IK MultimediaのTONEXシリーズに、フロアタイプの上位機種としてTONEX Boardが加わりました。これまでコンパクトなペダル型で展開してきたTONEXの音を、2系統のシグナルパスと76種類のエフェクト、そして5インチのタッチスクリーンとともに一台にまとめた製品で、国内では2026年9月4日に発売されています。
AI Machine Modelingによるアンプとペダルの再現
TONEXの中核にあるのは、実機のアンプやキャビネット、ドライブ系ペダルの挙動を解析してモデル化するAI Machine Modeling技術です。ボリュームを絞れば歪みが整理され、ピッキングを強めれば音が押し出される、といった入力に対する反応まで含めて再現されるため、単に周波数特性を似せたシミュレーションとは手応えが異なります。
本体には、ヴィンテージ・アンプから現代的なハイゲイン・リグ、さらにオーバードライブやファズといったストンプ系まで、2,000種類のプレミアムTone Modelが収録されています。TONEX MAXのライブラリを土台に、TONEX ONE+ Signature Collectionからの選抜、TONEX Board専用に制作されたモデル、そして世界各国のTone Partnersが提供したキャプチャーが組み合わされており、すぐに演奏できる状態のファクトリープリセットも230以上が用意されています。うちギター用が120、追加のギター用が50以上、ベース用が50以上という内訳です。
2系統のシグナルパスで、リグ全体を一台に
TONEX Boardが従来のTONEXハードウェアと大きく異なるのは、独立した2本のシグナルパスを持つデュアル・シグナル・チェーン構造を採用している点です。1つのパスにアンプのTone Modelとストンプのモデルをそれぞれ1つずつ置けるため、パスを分岐させれば1プリセットで最大4つのTone Modelが同時に動作します。キャプチャーしたアンプ2台をステレオで鳴らし、その手前にキャプチャーしたドライブペダルを配置する、といった構成が、実機の組み合わせと同じ関係性のまま一台の中で完結します。
エフェクトは1チェーンあたり最大12スロットまで配置でき、スプリットとミックスのブロックを使ってパスを自由に分けたり合流させたりできます。デュアルアンプのステレオ・リグ、原音とエフェクト音を別系統で扱うウェット/ドライ構成、2本の楽器をそれぞれ独立したパスで処理するセットアップ、複雑なパラレル・チェーンといった、これまで複数の機材を組み合わせて実現していた構成が、ルーティングの設定だけで組み上がります。
9カテゴリー76種類のエフェクトとVIRキャビネット
内蔵エフェクトは9つのカテゴリーにまたがる76種類で、その内訳はAmpliTube由来が51種類、TONEXから引き継いだものが15種類、TONEX Board世代で新たに開発されたものが10種類となっています。ドライブ、モジュレーション、ピッチ、EQ、フィルター、リバーブ、ダイナミクス、ディレイ、ユーティリティと領域は幅広く、EP Tape EchoやFOX Phaser、Uni-Vといった定番機の系譜にあるモデルから、2本のディレイラインを独立して走らせるTwin Repeat、リピート音をピッチシフトさせるHarm Delay、演奏の合間にリピートが立ち上がるDuckといった新しい発想のものまで揃います。
キャビネットの処理にはVIR(Volumetric Impulse Response)技術が使われており、Custom IR Loaderモジュールを介して手持ちのIRデータを読み込むこともできます。Tone Modelに含まれるキャビネットをそのまま使うか、自分の選んだIRに差し替えるかを、プリセットごとに決められる仕組みです。
5インチタッチスクリーンと3つのパフォーマンスモード
操作の中心となるのは5インチの高解像度カラータッチスクリーンです。HOME、LIVE、SAVE、EDITの各ボタンで表示を切り替えながら、EDIT画面でTone Modelやエフェクトの追加・入れ替え、スプリットとミックスによるパラレル構成の作成、入出力の割り当てまでを本体だけで完結させられます。ノブは出力レベルを扱うVOLUME、リストのスクロールとスロット内の機材選択を兼ねるBROWSE、そして画面に表示されたパラメーターに対応するPARAMETERという役割分担になっており、階層をたどらずに目的のパラメーターへ手が届く設計です。
足元にはLEDインジケーターを備えたフットスイッチが4つ並びます。A/B/Cのスイッチでプリセットを直接呼び出すPresetモード、同じプリセット内で複数の設定をまとめて切り替えるSceneモード、プリセット内の各エフェクトを個別にオン・オフするStompモードの3つを、CTRLスイッチで巡回して選べます。BとCの同時踏みでチューナーが立ち上がり、CTRLの長押しでタップテンポに入るなど、演奏中に必要な機能へのアクセスも足元に集約されています。プリセットは12のセットリストに整理して最大1,440個まで保存でき、セットリスト単位でライブごとの構成を用意しておくといった使い方ができます。
現場を選ばない入出力とルーティング
出力はXLRのOUTPUT 1/L・2/RとTRSのOUTPUT 3/L・4/Rという2系統のステレオペアで構成され、それぞれをステレオペアとしてもデュアルモノとしても設定できます。キャビネットまで通した信号をXLRからPAやFRFRへ送りながら、キャビネットを通していない信号をTRSからギターアンプのリターンに返す、といった運用が同時に成立します。出力ペアごとにグローバルEQを持っているため、ハコの状況に合わせた最終的な調整も本体で行えます。
センド/リターンはステレオ1系統として使うほか、独立したモノ2系統に分けて2台の外部エフェクターをそれぞれ別の位置に挿入することもでき、チェーン内の好きな場所に配置できます。4ケーブルメソッドにも対応しているので、使い慣れたアンプのプリアンプ部を活かした接続も可能です。入力はモノ、ステレオ、2系統独立のいずれにも対応し、ギターやベースだけでなくキーボードやシンセ、グルーヴボックスを受けることもできます。このほか5ピンDINのMIDI IN/OUT、エクスプレッションペダルや外部コントローラーを接続できるEXT Control端子を2系統、3.5mmのヘッドフォン出力を備えます。
USB-C端子は現時点ではプリセットやTone Modelの転送、ファームウェア・アップデートに使用します。ダイレクト・モニタリングに対応した4in/2outのオーディオインターフェース機能は、今後のファームウェア・アップデートでの追加が予定されています。
ハードとソフトをつなぐTONEXエコシステム
TONEX Boardには、手持ちのアンプやペダル、リグ全体をキャプチャーするTONEX Modeler、Tone Modelの管理と演奏を行うTONEXソフトウェア(スタンドアローン/プラグイン)、Mac/PCと本体の間でTone Modelやプリセットをやり取りするTONEX Board Editorが付属します。加えて400以上のギア・モデルを収めたAmpliTube 5 MAXも同梱されており、ハードウェア単体で完結せず、制作環境と地続きで使える構成になっています。
オンラインのToneNETには、無料のTone Modelが4.6万種類以上、IK MultimediaやTone Partners、アーティスト、提携ブランドによる有償のプレミアムTone Modelが1.4万種類以上あり、2026年9月時点で合計6万種類を超えるライブラリから検索してダウンロードできます。ライブではTONEX Boardで鳴らし、レコーディングではDAW上のTONEXプラグインで同じTone Modelを使う、という往復ができる点は、機材を一本化したいプレイヤーにとって実際的な利点になります。既存のTONEXユーザーが手持ちのプリセットをインポートして作業を引き継ぐことも可能です。
主な仕様
| 同時使用Tone Model | 最大4(1シグナルパスあたりアンプ1+ストンプ1) |
| 収録Tone Model | プレミアムTone Model 2,000種類/ファクトリープリセット230以上 |
| 内蔵エフェクト | 76種類・9カテゴリー(AmpliTube由来51/TONEX由来15/新規10) |
| エフェクトスロット | 1チェーンあたり最大12 |
| キャビネット | VIR技術/Custom IR Loaderモジュール搭載 |
| プリセット容量 | 最大1,440(12セットリスト) |
| AD/DAコンバーター | 24bit/192kHz |
| 周波数特性 | 5Hz~24kHz |
| ダイナミックレンジ | 最大123dB |
| ディスプレイ | 5インチ高解像度カラータッチスクリーン |
| コントロール | エンコーダー/LEDインジケーター付きフットスイッチ×4 |
| 入力 | ステレオ入力(モノ/ステレオ/2系統独立に対応) |
| 出力 | XLR(1/L・2/R)×2、TRS(3/L・4/R)×2、ヘッドフォン出力(3.5mm)×1 |
| FXループ | ステレオ1系統、または独立モノ2系統/チェーン内の任意の位置に配置可能 |
| MIDI | 5ピンDIN IN/OUT |
| 外部コントロール | エクスプレッションペダル/EXT Control入力×2 |
| USB | USB-C(データ転送・ファームウェア更新/4in/2outオーディオインターフェース機能は今後のアップデートで対応予定) |
| 電源 | 9V センターマイナス(1.5A以上)/専用電源アダプター付属 |
| 外形寸法 | 235×184×72mm |
| 重量 | 1.6kg |
| 付属ソフトウェア | TONEX Modeler/TONEX Software/TONEX Board Editor/TONEX 2.0/AmpliTube 5 MAX |
よくある質問
- 手持ちのギターアンプと組み合わせて使えますか?
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4ケーブルメソッドに対応しているため、アンプのセンド/リターンを経由した接続が可能です。キャビネットを通していない信号をTRS出力からアンプのリターンへ送りつつ、キャビネットまで通した信号をXLR出力からPAへ送る、といった同時運用にも対応します。
- ベースでも使えますか?
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ベース用のファクトリープリセットが50以上収録されており、ベース向けに設計されたAmpLessやBass Wahといったエフェクトも含まれています。入力はキーボードやシンセ、グルーヴボックスにも対応します。
- 自分の機材のサウンドをキャプチャーできますか?
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付属のTONEX Modelerを使って、手持ちのアンプやペダル、リグ全体をキャプチャーしTone Modelとして作成できます。作成したTone ModelはTONEX Board Editorを介して本体へ転送します。
- パソコンのオーディオインターフェースとして使えますか?
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USB-C端子は現時点ではデータ転送とファームウェア・アップデートに使用します。ダイレクト・モニタリングに対応した4in/2outのオーディオインターフェース機能は、今後のファームウェア・アップデートで追加される予定です。
- これまで使っていたTONEXのプリセットは引き継げますか?
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既存のTONEXハードウェアやソフトウェアで作成したプリセットをTONEX Boardへインポートして、そのまま使用できます。
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