アンプもギターも気に入っているのに、あと一歩「録った音」のような密度が出ない。低域を足すとモコモコになり、削ると芯まで痩せてしまう——ORIGIN EFFECTS EQ DELUXE(EQDELUXE)は、そのジレンマを1950年代のスタジオの流儀で解きにいくペダルです。ベースとなったのは、名門Pulse Techniques社のパッシブEQ「Pultec EQP-1A」。数あるプラグインの元ネタとして知られるあの回路を、ギター/ベース用の周波数に組み替え、さらに歪み量を可変できるGAINまで備えた、オールアナログの3バンド・インダクティブEQです。単なる補正用イコライザーではなく、常時オンで使いたくなるキャラクター系ペダルとして設計されています。
なぜPultec EQP-1Aは、70年間も現役なのか
Pultec EQP-1Aは1950年代に登場したパッシブ・プログラムEQで、ハイエンドのスタジオでは現在も定番機として使われ続けています。特徴は、細かい問題を潰す「外科手術型」ではなく、broadで音楽的なカーブによって信号全体を持ち上げていく設計思想にあります。真空管によるメイクアップ・アンプが加える穏やかなサチュレーションも含め、「通すだけで良くなる」と評されてきた理由がここにあります。
EQ DELUXEは、この回路をギターとベースの帯域に合わせて再設計したモデルです。オリジナルのスタジオ的な周波数配置をそのまま持ち込むのではなく、楽器用として実用的なポイントが選び直されている点が、汎用EQペダルとの決定的な違いになっています。
3バンドの中身|選べる周波数ポイント
- LOW:BOOSTとCUTが独立。周波数は20Hz/30Hz/60Hzから選択
- MID:0.8/1.2/1.6/2.4/3.6/5kHzの6ポイント。BANDWIDTHで鋭いピークからなだらかなベルまで可変
- HIGH:5/10/20kHzのシェルビング・カット。サチュレーション段の後段に配置
- GAIN/LEVEL:歪み量と出力レベルを独立してコントロール
ミッドはインダクター(コイル)を用いた回路で、ベースとギターの双方を想定した帯域が選定されています。ハイはカット方向に幅広く効くため、フィズやDI特有のきつさを整える「仕上げの一手」として機能します。ハイカットが歪み段の後ろにある構成は、GAINを上げたときの耳あたりを整えるうえで理にかなった配置です。
「パルテック・トリック」で、低域と中域を同時に手に入れる
EQ DELUXE最大の見どころが、ローバンドのBOOSTとCUTを同時に使う、いわゆる「Pultec Low-End Trick」です。通常のEQなら同じ帯域をブーストしてカットすれば相殺されて終わりですが、Pultec系回路ではブーストとカットのカーブがわずかにずれているため、打ち消し合いません。結果として最低域は持ち上がり、その少し上——モコつきの原因になる帯域は削られるという、独特の合成カーブが生まれます。
低域の土台が太くなるのに、中域の見通しはむしろ良くなる。この挙動こそが、EQP-1Aがエンジニアにベース処理の第一候補として選ばれてきた理由です。EQ DELUXEはこの動作をペダル上で再現しており、ベースはもちろん、ギターの音像に重心と存在感を与えたい場面でも活用できます。
EQでありながらドライブでもある|GAINノブという答え
製品名が「Studio Equaliser and Drive」であるとおり、EQ DELUXEはサチュレーション量を自分で決められます。EQP-1Aのプッシュプル真空管出力段が生む「マジック」を、ORIGIN EFFECTSは入念に設計したソリッドステート回路で再構築。GAINを上げていくと、精密にコントロールされた真空管的な倍音が加わっていきます。
GAINを絞ればクリーンなキャラクターEQとして、上げれば1950年代のスタジオ機器を通したような色付けを伴うドライブ段として。LEVELが独立しているため、歪み量と音量を別々に追い込める点も実用的です。
ペダルボードでも、宅録のラインでも
EQ DELUXEはハイヘッドルーム設計を採用しており、アンプのエフェクトループやDI、さらにオーディオインターフェースやミキシングコンソールといったラインレベル信号にも対応します。バイパス時は高品位バッファード・バイパス。ボードの中で常時オンにしておく使い方から、宅録の録り音に色を足す使い方まで、置き場所を選ばない設計です。
使い始めは、まずGAINを低めにしてバイパス時と音量を揃え、そこからEQを動かしていくのが分かりやすい手順です。特に低域のブーストは効果が大きいため、チェーンの前段に置く場合は後続のドライブやアンプが飽和しすぎないよう、実際の演奏音量で少しずつ足していくと狙いどおりの結果になりやすいでしょう。
ORIGIN EFFECTSというブランド
ORIGIN EFFECTSは、2012年に設立された英国バッキンガム拠点のハンドメイド・エフェクターブランドです。創業者のサイモン・キーツ氏は、Vox、Focusrite、Trident Audioといった音響機器メーカーで設計に携わってきた電子エンジニア。自身もブルースやジャズを愛するプレイヤーです。
ブランドの原点は、彼が修理を手がけていたUREI 1176スタジオ・コンプレッサーでした。その音をギタリストの足元に持ち込むべく設計されたのがCali76であり、Lowell Georgeのスライドトーンを追ってCali76を2段直列にしたSlideRIGが続きます。スタジオ機材のクオリティをペダルボードへ——EQ DELUXEもまた、その一貫した思想の延長線上にある一台です。
電源に関する重要な注意点
EQ DELUXEはACアダプター駆動専用です(アダプターは別売、9V電池には非対応)。省スペース化と、低ノイズ化のための高電流設計を両立するために電池駆動が省かれています。仕様は9V DC センターマイナス、消費電流65mA。内部では電圧倍化回路により高い内部電圧を得ています。
フィルタリングが不十分な電源はノイズの原因になるため、ギターペダル用に設計されたレギュレート電源の使用が推奨されています。メーカーが挙げているのは、Voodoo Lab Pedal Powerシリーズ、CIOKS各種、Truetone 1 SPOT PROシリーズ、Strymon Zumaなど。9V以外の電圧では使用しないでください。
- パルテック・トリックとは何ですか?
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ローバンドのBOOSTとCUTを同時に使うテクニックです。両者のカーブがわずかにずれているため相殺されず、最低域が持ち上がりつつ、その上のモコつく帯域が削られた合成カーブが得られます。EQ DELUXEはBOOSTとCUTが独立ノブになっているため、この操作をそのまま行えます。
- 9V電池で動かせますか?
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いいえ、ACアダプター専用です。9V DC センターマイナス、消費電流65mAに対応したレギュレート電源をご用意ください。
- ベース専用のペダルですか?
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いいえ。ミッドバンドの周波数はベースとギターの双方を想定して選定されており、どちらでも使えます。ローエンドの制御力が高いためベースとの相性が語られやすい機種ですが、ギターで音像に重心を足す用途でも活用されています。
- オーディオインターフェースに直接つなげますか?
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ハイヘッドルーム設計のため、ラインレベル信号にも対応するとされています。アンプのエフェクトループやDI、ミキシングコンソールとの併用も想定された設計です。

