「ローファイ」という言葉は便利なぶん、音が実際にどう崩れるのかまでは教えてくれません。テープが揺れるのか、ラジオのように帯域が痩せるのか、デジタル処理が破綻するのか。CatalinbreadのEG1は、その崩れ方を3種類に切り分けたローファイ・ディレイです。ラジオ、カセットテープ、デジタルテレビという伝送方式ごとに異なる処理をディレイ音へ加える構造で、最大約900msのディレイタイムとタップテンポも備えており、カントリーのスラップバックからシューゲイザーのウォール・オブ・サウンドまで幅広く対応します。
3つの伝送モードが、それぞれ違う「壊れ方」を持っている
EG1の中心にあるのは、MODトグル(1/2/3)で選ぶ3つの伝送モードです。ひとつのテープ・シミュレーションを深く追い込んでいくタイプのディレイとは考え方が異なり、そもそも何によって音が劣化するのかを選べるところに特徴があります。モードを切り替えると、MODノブとTRANSMISSIONノブが受け持つパラメーターも一緒に変わります。
モード1:Vintage Radio
ハイパスとローファイのフィルタリングに、ラジオのフロントエンドで生じるアーティファクトのシミュレーションを重ねたモードです。MODノブがリピート音にかかるフィルターの量を決め、TRANSMISSIONノブはフィルターのかかったリピートとかかっていないリピートのバランスを取ります。原音の芯を残したまま、リピートだけを遠い放送のように痩せさせられるため、バンドのアンサンブルに埋もれない範囲でローファイ感を加えたいときに扱いやすいモードです。
モード2:Cassette Tape
変調のレートと歪みの深さを扱うモードで、一般にワウ・フラッターと呼ばれる揺らぎにあたります。MODノブを上げると変調のレートが速くなりますが、どの位置でもミックスに馴染むように調整されており、揺れの深さのほうはTRANSMISSIONノブが受け持ちます。レートと深さが別々のノブに割り振られているので、テープ・エコーらしい質感を求める場面でも、揺れの速さと量を切り分けながら追い込んでいけます。
モード3:Digital Television
ナイキスト・エラーとデジタル・ダウンサンプリング、そこにわずかなビットクラッシュが加わるモードです。MODノブがナイキスト・エラーの比率を、TRANSMISSIONノブがその効果をリピートへ混ぜる量を担当します。アナログ的な劣化とは質の異なる、ざらついた粒立ちや不安定な倍音が出てくるため、テープ系のディレイでは届かない領域をここが担ってくれます。ローファイ・ヒップホップのような質感をギターで作りたい場合や、崩れ方そのものを演出として使いたい場合に力を発揮します。
MODとTRANSMISSIONの関係をつかむと音作りが早い
ノブの名前だけを見ると迷いやすいところですが、役割そのものははっきり分かれています。MODノブが「どんなアーティファクトを、どのくらいの量でリピートに注入するか」を決め、TRANSMISSIONノブが「そのMOD効果をどれだけ深く効かせるか」を決めます。モードごとに具体的な中身は変わっても、この関係は共通しているため、まずMODで方向を決めてからTRANSMISSIONで濃さを詰めるという手順に慣れておけば、3つのモードを同じ感覚で扱えます。
もうひとつ押さえておきたいのがFEEDBACKの挙動です。リピートを重ねるほど、選んだモードのアーティファクトが積み重なって前面に出てくる設計になっています。極端な設定では発振させることもできるため、リズミカルなディレイとしての使い方にとどまらず、崩壊していくテクスチャーそのものを鳴らす方向にも振れます。
ディレイとしての基本性能
質感を作り込む部分に目が向きがちですが、ディレイとしての基本仕様も十分に整えられています。MIXノブは100%ドライから100%ウェットまで可変で、ウェット側に振り切ればディレイ音だけを出力できます。パラレル接続やアンプの2系統を使った構成にも組み込みやすく、原音を完全に置き換える使い方も想定に入っています。ディレイタイムは最大約900ms。ダイナミックレンジとヘッドルームにも余裕を持たせた信号処理となっており、音を汚す方向のペダルでありながら、残しておきたい部分の質感まで一緒に削られずに済みます。
LEDの色が示すタップテンポの3つの状態
EG1のフットスイッチは、LEDの色で現在の状態を示します。挙動を知らないまま踏むと戸惑いやすい部分なので、あらかじめ把握しておくと安心です。
- 赤:クラシック・モード/一般的なディレイと同じく、DELAY TIMEノブでディレイタイムを手動設定します。他のモードからでも、DELAY TIMEノブを回せばこの状態に戻ります。
- 緑:タップ入力モード/フットスイッチを長押しすると入り、踏んだリズムでディレイタイムを設定できます。
- 青:タップ・バイパス・モード/タップ入力モード中にフットスイッチを長押しすると入ります。設定したテンポを保持したまま、フットスイッチでペダルのオン/オフを行えます。
電源は9V/200mA以上。ここだけは確認してから導入を
EG1でもっとも注意が必要なのは電源です。要求されるのは9V DCセンターマイナスで、200mA以上を供給できる電源。200mAを超える供給については問題ないとされていますが、200mAという数字は、コンパクトエフェクター用パワーサプライの1ポートあたりの供給量として決して小さくありません。すでに埋まっているボードへ追加するなら、空きポートの供給能力を先に確認しておく必要があります。
EG1が向いている人、そうでない人
3モードという構成上、EG1はローファイの種類を弾き分けたい人に向いています。テープの揺らぎ一本で勝負するディレイをすでに持っていて、そこから先の表現を足したい場合や、シューゲイザーやアンビエントのように音像そのものを組み立てていく場合には、モードごとの質感の違いがそのまま手数になります。カントリーのスラップバックのような短いディレイでも、Vintage Radioで軽く痩せさせるだけで表情が変わるため、飛び道具に限らない使い方ができます。
逆に、リピートが原音に忠実であることを最優先する場合や、プリセットの保存、ステレオ出力、1秒を超えるロングディレイを求める場合には、このペダルが目指している方向とは噛み合いません。パワーサプライに余裕がないボードで運用するなら、導入前に電源計画を見直しておく必要もあります。
主なコントロールとスペック
- コントロール:FEEDBACK、MIX、TRANSMISSION、DELAY TIME、MOD、MODトグル(1/2/3)
- モード:Vintage Radio、Cassette Tape、Digital Television
- 最大ディレイタイム:約900ms
- MIX:100%ドライ〜100%ウェット
- タップテンポ:内蔵(クラシック/タップ入力/タップ・バイパスの3状態、LEDの色で表示)
- 電源:9V DCセンターマイナス、200mA以上
よくある質問
- 3つのモードは演奏中に足元で切り替えられますか?
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モードの切り替えはMODトグル(1/2/3)で行います。フットスイッチはオン/オフとタップテンポに割り当てられているため、演奏中の切り替えは手での操作になります。
- ディレイ音だけを出力することはできますか?
-
できます。MIXノブは100%ドライから100%ウェットまで可変で、ウェット側に振り切るとディレイ音のみが出力されます。
- タップで入力したテンポは、ペダルをオフにしても保持されますか?
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タップ・バイパス・モード(LED青)であれば、タップ入力モードで設定したテンポを保持したままバイパスできます。DELAY TIMEノブを回すと、ディレイタイムはノブの位置に戻ります。
- パワーサプライを選ぶときの注意点は?
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9V DCセンターマイナスで、200mA以上を供給できるポートが必要です。200mAを超える供給は問題ありませんが、センタープラスやAC出力を接続すると故障の原因となり、保証も受けられなくなります。
Catalinbreadについて
Catalinbreadは、アメリカ・オレゴン州ポートランドを拠点に、設計から組み立てまでを米国内で行っているエフェクター・ブランドです。往年のアンプやスタジオ機材、特定のアーティストが残したサウンドを出発点にした製品を数多く手がけており、Belle EpochシリーズやEchorecのように、実機の挙動を掘り下げたディレイ/エコー系にも長く取り組んできました。EG1は、同社のタップテンポ対応プラットフォームの第2弾にあたります。
BRAND
Catalinbread
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