TS系のあの中域は好きだけれど、トーンノブがひとつしかないせいで「もう少し低音を締めたい」「あと少しだけ抜けが欲しい」というところで手が止まってしまう。バンドで音を合わせたときに限って、そのわずかな差が気になってくる——TS系のペダルを長く使っている方ほど、この感覚には覚えがあるのではないでしょうか。
KarDiaNの「C10H12N2O(セロトニン)」は、その物足りなさに応える答えのひとつです。TS系の旨みとされる中域のキャラクターはそのままに、BassとTrebleという2つのEQで音を追い込めるように設計されています。滋賀を拠点とする国産ハンドメイドブランドが手がける1台で、実売価格は3万円台後半が目安です。
TS系の旨みを残したまま、2つのEQで追い込める
製品名のC10H12N2Oは、神経伝達物質セロトニンの化学式です。KarDiaNは全モデルを化学式で名付けており、この命名がそのままブランドの個性にもなっています。
メーカーの説明によれば、このペダルは”Vintage Overdrive”が持つ豊かなミッドレンジとなめらかなピッキングレスポンスという2つの特徴を残しながら、より音抜けの良い現場的なEQバランスとワイルドなサウンドキャラクターを確立するために開発されたとのことです。
つまり、コピーやクローンではありません。TSというフォーマットに敬意を払いつつ、現場で使うための機能を足し込んだ、KarDiaN流の解釈というのが正確なところです。
なぜトーンノブひとつでは足りないのか
特徴的なミッドレンジを持つペダルは、通常ひとつのトーンノブで調整します。この構造はシンプルで扱いやすい反面、高域を削れば全体がこもり、上げれば耳に痛い成分まで一緒に持ち上がるという、いわば「一方向の妥協」を強いられる場面が出てきます。低域だけを少し整理したいと思っても、その手段がありません。
KarDiaNはこの点について、独特のキャラクターを残したまま現場に即したトーンスタックを実装するという、相反する2つのポイントを共存させる回路開発を行ったと説明しています。BassとTrebleの2バンドEQを備えながら、どちらを操作しても核となるミッドレンジのキャラクターが失われない——これが「魔法のミッドレンジ」と表現されている部分です。
アンプの相性、ギターのピックアップ、その日の箱の鳴り。現場で微調整が必要になる要素は毎回違います。2つのEQがあるということは、そのたびに「どこかを諦める」必要がなくなるということです。
ブースターとしても、単体のオーバードライブとしても
コントロールはVolume、Drive、Treble、Bassの4つ。Driveを絞ればアンプの歪みを押し出すブースターとして、上げていけば単体で成立するオーバードライブとして使えます。TS系ペダルの定番的な使い方はひと通りカバーできる設計です。
スイッチングはトゥルーバイパスで、消費電流は7mA。9VセンターマイナスのDCアダプターに加えて、006P型の9V電池でも駆動します。パワーサプライの空きが少ないボードでも組み込みやすい消費電流です。
滋賀発、1台ずつ表情が異なるハンドメイド
KarDiaNは、エンジニアとしての経験を持つビルダー・北田氏によるブランドです。筐体に施された錆加工のフィニッシュはブランドの代名詞的な存在で、ペダルボードの中でもひと目でそれと分かる佇まいがあります。
この塗装について、メーカーは「1台ずつ微妙に異なる」と明記しています。工業製品としての均一さではなく、手作業ゆえの個体差をそのまま個性として提示している姿勢が表れている部分です。価格は3万円台後半と決して安価ではありませんが、量産品とは前提が違うものだと考えると納得しやすいのではないでしょうか。
主な仕様
- 価格 : 3万円台後半(販売店により異なります)
- 入力インピーダンス : 1MΩ
- 出力インピーダンス : 10kΩ
- コントロール : Volume、Drive、Treble、Bass
- スイッチング方式 : トゥルーバイパス
- 接続端子 : 1/4インチ標準フォーン・ジャック×2(入力、出力)
- 電源方式 : 9VセンターマイナスDC電源(電池可 9V形006P型)
- 消費電流 : 7mA
- 寸法 : 幅(W)72mm、奥行き(D)121mm、高さ(H)55mm(フットスイッチやジャック等の突起物含む)
- 重量 : 288g
- 付属品 : 保証書
- JAN : 4589825520055
こんな方に向いています
- TS系の中域は気に入っているが、トーンノブ1つの調整幅に物足りなさを感じている方
- スタジオやライブで、その場に応じてEQを追い込みたい方
- ブースターと単体オーバードライブを1台で兼ねたい方
- 国産ハンドメイドブランドの質感や個体差に価値を感じる方
こんな方には向かないかもしれません
- ハイゲインなディストーションを1台で完結させたい方(TS系の範疇に収まる歪み量です)
- ヴィンテージTSの回路をそのまま再現したクローンを探している方
- 塗装の個体差を許容できない方(1台ずつ仕上がりが異なります)
- 2万円以下の価格帯で探している方
よくある質問
- 電池でも駆動しますか?
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はい。9VセンターマイナスのDCアダプターに加えて、9V形006P型の電池でも駆動します。消費電流は7mAです。
- Tube Screamerの代わりになりますか?
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回路をコピーしたクローンではないため、完全な代替とは異なります。メーカーはTS系の持つミッドレンジとピッキングレスポンスを残しつつ、2バンドEQで現場に即した調整を可能にしたと説明しています。同じ方向性を持ちながら、より調整幅の広い選択肢と考えるのが実態に近いでしょう。
- バイパス方式は何ですか?
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トゥルーバイパスです。オフ時は原音がそのまま通過します。
- サイズはボードに収まりますか?
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幅72mm、奥行き121mm、高さ55mm(突起物含む)、重量288gです。一般的なMXRサイズよりやや大きく、BOSSコンパクトに近い設置スペースを見込んでおくと安心です。
- 見た目の錆は不具合ではありませんか?
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意図的に施された錆加工フィニッシュで、KarDiaNの各モデルに共通するデザインです。メーカーは塗装仕上げが1台ずつ微妙に異なる旨を案内しています。
まとめ
TS系というカテゴリーは選択肢が飽和していますが、そのほとんどが「トーンノブ1つ」という前提を共有しています。C10H12N2O/セロトニンは、その前提そのものに手を入れた1台です。中域のキャラクターを保ったままBassとTrebleを動かせるという設計は、現場で音を作り込む機会が多い方ほど恩恵を感じやすいはずです。
ハンドメイドブランドの製品のため、量産品のように常時在庫が並ぶタイプではありません。検討される場合は、取扱店の在庫状況も併せて確認しておくとよいでしょう。

