MXR エムエックスアール / M101 Phase90【フェイザー】

コードを鳴らしただけの音が、急に立体的になって、ゆっくり回りはじめる。あの感触がほしくなったとき、最初に名前が挙がるのがPhase 90です。ノブはSPEEDひとつきり。それでも踏んだ瞬間に、誰もが知っているあの揺れが立ち上がります。

1972年、MXRの第一号製品として世に出た一台。エンジニアのKeith Barrが、当時出回っていた大ぶりで作りの粗いフェイザーよりも信頼できて音の良いものを作れると考え、自ら設計しました。小さな筐体、しっかりした作り、洗練された揺れ。この三つがMXRの名を一気に広め、以来50年以上、フェイザーはこのペダルを基準に語られてきました。

4ステージのフェイズ回路が描く揺れは、SPEEDを絞ればコードの奥で空気がゆっくり動くような淡いモジュレーション。時計まわりに上げていくにつれてうねりが速くなり、最後は勢いよく吹き抜けるスウッシュへ。リードに乗せればきらめきが加わり、コードに重ねれば分厚い揺れが生まれます。迷ったらSPEEDを12時に置いて、そこから左右に振ってみてください。MXRが推奨する出発点もここです。

Phase 90の声を決めているのは、フェイズ段の出力を入力側に戻すフィードバックです。これがあることで山と谷の輪郭がくっきり立ち、軽い倍音の色づきをともなってスウッシュが前に出ます。歪みと重ねてもフェイズ感が奥に引っ込まず、バンドの中でちゃんと聴こえる。ロックのリフやリードでPhase 90が選ばれ続けるのは、この押し出しの強さによるところが大きいです。逆にフィードバックを持たないヴィンテージのスクリプト期のサウンドは、より穏やかでヘッドルームがあり、音の芯が見通しやすい方向。MXRはこの二つを別の声として扱っていて、後述する兄弟機ではスクリプト側も選べます。

使い道はギターだけではありません。ベース、キーボード、さらにボーカルにも十分使える帯域設計で、MXRが公式マニュアルに載せているサンプルセッティングも「CLASSIC 80’s ROCK」と「PSEUDO LESLIE」の二本立て。後者は擬似ロータリースピーカーの設定です。ローターがゆったり回っているときのあの感触をエレピやオルガンに足したい、という場面なら、この一台で届きます。

バイパスはTrue Hardwire。オン/オフは赤色LEDで確認でき、消費電流は5mAと小さいので9V電池でも長く使えます。電池交換は底板を外して行う昔ながらの方式。ECB003/ECB003EUといった9VアダプターやDC Brickなどのパワーサプライからの供給にも対応するので、ボードに組み込んでも運用は変わりません。

スペック

コントロールSPEED(エフェクトの速さ)/フットスイッチ(赤色LED付き)
回路4ステージ・アナログフェイザー
バイパスTrue Hardwire
入力インピーダンス1MΩ
出力インピーダンス10kΩ
公称入力レベル-20dBV
公称出力レベル-20dBV
ノイズフロア-96dBV(A特性)
消費電流5mA
電源9V電池/9V ACアダプター(ECB003・ECB003EU)/DC Brickなどのパワーサプライ

兄弟機との違い

MXRのフェイザーはPhase 90を起点に枝分かれしています。どの音を軸に置きたいかで選び分けてください。

  • M101 Phase 90:スタンダード。フィードバックによる押し出しの強い揺れが持ち味で、歪みと組み合わせる前提ならまずこれ。
  • Script Phase 90(CSP101SL):オリジナルのヘッドルームとクリアさを取り戻したCustom Shop仕様。スクリプトロゴとスムースなオレンジ塗装に、LEDとACジャックを備える。
  • Phase 95(M290):通常の約半分のサイズに、2ステージのPhase 45と4ステージのPhase 90の回路を同居。Scriptスイッチでフィードバックの有無も切り替えられる。
  • EVH Phase 90(EVH90):Eddie Van Halenとの共同開発機。ScriptスイッチでスクリプトとブロックのサウンドをワンタッチでLED。Frankensteinのストライプグラフィックをまとう。
  • ’74 Vintage Phase 90(CSP026):1974年製の実機を採寸して再現したハンドワイヤード仕様。選別抵抗とハンドマッチのFETで、オリジナルの滑らかな揺れを狙った一台。

よくある質問

電池だけでも運用できますか?

9V電池1本で動作します。消費電流が5mAと小さいため、電池運用でも持ちは良好です。交換は底板を外して行います。ECB003/ECB003EUなどの9VアダプターやDC Brickからの供給にも対応しています。

オフにしたときの音やせは起きますか?

バイパスはTrue Hardwireなので、オフ時は原音がそのまま通ります。ボードの常駐組として組み込みやすい仕様です。

ギター以外の楽器にも使えますか?

ベースやキーボード、ボーカルにも使えます。MXRのサンプルセッティングには擬似ロータリースピーカーの「PSEUDO LESLIE」も用意されていて、エレピやオルガンに回転系の揺れを足す用途にも向きます。

BRAND

MXR

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この記事を書いた人

13歳よりエレキギターを始め、学生時代はバンド活動に明け暮れる。音響機器やPAの基礎を専門学校で学びつつ、18歳頃にアルバイトとして始めた大手楽器店にて楽器の買い取り業務を担当。約10年間にわたり音楽機材の買取査定、販売・リペアなどに携わり、数多くのエフェクターに触れる。楽器店退職後、2009年よりエフェクター専門サイト『EFFECTOR COLLECTION BOX』の運営をスタート。

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