JAM Pedals ジャムペダル / Pink Flow 【マルチエフェクト】

JAM Pedals ジャムペダル / Pink Flow 【マルチエフェクト】

あの浮遊感のあるギターサウンドを再現しようとすると、コンプ、オーバードライブ、ファズ、コーラス、フェイザー、アナログディレイ……と、気づけばボードがペダルとパッチケーブルで埋め尽くされています。電源の確保、ケーブルのノイズ、セッティングの手間、そして運搬時の重量。音を作る前の段階で消耗してしまう、という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

ギリシャのハンドメイドブランドJAM Pedalsが出した答えが、Pink Flowです。同社の人気ペダル8種類分の回路を1つの筐体に収め、パッチケーブルを一本も使わずに完結させたオールインワン・アナログペダルとなっています。

目次

Pink Flowとは:8つの名機を1台に収めたアナログマルチ

JAM Pedalsが「自社ペダルの組み合わせ提案」として設計したのがPink Flowです。ライブでもレコーディングでも、この1台で必要なものはひととおり揃う。長く付き合えるエフェクト群を1つの筐体にまとめる、という発想から生まれています。

最大の特徴は、回路が100%ハンドメイドのアナログであること。そしてエフェクト間の接続がすべて内部で完結しているため、パッチケーブルが一切不要である点です。セットアップと撤収の時間が短縮され、運搬重量も軽くなり、電源とオーディオケーブルの本数も最小限に抑えられます。

シグナルチェーン

信号は左から右へ、以下の順で流れます。

Seagull → Dyna-ssoR → Tubedreamer → Red Muck → FX Loop(Send / Return)→ WaterFall → Ripple → Delay Llama

ダイナミクスと歪みを前段に、空間・揺れものを後段に配置した、セオリー通りの並びです。その間にFXループが用意されているため、手持ちのペダルを最適な位置に割り込ませることもできます。

搭載エフェクト8種を1つずつ見ていく

1. Seagull|あの「鳥の鳴き声」を再現する特殊エフェクト

チェーンの先頭にあるのが、Pink Flow最大の個性ともいえるSeagullです。名前のとおり、「Echoes」で聴けるあのカモメの鳴き声のようなサウンドを生み出すためのセクションです。

このエフェクトだけは操作方法が独特で、ギター側の操作が前提になっています。手順は次のとおりです。

  • パッシブピックアップのギターを使用する
  • フットスイッチでエフェクトをオンにする
  • ギターのボリュームノブを全開にする
  • ギターのトーンポットを操作してピッチを変化させる

つまり音程のコントロールはギター側のトーンノブで行う、という設計です。アクティブピックアップでは意図した動作にならないため、この点だけは事前に確認しておきたいところです。

2. Dyna-ssoR|NOS CA3080を使ったコンプレッサー

JAM Pedalsの人気コンプレッサーです。Ross Compressor®とヴィンテージのDynaComp®を1つにできないか——その発想を、極めて希少なNOSのCA3080チップを使って形にしたのがこのDyna-ssoRです。

  • LVL:出力レベル
  • SUS:コンプレッションとサステインの量

3. Tubedreamer|JRC4558D搭載の808系オーバードライブ

JRC4558Dを搭載した808スタイルのオーバードライブです。中域の帯域設計を丁寧に追い込んであり、アンプを選ばず温かく豊かな歪みが得られる、というのがJAM Pedalsの狙いです。

  • LVL:出力レベル
  • TONE:トーン調整
  • GAIN:ゲイン量
  • トグルスイッチ:ハイゲイン/ローゲインのステージ切替

4. Red Muck|トライアングルとCivil War、2つのMuffの血統

ファズ/ディストーションセクション。’71年の「トライアングル」Muffと、後年の「Red Army / Civil War」Muffという2つの回路にインスパイアされた設計です。クリッピングの対称/非対称をトグルスイッチで切り替えられるため、Muff系の中でも守備範囲は広めです。

  • LVL:出力レベル
  • TONE:トーン調整
  • GAIN:ゲイン量
  • トグルスイッチ:対称/非対称クリッピングの切替

5. FX Loop(Send / Return)|手持ちのペダルを最適位置に

Red Muckの後、WaterFallの前に外部エフェクトを割り込ませられるループです。SENDが外部ペダルのインプットへ、RETURNがそのアウトプットを受け取ります。

歪みの後・モジュレーションの前という位置は、EQやブースター、あるいは別系統のディレイやリバーブを差し込むのに都合のよいポイントです。オールインワンでありながら拡張の余地を残している点は、長く使ううえで効いてきます。

6. WaterFall|BBDチップによるコーラス/ヴィブラート

BBDチップを採用したコーラス/ヴィブラートです。JAM Pedalsが「滑らかで艶やか」と表現する揺れが持ち味で、2つのトグルスイッチによってモードと効きの深さを切り替えられます。

  • DEPTH:エフェクトの深さ
  • SPEED:エフェクトの速さ
  • 左トグルスイッチ:控えめなモジュレーションと、より強いモジュレーションの切替
  • 右トグルスイッチ:コーラス/ヴィブラートの切替
  • 内部トリマー:モジュレーション最高速度の設定

7. Ripple|SPEEDノブ1つの2ステージ・フェイザー

2ステージ構成のフェイザーで、コントロールはSPEED1つのみ。JAM Pedalsが「滑らかで甘く、色付けの少ないフェイザー」と位置づけるとおり、原音を邪魔しない方向のキャラクターです。ノブが1つという潔さは、ライブ中の素早い調整にも向いています。

8. Delay Llama|最大600msのフルアナログBBDディレイ

チェーンの最後尾は、JAM Pedalsを代表するアナログディレイです。BBDチップによるフルアナログ回路で、最大ディレイタイムは600ms。タップテンポ、HOLD機能、そしてディレイタイムをコントロールするエクスプレッションペダル入力を備えています。

  • TAPフットスイッチ:リピートのテンポを設定。長押しでHOLD機能が作動
  • サブディビジョン・トグルスイッチ:3種類の音価でタップ可能
  • TIME:ディレイタイム
  • LVL:原音に対するリピートのミックスレベル
  • REPEATS:リピート回数
  • TRAILSトグルスイッチ:右がON、左がOFF。ONにするとエフェクトをオフにした後もリピートが自然に減衰
  • TAP入力:外部からリモートでテンポをコントロール
  • EXP入力:エクスプレッションペダルでディレイタイムをコントロール(互換性が確実なのは同社のEXP1)

内部トリマーで踏み込んだ調整ができる

ボトムカバーを外すと、青いPCB上に3つのトリマーが現れます。いずれも時計回りで増加する方向です。

  • WaterFallのスピード上限
  • Delay Llamaのリピート回数上限(HOLD機能の反応にも大きく影響します)
  • Delay Llamaのトレイル減衰量

特にDelay Llamaのリピート上限は、発振ぎみのサウンドを狙うか、実用的なリピートに留めるかで印象が変わる部分です。自分の使い方に合わせて一度追い込んでおくと、ライブ中の操作が楽になります。

バイパス方式とバッファーの切り替え方

Pink Flowはトゥルーバイパスとバッファードバイパスを選択できます。スイッチングはリレー方式のソフトクリックで、踏み心地は静かです。

バッファーはSendの前段に配置されており、切り替えはSeagullのフットスイッチを押しながら電源を入れることで行います。LEDの点滅回数が状態を示します。

  • 2回点滅:バッファーOFF(初期設定)
  • 3回点滅:バッファーON

点滅は状態が変化したときのみ発生します。長いケーブルを引き回すステージではバッファーON、ファズを前段に置くセッティングではOFF、といった使い分けが考えられます。

単品で8台揃えた場合と比べてどうか

Pink Flowのメーカー直販価格は899ユーロ(2026年8月時点)。決して安い買い物ではありませんが、判断材料として押さえておきたいのは、同社の単品ペダルが1台あたり259ユーロ前後という価格帯だという点です。Dyna-ssoR、Tubedreamer、Red Muck、WaterFall、Ripple、Delay Llamaを個別に揃えていくと、この価格を大きく上回ることになります。

加えて、単品構成では以下のコストと手間が別途発生します。

  • パッチケーブル7本分の費用と、接点が増えることによる音質・トラブルのリスク
  • 6〜8口を確保できるパワーサプライ
  • 全機種を並べられるサイズのペダルボードとケース
  • 毎回の配線とセッティングにかかる時間

逆に、単品を1台ずつ選ぶ自由度や、順番を入れ替える柔軟性は失われます。「この音の方向性で行く」と決まっている方にとっては合理的な選択肢、まだ機材を探索している段階の方には単品から入る方が向いている、と考えるとよいでしょう。

技術仕様

バイパストゥルーバイパス/バッファード(選択式)
スイッチングソフトクリック(リレー)スイッチング
電源9V DC センターマイナス(BOSSタイプ/別売)
最大消費電流285mA
寸法40 × 17 × 6.7 cm
重量1.75 kg

電源は最低200mA以上が条件で、最大消費電流は285mAです。パワーサプライを選ぶ際は、この数値に余裕を持たせた出力を確保してください。なお、木箱での出荷は現在は行われていません。

よくある質問

アクティブピックアップのギターでも使えますか?

Seagull以外のエフェクトは問題なく使用できます。ただしSeagullはパッシブピックアップでの動作を前提とした設計のため、アクティブ機では意図した効果が得られない可能性があります。

パワーサプライはどれくらいの出力が必要ですか?

9V DC センターマイナスで最低200mA、最大消費電流は285mAです。単一ポートで300mA以上を安定供給できる出力を選ぶと安心です。電池駆動には対応していません。

一般的なペダルボードに載りますか?

寸法は40 × 17 × 6.7 cm、重量1.75kgです。横幅40cmは中型ボードのサイズに近いため、Pink Flowを主役に据えて空きスペースへ数台を足す、という構成が現実的です。

エクスプレッションペダルは何が使えますか?

Delay LlamaのEXP入力でディレイタイムをコントロールできます。互換性が確実なのは同社のEXP1です。

外部のディレイやリバーブを組み合わせられますか?

可能です。Red Muckの後、WaterFallの前に挿入できるSend / ReturnのFXループが用意されているため、手持ちのペダルを歪みの後段に配置できます。

まとめ

Pink Flowは、JAM Pedalsの定番ペダル8種類分の回路を1台に凝縮し、パッチケーブルなしで完結させたフルアナログのマルチペダルです。コンプからファズ、コーラス、フェイザー、600msのアナログディレイまでを一本のシグナルチェーンに収め、FXループで拡張の余地も残しています。

方向性の定まったサウンドを、最小限の機材と手間で毎回確実に再現したい。そんな方にとって、この1台がボードの設計そのものを変えてくれるはずです。

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この記事を書いた人

13歳よりエレキギターを始め、学生時代はバンド活動に明け暮れる。音響機器やPAの基礎を専門学校で学びつつ、18歳頃にアルバイトとして始めた大手楽器店にて楽器の買い取り業務を担当。約10年間にわたり音楽機材の買取査定、販売・リペアなどに携わり、数多くのエフェクターに触れる。楽器店退職後、2009年よりエフェクター専門サイト『EFFECTOR COLLECTION BOX』の運営をスタート。

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