ライブのたびにハウリングと格闘したり、バンドの中でギターの輪郭が埋もれてしまったり。アンプのトレブルやミドルをいくら回しても、狙ったところだけがうまく動いてくれない——そんなもどかしさを感じたことはないでしょうか。
原因の多くは、アンプやコンパクトEQの「効く帯域があらかじめ決まっている」という構造そのものにあります。動かしたいのは2kHz付近のほんの一点なのに、実際には1kHzから4kHzまでまとめて持ち上がってしまう。だから他の帯域とぶつかり、結局どこかで妥協することになります。
Empress Effects ParaEQ MKII Deluxeは、その「一点」を狙い撃ちできるパラメトリックEQペダルです。3バンドすべてで中心周波数とQ幅を自由に設定でき、さらにハイパス/ローパスフィルターとBaxandallシェルビングフィルターまで備えています。スタジオのラック機器で行っていた作業を、そのままペダルボードの上に持ち込めるモデルです。
Empress Effects ParaEQ MKII Deluxeとは
結論からお伝えすると、ParaEQ MKII Deluxeは「音を足す」ためではなく「音を整える」ために使うEQペダルです。
3バンドのフルパラメトリックEQに加えて、ハイパスフィルター、ローパスフィルター、ロー/ハイのシェルビングフィルターという4つの追加フィルターを搭載。さらに0dB〜+30dBのクリーンブースターを独立したフットスイッチで扱えます。カナダのEmpress Effectsによれば、内部を27Vに昇圧して駆動することでラックマウント機器に近いヘッドルームを確保しており、信号がどれだけ大きくてもクリップしにくい設計とのことです。
公称スペックはノイズ107dB以上、THD 0.05%未満。メーカーは「楽器本来の音をマスクせず、必要なところだけを動かせる」ことをこのモデルの核として説明しています。
オリジナルのParaEQは2009年の登場以来10年以上にわたって定番として扱われてきたモデルで、MKIIはその設計を引き継ぎつつ筐体をおよそ半分のサイズにまとめ直したものです。上位版にあたるDeluxeでは、無印では3ポジション切替だったQコントロールが連続可変となり、加えて4つのフィルターが追加されています。
グラフィックEQとパラメトリックEQは何が違うのか
EQペダルを探していると、まずこの違いで迷う方が多いと思います。
グラフィックEQは、あらかじめ決められた周波数ごとにフェーダーが並んでいる方式です。カーブが目で見えるのでわかりやすく、直感的に扱えます。一方でフェーダーの位置=動かせる帯域が固定されているため、「2.3kHzだけ下げたい」といった要求には応えきれません。
パラメトリックEQは、中心周波数・ゲイン・Q幅(効く範囲の広さ)の3つをすべて自分で決められる方式です。Empressの説明によれば、7バンドのグラフィックEQと同じくブーストさせた場合、ParaEQ MKII Deluxeは狙った帯域だけに変化が集中するのに対し、グラフィックEQはより広い範囲に影響が及び、意図しない帯域が削れてしまうこともあるとされています。
レコーディングスタジオのコントロールルームでパラメトリックEQが主流になっているのは、この精度と透明度が理由です。ペダルボードの上で同じ考え方の調整ができる、というのがParaEQ MKII Deluxeの立ち位置になります。
ParaEQ MKII Deluxeのコントロール
3バンドのパラメトリックEQ
各バンドはFreq(中心周波数)、Gain(±15dB)、Q(帯域幅)の3つのノブで構成されています。Gainは12時でフラット、そこから左右に回してカット/ブーストを行います。
- Low:35Hz〜500Hz
- Mid:250Hz〜5kHz
- High:1kHz〜20kHz
3バンドの守備範囲は互いに重なり合っているため、たとえば1kHz付近をLowとMidの両方から挟み込むといった使い方もできます。1本のEQで細かいカーブを描けるのは、この重なりがあるからです。
連続可変のQコントロール
Deluxeで最も大きな違いがここです。Qノブを無段階で動かせるため、「広く自然に」から「一点だけ鋭く」まで、目的に合わせて幅そのものを設計できます。
- Wide(左いっぱい):Q≈1/約1.5オクターブ。全体の質感を自然に変えたいとき
- Medium(12時):Q≈2.5/約2/3オクターブ。一般的なアンプのトーン回路に近い効き方
- Narrow(右いっぱい):Q≈4/約1/3オクターブ。特定の帯域だけを狙って処理したいとき
ハイパス/ローパスフィルター
- ハイパスフィルター:10Hz〜330Hzで設定したカットオフより下を12dB/オクターブで減衰
- ローパスフィルター:1.5kHz〜22kHzで設定したカットオフより上を12dB/オクターブで減衰
EQでの上げ下げとは役割が違い、こちらは「その帯域を丸ごと退場させる」ための機能です。低域の不要な唸りや、耳に刺さる超高域を根元から整理できます。
Baxandallシェルビングフィルター
- Low Shelf:200Hz以下を最大±15dBでブースト/カット
- High Shelf:1kHz以上を最大±15dBでブースト/カット
メーカーはこの2つを「非常に緩やかで音楽的なカーブを持つBaxandallフィルター」と説明しています。パラメトリックの3バンドが精密作業だとすれば、こちらは全体の明るさや重心をざっくり動かすためのセクションです。
クリーンブースト
0dB〜+30dBまで無段階で設定でき、専用のフットスイッチでオン・オフします。ソロで音量を持ち上げる用途はもちろん、チューブアンプの入力段を押してナチュラルな歪みを引き出したり、エフェクトチェインの前段でゲインを稼いでノイズを相対的に下げたりといった使い方もできます。
EQでカットを行うと全体の音量が下がりますが、その分をここで補うメイクアップゲインとして使えるのも実用的なポイントです。
使用シーン別のセッティング例
ハウリングを止めたいとき
アコースティックギターをDIで鳴らすとき、モニターからのフィードバックは大きな悩みどころです。マニュアルではMid/Highバンドを使い、Qを最も狭く設定して原因となっている帯域だけをカットする方法が紹介されています。Qが狭ければ削る範囲がごく小さく済むため、楽器本来のキャラクターを保ったままハウリングだけを抑えられます。
バンドの中で埋もれてしまうとき
アンプの音量を上げて解決しようとすると、他の楽器を押しのけるだけで終わってしまいがちです。1kHz〜4kHzのアッパーミッドを持ち上げると、音量そのものを変えずに前に出てくる、というアプローチが公式マニュアルでも挙げられています。あわせてハイパスフィルターで低域を整理すると、ベースやバスドラムとの居場所の取り合いも解消しやすくなります。
ステージの響きで低域が膨らむとき
会場に入ってセッティングしてみたら妙にブーミーだった、という場面では、200Hz〜600HzのローミッドをミディアムなQで削る方法が有効とされています。部屋の癖に合わせて現場で微調整できるのは、パラメトリックEQならではです。
歪みのキャラクターを作り込みたいとき
アンプの前段に置くと、歪ませる前の信号そのものを整形できます。高域バンドをブーストしてからアンプに送れば、低域を濁らせずに高域側だけを歪ませる、といった調整も可能です。
アドバンス設定でできること
両方のフットスイッチを踏みながら電源を接続すると、アドバンス設定に入ります。
- バイパス方式の切替:トゥルーバイパス(初期設定)とバッファードバイパスを選べます。長いケーブルを引き回す環境ではバッファードが役立ちます
- ブーストの動作モード:通常モード(初期設定)ではEQとブーストが連動しますが、インディペンデントモードにするとEQをオフのままブーストだけを使えます。EQペダルとブースターを別々に持っているのに近い感覚です
また、EQとブーストそれぞれについて、電源投入時にオンの状態で立ち上がるかオフで立ち上がるかを記憶させることもできます。該当するフットスイッチを踏みながら電源を入れるだけで設定できるので、常時オンで使いたい方にも扱いやすい仕様です。
主なスペック
| 入力インピーダンス | 1MΩ |
| 出力インピーダンス | 100Ω |
| 周波数レスポンス(-3dB) | 22Hz〜25kHz |
| 全高調波歪率(THD) | 0.05%未満 |
| ノイズ | 107dB以上 |
| ヘッドルーム | +30dBu |
| 内部駆動電圧 | 27V(内部昇圧) |
| 電源 | 9V DC センターマイナス |
| 消費電流 | 300mA以上 |
| DCジャック | 2.1mmバレルコネクター |
| 外形寸法 | 約122(D)×66(W)×64(H)mm ※ノブ含む |
| 重量 | 約450g |
購入前に必ずご確認ください。本機は9V DCアダプター専用で、電池には対応していません。また動作に300mA以上を必要とするため、1系統あたり100mAや200mAまでのパワーサプライでは正常に動作しません。手持ちのサプライの出力電流を先に確認しておくと安心です。
無印ParaEQ MKIIとの違い
ParaEQ MKIIには標準版とDeluxeの2種類があり、どちらを選ぶかで迷う方は少なくありません。違いは次のとおりです。
| ParaEQ MKII | ParaEQ MKII Deluxe | |
| 3バンドパラメトリックEQ | あり(±15dB) | あり(±15dB) |
| Qコントロール | 3ポジション切替スイッチ | 連続可変ノブ |
| ハイパスフィルター | なし | あり(10Hz〜330Hz) |
| ローパスフィルター | なし | あり(1.5kHz〜22kHz) |
| シェルビングフィルター | なし | ロー/ハイの2基 |
| クリーンブースト | 最大+30dB | 最大+30dB |
| 内部駆動電圧 | 27V | 27V |
| バイパス切替 | あり | あり |
3バンドEQとブーストという中核部分は共通なので、「EQの効きを大まかに決められれば十分」という方には無印でも足ります。一方、フィルターで帯域の端を切り落としたい方や、Q幅そのものを追い込みたい方はDeluxeを選ぶ意味が明確にあります。
※価格は変動しますので、最新の情報は各販売店のページでご確認ください。
ParaEQ MKII Deluxeが向いている方
- ハイパス/ローパスフィルターで低域と高域の端を精密に処理したい方
- Baxandallフィルターによる、緩やかで自然な高域の艶や低域の厚みを求めている方
- アコースティックギターやベースをDIで鳴らす機会が多く、ハウリング対策が必要な方
- 会場ごとに変わる響きに合わせて、その場で音を作り直したい方
- EQとブースターを1台にまとめてボードを整理したい方
別のモデルを検討したほうがよい方
- 電池駆動で使いたい方(本機はアダプター専用です)
- パワーサプライの空き系統に300mAの余裕がなく、増設の予定もない方
- フェーダーの並びでカーブを目視しながら直感的に操作したい方(グラフィックEQのほうが合います)
- EQに色付けや歪みのキャラクターを求めている方(本機はトランスペアレント志向の設計です)
よくある質問
- 電池で駆動できますか?
-
電池には対応していません。9V DC センターマイナスのアダプターが必要です。加えて300mA以上の供給能力が求められるため、パワーサプライを使用する場合は該当系統の出力電流をご確認ください。
- ベースやアコースティックギターにも使えますか?
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使えます。メーカーは楽器を問わないトーンシェイピングツールとして設計しており、公式マニュアルにもエレキギター・ベース・DIアコースティックギターそれぞれの帯域別ガイドが掲載されています。Lowバンドは35Hzから、ハイパスフィルターは10Hzからカバーするため、ベースの低域処理にも対応します。
- 無印のParaEQ MKIIとどちらを選ぶべきですか?
-
ハイパス/ローパスフィルターとシェルビングフィルターが必要かどうかが判断の分かれ目です。3バンドEQとブーストだけで足りるなら無印でも十分ですが、帯域の端を切り落とす処理やQ幅の細かな追い込みを行いたい場合はDeluxeが適しています。
- トゥルーバイパスとバッファードバイパスは選べますか?
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選べます。初期設定はトゥルーバイパスで、アドバンス設定に入ることでバッファードバイパスに変更できます。長いケーブルを引き回す環境やボード規模が大きい場合は、バッファードのほうが信号の劣化を抑えられます。
- EQをオフにしたままブーストだけ使えますか?
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可能です。アドバンス設定でインディペンデントモードに切り替えると、EQとブーストを完全に独立して操作できます。1台でEQペダルとブースターを兼ねる使い方ができます。
- 保証はどうなっていますか?
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Empress Effects公式サイトでは2年間の標準保証、製品登録を行うと4年間に延長されると案内されています。国内で購入した場合の保証対応は販売店や輸入代理店の規定によりますので、購入前にご確認ください。
まとめ
ParaEQ MKII Deluxeは、決められた帯域を上げ下げするEQではなく、動かしたい場所を自分で決めるためのEQです。3バンドすべてで中心周波数とQ幅を設定でき、4つのフィルターで帯域の端まで管理できる。そこにクリーンブーストが加わることで、音作りと音量の両方を1台で完結できます。
ハウリング、バンド内での埋もれ、会場ごとに変わる響き。ライブの現場で繰り返し起きるこうした問題に対して、その場で答えを出せる道具を探しているなら、有力な候補になるはずです。
導入時は、パワーサプライの出力電流が300mA以上あるかどうかだけ、忘れずに確認しておいてください。

![Empress Effects / ParaEQ MKII Deluxe [EQ w/ Boost Pedal] 【エフェクター】](https://effectorbox.com/wp-content/uploads/2026/08/empress-effects-paraeq-mkii-deluxe.jpg)