ディレイを踏んで返ってくるのが原音のきれいなコピーだと、それはそれで物足りない。そう感じたことがあるなら、Fairfield Circuitry「Meet Maude」は面白い選択肢になります。カナダ・ケベック州ハルの工房で組み上げられるBBDアナログディレイで、リピートを重ねるほど音が丸く、暗く沈んでいく。テープエコーの減衰の仕方を、アナログ回路そのままで作り込んだペダルです。
サウンドを形づくる4つの仕掛け
リピートを沈ませるVCF
Meet Maudeの音がダークに聞こえる理由は、出力段に置かれた電圧制御ローパスフィルター(VCF)にあります。信号が大きいときフィルターは開き、音量が下がるにつれて高域を削っていきます。演奏していないときのサーッという風切り音のようなノイズを抑えると同時に、リピートが減衰するにつれて一段ずつ音が暗くなっていく。弱く弾いたときほど、この効きははっきり出ます。
TONEとFEEDの密接な関係
TONEは時計回りで高域、反時計回りで低域を持ち上げます。センター位置では下の中域がわずかに削られる設定です。
ポイントは、リピートが毎回このTONE段を通過すること。つまりTONEを動かすと、フィードバックの音色そのものが変わります。明るいTONEなら明るい発振音になる、という具合です。さらにTONEをセンターから離すほど発振の閾値が下がり、早く発振に入るようになります。FEEDを上げきる手前で粘らせながらTONEを振れば、低く唸る轟音から甲高い悲鳴まで、狙って作り分けられます。
フィードバック経路のJFETコンプレッサー
ディレイ回路の入口には、ディスクリート構成のJFETコンプレッサーが入っています。ダイナミクスをならしてディレイ段での歪みを防ぐ役割で、Cスイッチによりライト(0)/ヘビー(1)の2段階で深さを選べます。
通るのはフィードバック信号だけで、MIXへ向かう原音はコンプレッサーを経由しません。原音のアタックはそのままに、リピート側だけを整えられるという設計です。
ディレイタイムのランダムモジュレーション
Mスイッチで、ディレイタイムにランダムな変調を加えられます。一定周期の揺れではなく、ディレイタイムに対して不規則なオフセットが加算される方式で、タイムが予測できないかたちで上下します。回転の安定しないリールtoリールのテープマシンに近い、生々しい揺らぎが得られます。オフ(0)/ライト(1)/ヘビー(2)の3段階です。
各コントロールの役割
- VOLUME:出力レベル。十分なゲインが確保されています。
- MIX:原音とディレイ音のバランス。
- TONE:ディレイ音の低域/高域バランス。フィードバックの音色と発振の入りやすさにも影響します。
- FEED:フィードバック量。
- TIME:ディレイタイム。50〜500msの範囲。
- C:コンプレッションの深さ。0=ライト/1=ヘビー。
- M:ランダムモジュレーション量。0=オフ/1=ライト/2=ヘビー。
CVジャックは2つのモードで使える
リアの1/4インチステレオCVジャックは、筐体内部の6連マイクロスイッチによって動作モードを切り替えられます。ここがMeet Maudeを単なるアナログディレイに留めていない部分です。
外部コントロールモード(初期設定)
エクスプレッションペダル(ワイパー→チップ)や外部CVソースで、FEEDまたはTIME、あるいはその両方を同時にコントロールできます。出荷時はFEEDにアサインされています。CV信号はフロントパネルのノブ設定に加算される仕組みで、対象パラメーターを最小に絞った状態でのCV入力範囲は0〜5Vです。
エフェクトループモード
スイッチ設定を変えると、同じジャックがエフェクトループとして機能します。TONE段の直後でウェット信号を取り出し、外部エフェクターで加工してからディレイ段の直前に戻す、という接続です。センド/リターンはそれぞれチップ/リングに割り当てられています。
フィードバックループの中に別のペダルを挟み込めるため、リピートするたびにピッチが変わる、歪みが増していくといった処理が組めます。実験的な使い方まで視野に入る設計です。
切り替えには底面4本のネジを外して基板上のマイクロスイッチを操作します。具体的なスイッチの組み合わせは、公式サイトで配布されているプログラミングガイド(PDF)に図解されています。
製品仕様
| 方式 | BBDアナログディレイ |
| バイパス | トゥルーバイパス |
| ディレイタイム | 50〜500ms |
| 入力インピーダンス | 1MΩ |
| 出力インピーダンス | 1kΩ |
| 入出力 | 1/4インチ モノ入出力、1/4インチ ステレオCVジャック |
| 電源 | 9〜9.6V DC センターマイナス(レギュレート)/2.1mm DCジャック |
| 消費電流 | 60mA |
| 保護回路 | 逆極性・過電圧保護 |
| 電池駆動 | 非対応(内部に電池端子なし) |
| 外形寸法 | 4.7 × 3.8インチ(約119 × 97mm) |
| 製造 | カナダ・ケベック州ハル |
よくある質問
- 電池で動作しますか?
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内部に電池用の端子がないため、電池では動作しません。9〜9.6Vのセンターマイナス電源が必要です。消費電流は60mAなので、パワーサプライの空きポートの容量を確認してください。
- コンプレッサーはオフにできますか?
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できません。Cスイッチはライト(0)とヘビー(1)の2段階で、常時動作します。ただしコンプレッサーが作用するのはフィードバック経路のみで、原音は通過しないため、原音のダイナミクスが損なわれることはありません。
- エクスプレッションペダルで何を操作できますか?
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出荷時の設定ではフィードバック量です。内部のマイクロスイッチを変更すれば、ディレイタイム、または両方を同時に操作する設定に変更できます。ワイパー→チップ結線のエクスプレッションペダルに対応します。
- モジュレーションが不要な場合は切れますか?
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Mスイッチを0にすればオフになります。素直なアナログディレイとして使いたい場面ではオフ、テープらしい揺らぎが欲しい場面では1または2、と使い分けられます。
- マニュアルはどこで手に入りますか?
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英文の仕様書とプログラマーズ・リファレンス・マニュアルが、Fairfield Circuitryの公式サイトからPDFで配布されています。CVジャックのモード変更にはこのプログラミングガイドが必要です。
50〜500msという設定範囲は、アナログディレイとして標準的です。派手なスペックで押すペダルではありません。それでも他と替えが利かないのは、VCFによる減衰の描き方と、フィードバックループに外部エフェクトを挟み込めるという構造にあります。暗く沈んでいくリピートと、そこから先へ踏み込める余地。この2つを一台で持っているアナログディレイです。
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