ソロでは長めのフィードバック、バッキングでは短いスラップバック。曲中でその切り替えを足元だけで完結させたい——ND-1 Nova Delayは、その要求に一台で応えるために作られたディレイです。開発の出発点は、スタジオの定番として名を残したTC 2290 Dynamic Digital Delay。その考え方をペダルサイズに落とし込んだのが、このNova Delayです。
TC 2290譲りのダイナミックディレイ
Nova Delayの核になっているのが、TC 2290で初めて搭載されたダイナミックディレイです。入力レベルの変化に応じて、弾いている間はディレイ音のレベルを抑え、手を止めた瞬間にディレイを立ち上げる。フレーズ自体はクリアなまま輪郭を保ち、休符ではしっかり残響が広がる——ディレイを深くかけたいのに音の分離が悪くなる、という板挟みを回路側で解決する仕組みです。
6種類のステレオ・ディレイタイプ
ディレイタイプはTYPEボタンで6種類から選択でき、最大ディレイタイムはタイプごとに異なります。
- Delay Line:クセのない高品位なディレイ。最大2290ms
- Dynamic:演奏中はディレイ音を抑え、止めると持ち上がる。最大2290ms
- Reverse:入力をサンプリングして逆再生。最大1000ms
- Ping Pong:繰り返しが左右のチャンネルを交互に行き来する。最大2290ms
- Pan:繰り返し5回で定位が左100%から右100%へ移動。最大2290ms
- Slap-back:短いディレイに特化。最大300ms
Reverseはディレイタイムを1000ms付近まで伸ばし、MIXを100%・FEEDBACKを0にすると、本当に逆回転のテープを聴いているような効果になります。Slap-backは80〜140msあたりが50年代のロカビリー的な質感で、そこからさらに短くしてフィードバックを絞れば、70年代後半から80年代のファンクで聴けるあの歯切れのよさに近づきます。
演奏そのものでテンポを入力するAudio Tapping
Nova Delayを象徴する機能がAudio Tappingです。TAP TEMPOスイッチを踏み続けるとペダルの出力がミュートされ、その状態で楽器を弾くと、演奏したリズムからペダル側がテンポを検出します。手順はシンプルです。
- TAP TEMPOスイッチを踏んだまま保持する(出力がミュートされる)
- 短い4分音符を一定のテンポで弾く。TAP TEMPO LEDが検出したテンポを示す
- スイッチを離せば入力完了
出力がミュートされるため、客席やモニターにテンポ取りの音が出ることはありません。足でタップするとどうしても揺れる、あるいは両足が塞がっている場面でも、ピッキングの精度をそのままテンポに変換できます。もちろん、TAP TEMPOスイッチを4分音符で踏む一般的なタップ入力も可能で、こちらはエフェクトのオン/オフどちらの状態でも受け付けます。
サブディビジョンとデュアルディレイ
入力したテンポに対して、ディレイ音をどう割るかを決めるのがSUBDIVです。4分音符、付点8分音符、8分3連から選択でき、テンポを取り直さずにリズムの分割だけを切り替えられます。120BPMを4分音符でタップすればディレイタイムは500ms。そこからサブディビジョンを付点8分に回せば、バッキングのリズムにディレイが食い込んでくる、あのアルペジオ向きの質感になります。8分3連は、6/8のスローバラードで4拍目だけを弾くようなフレーズと相性がいい割り方です。
さらにデュアルディレイモードでは、左右の出力に別々のサブディビジョンを割り当てられます。組み合わせは3種類。
- 左:4分音符/右:付点8分音符
- 左:4分音符/右:8分3連
- 左:16分音符/右:付点8分音符
ディレイを2台並べてリズムを掛け合わせる、という組み方をしていた領域が、これで一台に収まります。左出力だけを接続した場合は、左右のディレイ音がサミングされて出力されます。
ディレイ音だけを揺らすモジュレーションとカラー
MOD STYLEボタンでは、ライト/ミディアム/ヘビーの3種類のモジュレーションを選べます。ポイントは、揺れがかかるのがディレイ音の繰り返しだけだということ。原音は揺れないので、ディレイ+コーラスを直列に繋いだ構成とは効果がまったく別物になります。テープエコー特有の、繰り返すほどピッチが滲んでいく感触はここで作れます。かかり具合はMOD LEVELノブで調整します。
COLORノブはディレイ音の質感を決めるフィルターで、テープドライブ寄りの丸さからアナログ、そしてデジタルのクリアさまで、一本のノブで連続的に動かせます。デジタルディレイは原音の再現性が高い反面、繰り返しが前に出すぎてバンドの中で混ざりにくいことがありますが、高域を落として馴染ませる調整がここで完結します。
9つのプリセットとマニュアルモード
P1からP9まで、9つのプリセットを保存できます。ノブの位置がそのまま音になるマニュアルモードとの行き来は、ON/OFFスイッチを2秒踏んで離すだけ。プリセットの送りも、TAP TEMPOを一度踏んでからON/OFFスイッチを連打するという手順で、足元から操作できます。この方法なら、マニュアルモードにいる状態でもプリセット番号だけを先に進めておき、実際の切り替えはプリセットモードに入った瞬間に行う、といった使い方が可能です。
3つしか使わないのに9つ全部を送るのが煩わしい場合は、スクロール範囲をP3までに制限することもできます。範囲外のプリセットが消えるわけではないので、セットリストに合わせて運用を変えられます。ディレイタイムについても、プリセットに保存した時間を使うか、タップで入力したグローバルテンポを使うかを選択可能。表示はミリ秒とBPMを切り替えられます(SUBDIVボタン長押し)。
そしてスピルオーバー。モードの切り替え時、プリセットの変更時、さらにバイパスに戻したときも、鳴っているディレイ音はそのまま減衰しきるまで残ります。長いフィードバックのディレイからスラップバックへ飛び移っても、前の残響が途中で断ち切られない。この設定はマニュアルモードと各プリセットで個別にオン/オフできます。
入力感度キャリブレーションとステレオ接続
Nova Delayには、AD/DAコンバーターを手持ちの機材の出力レベルに合わせ込むキャリブレーション機能があります。ヴィンテージ系の出力の小さいピックアップと、ハイパワーなハムバッカーでは入力レベルが大きく違いますし、前段にブースターを置いていればさらに変わります。手順は、前段のブースター類をすべてオンにした状態でMANUALボタンを長押しし、6つのディレイタイプLEDが点灯したら、いちばんダイナミクスの大きい音(歪みは圧縮されるので、多くの場合クリーンです)を数秒弾く。LEDが順に消えていき、変化が止まればキャリブレーション完了です。ダイナミックディレイの反応精度に直結する調整なので、導入時に一度は通しておきたいところです。
入出力は左右独立のステレオ仕様。モノラルならL端子だけを使い、アンプ2台のステレオ構成なら左右両方を使います。アンプのプリアンプ部で歪みを作っているなら、センド/リターンに挟み込む接続が本来の置き場所で、ここもステレオのまま通せます。
主な仕様
| ディレイタイプ | 6種類(Delay Line / Dynamic / Reverse / Ping Pong / Pan / Slap-back) |
| 最大ディレイタイム | 2290ms(Reverseは1000ms、Slap-backは300ms) |
| プリセット | ユーザープリセット9(P1〜P9)+マニュアルモード |
| モジュレーション | 3スタイル(ディレイ音のみに作用) |
| 入出力 | 1/4インチ ステレオ入力×2/ステレオ出力×2(モノセンス対応) |
| 入力インピーダンス | 1MΩ |
| 最大入出力レベル | 16dBu(12V電源時) |
| A/D変換 | 24bit、128倍オーバーサンプリング |
| スルーレイテンシー | 1.65ms |
| 電源 | 12V DC 300mA以上(専用ACアダプター) |
| 消費電力 | 5W未満 |
| 外形寸法 | 130×130×55mm |
| 重量 | 765g |
よくある質問
- 9Vのパワーサプライで駆動できますか?
-
できません。Nova Delayは12V DC 300mA以上を必要とします。付属のACアダプター、または同等の仕様を満たす電源を使用してください。一般的な9Vのパワーサプライのアウトからは駆動できないため、ボードに組み込む際は電源の確保を先に考えておく必要があります。
- モノラル環境でも使えますか?
-
使えます。入力・出力ともにL端子だけを接続すればモノラルで動作します。なお、デュアルディレイモードを使用していて左出力のみを接続している場合は、左右のディレイ音がサミングされて出力されます。
- プリセットは足元だけで切り替えられますか?
-
切り替えられます。TAP TEMPOスイッチを一度踏み、続けてON/OFFスイッチを繰り返し踏むことでP1〜P9を送れます。マニュアルモードとプリセットモードの行き来は、ON/OFFスイッチを2秒間踏んで離す操作です。
- ダイナミックディレイの反応が思ったほど出ません
-
入力感度のキャリブレーションを実行してください。前段のブースター類をオンにした状態でMANUALボタンを長押しし、6つのタイプLEDが点灯したら最も大きい音を数秒弾きます。LEDの変化が止まれば完了です。TAP TEMPOスイッチを踏み続ければ出力をミュートしたまま作業できます。
このエフェクターのみんなの記録
このエフェクターについてのひとことや、登録しているユーザーを見ることができます。

