DEATH BY AUDIO の AMP CRASH は、ペダルの筐体のなかに 3W のアンプと 2 インチのスピーカー、そしてマイクをまとめて収めた機材です。歪みを電気的に作り出すのではなく、小さなスピーカーが実際に空気を動かし、その音をすぐそばのマイクが拾うという流れで音が組み立てられていきます。
ペダルの中で、本物のスピーカーが鳴っている
内部のマイクはスピーカーのエッジに向けて取り付けられており、スピーカーが信号を再生しきれずに崩れていく質感や、そこから立ち上がってくるフィードバックの気配まで、そのまま拾い上げます。アンプシミュレーターが再現の対象としてきた「マイキングされた小さなコンボアンプ」の挙動が、モデリングを経由せずに出力されるという構造で、鳴らしているときの手応えも、追い込んだ小型アンプに近いものになります。
出力側は DI OUT と MIC OUT という 2 つのつまみでバランスを決める仕組みで、アンプから直接取り出した信号と、内部マイクが捉えた信号を任意の比率で混ぜて OUTPUT へ送ります。DI OUT を中心にすればまとまりのある歪みになり、そこへ MIC OUT を足していくにつれて箱鳴りや空気感、フィードバックの成分が加わっていきます。演奏していないあいだのフィードバックを抑えたいときは MIC GATE を使うことができ、このゲートは楽器入力の信号でトリガーされます。
クリーン寸前からアナログファズまで動くゲイン
アンプ部はアナログ回路で構成されていて、GAIN はほぼクリーンに近い領域から密度の高いファズまで連続的に変化します。ギター側のボリュームによる歪み量の調整にも反応するため、手元でクランチとファズを行き来するような使い方ができます。GAIN をさらに上げて OVERLOAD の領域まで持ち込むと、歪みは荒れた質感に変わり、内部で発振を始めます。TONE はアンプの EQ を低域寄りの太いサウンドから明るく芯のある方向まで動かすもので、後述するエフェクト音にも同時に作用します。
リバーブ・エコー・コーラスは歪みの前段に置かれる
SFX セクションにはデジタルのリバーブ、エコー、コーラスが用意されており、3 種類から 1 つを選んで DEPTH と TIME の 2 つのつまみで調整します。DEPTH を絞りきるとエフェクトはバイパスされ、上げていくとリバーブのブレンド量、エコーのブレンドとフィードバック、コーラスの深さがそれぞれ変化します。TIME はリバーブのディケイ、エコーのディレイタイム、コーラスのスピードに割り当てられています。
リバーブは小さな部屋の響きから最大 12 秒に及ぶ洞窟のような残響まで、エコーはテープエコー系の質感で、単発のリピートから発振して唸りを上げる状態まで到達します。コーラスは金属的なフランジングから厚みのある揺れまでを含んだ振れ幅を持っています。
特徴的なのは、これらのエフェクトがゲイン部の前段に配置されている点です。残響やリピートを含んだ信号がそのままアンプ部で歪まされるため、エフェクト成分そのものが飽和して膨らんでいき、原音の後ろに整然と残響が付いてくるタイプの音とはまったく違う挙動になります。内部スピーカーとマイクの相互作用がここに重なることで、音が伸びるほど倍音が増え、そのままフィードバックへ移行していくような領域が生まれます。
Death By Audio と Rainger FX の共作として生まれた
このペダルは、ニューヨークの Death By Audio とロンドンの Rainger FX による共同開発から生まれました。出発点にあったのは、David Rainger がニューヨークに持ち込んだ「ペダルの中にマイクを入れて、部屋の空気の響きをギター信号に混ぜる」というアイデアです。Death By Audio はそこにスピーカーそのものを内蔵するという発想を重ね、最初の試作機で内部のスピーカーとマイクが部屋に置かれたアンプのように反応し合うことを確認しています。この構造を軸に新しいマルチエフェクトエンジンが組まれ、リバーブ、エコー、コーラスが加えられて現在の形になりました。
外部キャビネット接続とスピーカーの切り替え
EXT. SPEAKER 端子には 8Ω 以上・3W 以上のスピーカーキャビネットをスピーカーケーブルで接続でき、外部スピーカーをつないだ時点で内部スピーカーは自動的に無効になります。小さなアンプヘッドとしてキャビネットを鳴らす使い方ができるほか、この端子にヘッドホンアダプターや先が接続されていないケーブルを挿した場合も内部スピーカーだけがオフになり、DI OUT と MIC OUT の信号は生きたままになります。内部スピーカーを鳴らさずにライン録音したい場面や、音を出しにくい時間帯に触りたい場面で扱いやすい設計です。
バイパスはバッファードで、フットスイッチはエフェクトのオン/オフと同時に内部スピーカーのオン/オフも切り替えます。バイパス時は入力信号がそのまま出力へ通過します。
消費電流は 300mA と大きく、一般的なパワーサプライでは 1 ポートあたりの供給量を超える場合があります。供給量に余裕のあるポートを使うか、単独の電源を用意しておくと安定して動作します。
どんな場面で生きるか
歪みペダルとして見れば、アンプの前に置いてオーバードライブからファズまでをまかなうことができ、そこに内部マイクが拾う空気の成分を足せる点が他にない部分です。DI OUT と MIC OUT のバランスを固定してしまえば扱いやすい歪みとして機能し、MIC OUT を持ち上げてゲインを追い込めば、制御しきらないフィードバックやテクスチャーを演奏に取り込む方向へ振ることもできます。宅録でのライン出力、小さな練習用アンプ、キャビネットを鳴らすヘッド、そして音そのものを作る実験台と、ひとつの筐体で役割を切り替えられる構成になっています。
主な仕様
| 内蔵アンプ | 3W(アナログ) |
| 内蔵スピーカー | 2インチ |
| 内蔵エフェクト | リバーブ/エコー/コーラス(DEPTH・TIME で調整) |
| コントロール | GAIN、TONE、DI OUT、MIC OUT、DEPTH、TIME、MIC GATE |
| 入出力 | INPUT、OUTPUT、EXT. SPEAKER(8Ω以上・3W以上)、9V DC |
| バイパス | バッファードバイパス |
| サイズ | 149 × 95 × 72 mm(ハードウェア含む) |
| 重量 | 約654g |
| 電源 | 9V DC アダプター(2.1mm センターマイナス) |
| 消費電流 | 300mA |
| 保証 | ライフタイムワランティ |
よくある質問
- 内部スピーカーの音量はどこで調整しますか
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DI OUT と GAIN の 2 つが内部スピーカーの音量に関わります。専用のマスターボリュームは設けられていません。
- リバーブとエコーを同時に使えますか
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SFX セクションは 1 系統で、リバーブ、エコー、コーラスから 1 つを選んで使用します。DEPTH と TIME は選んだエフェクトに共通で割り当てられます。
- どんなスピーカーキャビネットを接続できますか
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8Ω 以上、3W 以上のキャビネットをスピーカーケーブルで接続します。接続すると内部スピーカーは自動的に無効になります。
- 内部スピーカーを鳴らさずにライン録音できますか
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EXT. SPEAKER 端子にヘッドホンアダプターや先が接続されていないケーブルを挿すと、内部スピーカーだけがオフになり、DI OUT と MIC OUT の信号は出力されたままになります。
- TONE はエフェクト音にも効きますか
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効きます。エフェクトはゲイン部の前段にあるため、TONE の設定はエフェクト成分を含んだ信号全体に作用します。
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