力のリカバリーステージより後段に配置されており、ウェット信号だけに作用します。原音の輪郭を保ったまま、残響だけを明るくすることも、丸く落ち着かせることもできます。原音まで一緒に曇ってしまう心配がないのは、この配置ならではです。
mixで原音に重ねる量を決め、volumeでリバーブセクション全体の音量を整えます。mixを深くすると音がバンドの中で埋もれやすくなりますが、volumeには最大20dBのブースト幅が用意されているため、たっぷりかけた状態でも前に出せます。
トレモロ・セクション
3つの回路タイプ
- TUBE:真空管のバイアスを揺らすタイプです。角の取れた、粘りのある揺れ方になります。
- OPTO:ブラックフェイス期のオプティカル・トレモロです。輪郭のはっきりした、規則正しいパルス感が持ち味です。
- HARM:ブラウンフェイス期のハーモニック・トレモロで、V2から新たに加わりました。
TUBEとOPTOが音量を上下させる振幅変調であるのに対し、HARMは高域と低域のあいだを行き来する周波数ベースの変調です。音量が波打つのではなく音色そのものがうねるため、深くかけても音が痩せません。
HARMモードのHARDとSOFT
HARMを選んだときは、うねる周波数のレンジとスイープ幅をHARDとSOFTから切り替えられます。HARDは高域から低域まで大きく振れ、うねりの輪郭がはっきりします。SOFTはスイープが緩やかで、脈打ち方も穏やかです。どちらも、オリジナルのブラウンフェイス・アンプに存在した2種類の回路バリエーションにもとづいています。
speed・depth・volume
speedの可変範囲は、ヴィンテージアンプのトレモロより上下に広く取られています。ゆっくり漂うような揺れから、アンプでは到達できない速い揺れまでカバーします。depthは揺れの深さを決めるノブで、深くかけるほど体感音量は下がりますが、トレモロセクション専用のvolumeで補正できます。
2つのセクションは完全に独立している
PREとPOSTの使い分け
V2では2つのエフェクトが完全に独立し、それぞれのフットスイッチで個別にオン・オフできます。切り替えには各セクションに高品質なリレーを用いたトゥルーバイパスを採用しており、踏んだときのクリック音は抑えられています。
加えて、tremolo fx orderトグルスイッチでトレモロをリバーブの前段(PRE)に置くか、後段(POST)に置くかを選べます。Crazy Tube Circuitsが推奨しているのは、オプティカルとチューブバイアスなら後段、ハーモニックなら前段という組み合わせです。揺らした音に残響を足すのか、残響ごと揺らすのかで、同じ2つのエフェクトでも聴こえ方は大きく変わります。
接続順を切り替えたときに軽くポップ音が出るのは正常な動作です。演奏中ではなく曲間などで切り替えるとよいでしょう。
電源投入時の状態を記憶できる
電源を入れると2つのLEDが点滅し、初期設定ではバイパス状態で立ち上がります。フットスイッチを押しながら電源を入れれば、次回以降はエフェクトがオンの状態で起動するように変更でき、同じ操作で元の設定に戻せます。リバーブを常時かけておきたい場合は、電源を入れるたびに踏み直す手間がなくなります。
リモート端子とエクスプレッション対応
REMOTE端子にTRSケーブルで外部スイッチャーを接続すると、リバーブとトレモロのオン・オフを離れた位置から操作できます。対応するのはモーメンタリー動作のみです。同じアートワークをまとった専用のリモート・フットスイッチも別売で用意されています。
これはスプリングリバーブを内蔵する機種ならではの利点でもあります。本体を直接踏まずに済むうえ、振動の少ない場所へ離して設置できるため、演奏中にバネが鳴ってしまうリスクを減らせます。
エクスプレッションペダルはリバーブのmixに対応します。トレモロのspeedについては、バックプレートを開けて基板上のXP-TAPスライドスイッチを切り替え、エクスプレッションペダル(XP)とタップテンポ用フットスイッチ(TAP)のどちらを使うかを選択します。エクスプレッションペダルは100kΩまでのTRSタイプ、タップにはモノラル(TS)ケーブルを使用します。いずれの場合も、本体側のノブ位置が可変範囲に影響します。
主な仕様
| タイプ | オールアナログ・スプリングリバーブ&トレモロ |
| リバーブ部 | 3バネ・スプリングリバーブタンク内蔵 |
| リバーブ・コントロール | dwell/tone/mix/volume(最大20dBブースト)/reverb size(3段階) |
| トレモロ・コントロール | speed/depth/volume/mode(TUBE・OPTO・HARM)/harmonic HARD-SOFT |
| 接続順 | トレモロをリバーブの前段(PRE)/後段(POST)で切替 |
| バイパス | 各セクション独立トゥルーバイパス(高品質リレー使用/ソフトクリック) |
| 外部端子 | REMOTE(TRS)、リバーブmix用エクスプレッション、トレモロspeed用エクスプレッション/タップ(内部スイッチで切替) |
| 電源 | 9V DC センターマイナス(ACアダプター別売/アイソレート出力推奨) |
| 消費電流 | アイドル時 最大145mA/ライン入力レベル時 最大180mA |
| サイズ | 約171 × 125 × 73 mm(突起物含む) |
| 保証 | 内部パーツについて製造日から5年 |
導入前に押さえておきたいこと
- 本物のスプリングタンクを搭載しているため、強い衝撃や振動が加わるとバネが鳴ります。ペダルボード上の設置場所を選び、必要に応じてリモートスイッチの併用を検討してください。
- タンクは入出力トランスデューサーを備えています。電源トランスやパワーサプライなど、強い磁場を発生するものからはできるだけ離して設置してください。
- 消費電流が大きめなので、アイソレート出力を備えたパワーサプライを用意すると安定します。
- 電源は9V DC センターマイナス専用です。高い電圧や逆極性のアダプターは故障の原因となり、保証の対象外になります。
- バックプレートを開ける際は側面の6本のネジを使用し、底面中央付近にある2本の小ネジは外さないでください。タンクと基板をつなぐ配線を傷めないよう注意が必要です。
よくある質問
- リバーブは本物のスプリングですか?
-
はい。筐体内部に3バネのスプリングリバーブタンクを搭載しています。デジタル処理によるシミュレーションではなく、実際にバネが振動して残響が生まれます。
- リバーブサイズを切り替えるとタンクそのものが変わるのですか?
-
3つの設定はいずれも同じタンクを使用します。違いを生んでいるのは、リバーブドライバーの手前に配置されたアナログのトーンシェイピング・フィルターです。
- 初代モデルからの主な変更点は何ですか?
-
バネを駆動するパワーアンプ部の刷新、dwellの改良、リバーブサイズの3段階切替、ハーモニック・トレモロ(HARM)の追加、2セクションの完全独立化と接続順の選択、リモート端子の搭載です。
- エクスプレッションペダルやタップテンポは使えますか?
-
リバーブのmixはエクスプレッションペダルで操作できます。トレモロのspeedは、内部のXP-TAPスライドスイッチを切り替えることで、エクスプレッションペダルとタップテンポ用フットスイッチのどちらかを選択できます。いずれも別売です。
まとめ
White Whale V2の魅力は、本物のスプリングタンクをペダルサイズに収めたことと、そのバネを鳴らす回路に十分な余裕を持たせたことの両方にあります。dwellを上げたときの飽和感、深くかけても埋もれないリバーブ、PREとPOSTで表情が変わるトレモロ。ノブの数だけ設定の幅があり、腰を据えて向き合う価値のある1台です。
アンプにリバーブやトレモロが備わっていない環境で、60年代アメリカンアンプの響きを足元から手に入れたい。そう考えたときに、有力な候補となるペダルです。
BRAND
Crazy Tube Circuits
このエフェクターのみんなの記録
このエフェクターについてのひとことや、登録しているユーザーを見ることができます。
このエフェクターを使っているボード
実際のボードでの組み合わせや並べ方を見ることができます。

