ゲルマニウムファズの粒立ちと、ボリュームを絞ったときのクリーンアップは捨てがたい。ただ、ステージの温度や湿度でキャラクターが変わってしまうあの不安定さを思うと、次の一台には二の足を踏んでしまう——ファズを本気で使い込んでいる人ほど、この悩みは深いはずです。
JAM Pedals Fuzz Phrase Siは、同社のゲルマニウム機で積み上げてきた音作りを、BC107シリコントランジスタで組み直した2ノブ・ファズです。シリコンならではの動作の安定感を持ちながら、ギター側のボリューム操作への追従性を残すことを狙って設計されています。
ここでは公式スペックをもとに、Fuzz Phrase Siがどんなペダルなのか、そしてゲルマニウム版とどう選び分ければいいのかを整理していきます。
JAM Pedals Fuzz Phrase Siとはどんなファズなのか
先代機のゲルマニウムをBC107シリコンに置き換えた一台
JAM Pedalsには、Fuzz Phraseというゲルマニウムファズの系譜があります。中でも限定モデルのFuzz Phrase Ltd.は、入手困難なCV7003ゲルマニウムトランジスタを使った一台として知られてきました。
Fuzz Phrase Siは、その先代機からインスピレーションを受けて生まれたモデルです。メーカーによれば、Fuzz Phrase Ltd.が持つリッチな倍音とダイナミックなレスポンスを、シリコンという別の素材で捉え直すことがこのペダルのテーマだったとされています。
回路構成としては、2ノブのシンプルなファズフェイス系。BC107はファズフェイスのシリコン期にも使われてきたトランジスタで、その意味では正統な選択と言えます。
ギリシャ・アテネのハンドメイド、アートワークも手描き
JAM Pedalsはギリシャ・アテネを拠点とするハンドメイドブランドです。筐体のアートワークは1台ずつ手描きされるため、同じモデルでも個体ごとに表情が微妙に異なります。
Fuzz Phrase Siには標準デザインのほかに、公式のカスタムアートワークモデルも複数展開されています。ペダルボードの見た目にこだわりたい人にとっては、そこも選ぶ楽しみのひとつです。
Fuzz Phrase Siの特徴
入念なテストの末に選ばれたBC107
Fuzz Phrase Siに搭載されているのはBC107シリコントランジスタです。公式の説明では、さまざまなシリコントランジスタを入念にテストした結果、BC107が最終的な選択になったとされています。
重要なのは、トランジスタを差し替えただけではないという点です。JAM Pedalsは選ばれたBC107に合わせて回路そのものを微調整しており、Fuzz Phraseというシリーズが持つ性格をシリコンでも保つことを目指したと説明しています。
ボリュームを絞ったときのクリーンアップ
ファズフェイス系のペダルを選ぶうえで、多くの人がいちばん気にするのがここでしょう。ギター側のボリュームを絞ったときに、ただ音量が下がるだけなのか、それとも歪みが解けてクリーンに近づいてくれるのか。
メーカーはFuzz Phrase Siについて、このクリーンアップ性能がヴィンテージのゲルマニウムファズ回路に匹敵する水準にあるとしています。ゲイン量をペダルの上ではなくギターのボリュームノブで決めていくタイプの弾き方をする人にとっては、注目しておきたい部分です。
全音域にわたるロングサステイン
もうひとつメーカーが挙げているのが、音域全体にわたって伸びるサステインです。ファズは低音弦と高音弦でサステインの長さが揃わないことがありますが、Fuzz Phrase Siは求められるトーンキャラクターとサステイン、そしてクリーンアップ性能のバランスを取ることを狙って作られていると説明されています。
なお、これらの音質に関する記述はいずれもメーカーによるものです。実際の鳴り方はギター・アンプ・弾き方によって変わるため、可能であれば試奏したうえで判断することをおすすめします。
2ノブ+内部トリマーというシンプルな操作系
コントロールは表面にLevelとGainの2つだけ。加えて筐体内部にバイアス調整用のトリマーが備わっています。
- Level:出力ボリュームを調整します。単なる音量つまみではなく、公式によればここで音色のニュアンスも変わってきます
- Gain:ゲイン量を設定します
- 内部トリマー:トランジスタのバイアスを設定します(工場出荷時に4.5Vへ設定済み)
内部トリマーは工場で最適値に合わせられているため、基本的にはそのまま使って問題ありません。あえて触るとすれば、もう少しゲートのかかったブチブチした質感が欲しい、といった明確な狙いがあるときです。
セッティングの目安
2ノブなので迷う要素は多くありませんが、出発点として次のような組み合わせが考えられます。
| 狙い | Level | Gain | ギター側ボリューム |
|---|---|---|---|
| 王道のファズトーン | 12〜2時 | フル | 10 |
| 歪みを抑えたクランチ | 12〜2時 | フル | 6〜7 |
| ブースター的な使い方 | 3時以上 | 9〜11時 | 10 |
ファズフェイス系はGainを絞るよりも、Gainを上げたままギター側のボリュームで歪み量をコントロールしたほうが持ち味が出やすい回路です。まずはGainフルから始めて、右手とボリュームノブで探っていくのが近道になります。
ゲルマニウム版(Fuzz Phrase Ltd.)との違い
「Siとゲルマニウム、どちらを買うべきか」で迷っている人のために、両者の違いを整理しておきます。
| 項目 | Fuzz Phrase Si | Fuzz Phrase Ltd. |
|---|---|---|
| トランジスタ | BC107(シリコン) | CV7003(ゲルマニウム) |
| 供給の安定性 | 安定して入手可能 | CV7003の在庫に依存する限定生産 |
| 筐体・配線 | 通常筐体 | ポイント・トゥ・ポイント配線+レザー仕様 |
| 価格帯 | 4万円前後 | 9万円台 |
いちばん大きな違いは素材そのものです。ゲルマニウムトランジスタは温度変化の影響を受けやすいという性質が古くから知られており、季節や会場によって音の出方が動くことがあります。シリコンはその点で安定しているため、ライブで持ち出す機会が多い人にとっては現実的な選択肢になります。
もうひとつ見逃せないのが電源まわりです。Fuzz Phrase Siはセンターマイナスの一般的な9Vアダプターに対応しているため、手持ちのパワーサプライをそのまま使えます。ゲルマニウムファズでは電源の取り回しに制約が出るモデルもあることを考えると、ボードへの組み込みやすさは明確なアドバンテージです。
一方で、ゲルマニウムでしか出ない独特の柔らかさや倍音の複雑さに価値を感じるのであれば、価格差を払ってでもLtd.を選ぶ理由は十分にあります。安定性を取るか、素材の個性を取るか——この軸で考えるのが分かりやすいでしょう。
Fuzz Phrase Siが向いている人・向いていない人
向いている人
- ギターのボリューム操作で歪み量をコントロールする弾き方をしたい人
- ヴィンテージ系ファズの質感を、動作の安定した状態で使いたい人
- シングルコイル+クランチ気味のチューブアンプという組み合わせを軸にしている人
- ノブが少なく、迷わず音が決まるペダルを求めている人
向いていない人
- トーンつまみで積極的に音を作り込みたい人(Fuzz Phrase SiにEQコントロールはありません)
- ボードの手前にバッファードバイパスのペダルやワウを常時置いている人。ファズフェイス系の回路は入力インピーダンスが低く、手前にバッファが入ると本来の反応が得られにくくなります
- モダンなハイゲインディストーションのようなタイトさを求めている人
特に2つ目は導入後につまずきやすいポイントです。ファズは接続順の影響を強く受けるため、購入前に自分のボードの並びを一度確認しておくと安心できます。
製品仕様
| バイパス | トゥルー・バイパス |
| 電源 | 9V電池/9V DCアダプター(センターマイナス) |
| 消費電流 | 3mA |
| 寸法 | 7.5 × 12 × 5.6cm(ジャック・ポット類を含む) |
| 重量 | 250g |
| コントロール | Level、Gain、内部バイアストリマー |
取扱説明書はJAM Pedals公式サイトの製品ページからPDFで入手できます。なお価格は為替や流通状況によって変動しますので、購入前に最新の販売価格をご確認ください。
よくある質問
- 他のペダルとパワーサプライを共用できますか?
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Fuzz Phrase Siはセンターマイナスの一般的な9V DCアダプターに対応しているため、通常のパワーサプライから電源を取れます。消費電流も3mAと非常に小さく、電源容量で困る場面はまず考えにくいでしょう。ノイズが気になる場合はアイソレート出力を割り当ててください。
- ワウやバッファードバイパスのペダルの後ろに置いても大丈夫ですか?
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ファズフェイス系の回路は入力インピーダンスが低いため、手前にバッファやワウが入ると本来のニュアンスが出にくくなる傾向があります。基本はギターの直後、ボードのいちばん手前に置くのがおすすめです。どうしても順番を動かせない場合は、実際に音を出して許容できるか確かめてから判断してください。
- 内部トリマーは調整したほうがいいですか?
-
工場出荷時に4.5Vへ設定されているため、そのまま使って問題ありません。触るとすれば、より荒くゲートのかかった質感が欲しいなど、明確な狙いがある場合に限られます。調整する際は元の位置を控えておくと、いつでも戻せます。
- ゲルマニウム版とどちらを選ぶべきですか?
-
ライブでの持ち出しが多く、季節や会場によらず同じ音で鳴ってほしいならSi版が現実的です。逆に、ゲルマニウム特有の質感そのものに価値を感じていて、レコーディング中心で使うのであればゲルマニウム版を検討する意味があります。価格差も倍以上あるため、使用シーンから逆算すると判断しやすくなります。
まとめ
JAM Pedals Fuzz Phrase Siは、ゲルマニウムファズの表現力に惹かれつつ、その気難しさに躊躇していた人に向けた一台です。BC107というシリコントランジスタを軸に、ギター側のボリューム操作へ応えるレスポンスを残しながら、電源まわりや動作の安定性といった実用面のハードルを下げています。
ノブが2つしかないぶん、音を決めるのは最終的に右手とボリュームノブです。ペダルで作り込むのではなく、弾き方で音が変わっていく感覚を味わいたいなら、候補に入れて損はありません。

