アンプの鳴りは気に入っているのに、歪ませた瞬間になんだか別の楽器になってしまう。ペダルを踏むと中域が持ち上がって、弾いているギターの個性がどこかへ消えてしまう。トランスペアレント系と呼ばれるオーバードライブを探しはじめる方の多くが、こんなもどかしさを抱えています。
JHS PedalsのMorning Glory V4は、まさにその悩みに正面から答えるために作られた一台です。2009年の登場以来、JHSのラインナップで最も広く知られ、最も多くの賞と評価を集めてきたオーバードライブが、4代目でどう進化したのか。コントロールの使い方から別売Red Remoteとの組み合わせまで、購入前に知っておきたいポイントをまとめています。
Morning Glory V4はどんなオーバードライブなのか
「足さない」ことを目指したトランスペアレント系
市場に出回るブティック系オーバードライブの多くは、Tubescreamer系回路をベースにしています。あの独特の中域の押し出しはロックやブルースで強力な武器になりますが、その一方でギターとアンプが元々持っているキャラクターを塗り替えてしまう側面もあります。
JHSはMorning Gloryを、そうした強いミッドレンジの強調やトーンキャラクターの変更を加えず、ギターとアンプのサウンドをそのまま一段引き上げる目的で開発したと説明しています。同社はこのペダルについて「最も透明感のある(トランスペアレントな)オーバードライブのひとつ」を目指したとしており、クリーントーンに軽いザラつきを足したいとき、クランチをさらに太いサステインへ押し上げたいとき、どちらにも対応できる設計です。
ルーツはMarshall Bluesbreaker
国内正規代理店の製品説明によれば、Morning Gloryはオリジナルのマーシャル・ブルースブレイカーをベースに、長年にわたる製作とライブでの使用、改良を重ねてたどり着いたトーンシェイピングツールとされています。BB系特有の穏やかでコンプ感の少ない歪み方が好きな方にとっては、系譜として納得のいく一台といえるでしょう。
タッチレスポンスを損なわない設計
JHSは、ストラトキャスターでもレスポールでも、Morning Gloryはピッキングのタッチに敏感に反応し、楽器本来のフィーリングを100%そのまま残すと説明しています。ピッキングの強弱で歪み量をコントロールする弾き方をされる方や、ボリュームポットの操作でクリーンとクランチを行き来したい方には相性のよいタイプです。
4つのコントロールと2つのスイッチ
ノブは3つ、スイッチが2つというシンプルな構成です。それぞれの役割を押さえておけば、セッティングで迷うことはほとんどありません。
VOLUME・DRIVE・TONE
| コントロール | 役割 |
|---|---|
| VOLUME | 全体の出力レベルを決めるマスターコントロール。V4ではV3と比べてヘッドルームが2倍に拡大しており、フルレンジのブースターとしても余裕をもって使えます |
| DRIVE | 時計回りで歪み量が増加。上げていくとトレブルもわずかに強調されます。絞りきればほぼクリーン、上げきればロックンロールまでカバーする幅の広さです |
| TONE | ベーシックなハイパスフィルターとして動作。時計回りでブライトに、反時計回りでダークになります |
まずはVOLUMEを12時、DRIVEを9時前後、TONEを12時あたりから始めて、アンプのクリーンに軽く粒立ちが乗る位置を探すのが分かりやすい入り口です。ブースター的に使いたい場合はDRIVEを絞ってVOLUMEを上げていきます。
GAINトグルスイッチ ― もう一台分の歪みを内蔵
V4で新たに加わった目玉が、このGAINトグルスイッチです。上に倒すとブーストモードが起動し、全体によりパワフルでローエンドの厚いサウンドへ切り替わります。DRIVEノブを高めに設定した状態で使えば、歴代のMorning Gloryにはなかったハイゲインな領域にも踏み込めるとJHSは説明しています。
状態はステータスLEDの色で判別でき、通常モードでは青、ブーストモードに切り替わると赤に変化します。バッキング用の軽いクランチとソロ用の押し出しの強い歪み、2つの音色を1台に持たせられるわけです。
ブライト(HI)カットスイッチ ― 明るすぎるリグへの保険
もうひとつのスイッチが、筐体側面に配置されたブライトカット・トグルです。もともとV3ではフロント面に搭載されていましたが、V4ではその場所をブースト回路に譲る形で側面へ移設されました。
効果はシンプルで、高域を抑える方向に働きます。トレブリーなアンプやシングルコイル主体のリグで耳に痛い成分が出てしまうとき、あるいはGAINトグルを併用して歪みを深くしたときに、サウンドを落ち着かせる調整用として有効です。演奏中に頻繁に触るものではないため、側面配置はむしろ誤操作を防ぐ合理的なレイアウトといえます。
別売Red Remoteで足元から歪みを切り替える
GAINトグルは手で操作するスイッチのため、そのままでは演奏中の切り替えができません。そこで用意されているのが、本体右側面にある「Remote Gain」ジャックです。ここに別売のJHS Red Remoteを接続すれば、ブーストモードのオン・オフを足元でコントロールできるようになります。
接続にはモノラルプラグとラッチタイプのフットスイッチを使用します。国内代理店の説明によれば、このジャックにプラグが接続されている間は本体側のGAINトグルが無効となり、フットスイッチ側の操作が優先される仕様です。
JHS自身も、この組み合わせを「ペダルボードに優しいパッケージでMorning Gloryを2台持っているようなもの」と表現しています。バッキングとソロで歪み量を切り替えたい方は、本体と合わせて導入を検討する価値があります。
Morning Glory V4が向いている人・向いていない人
向いている人
- アンプの鳴りやギターの個性を活かしたまま歪ませたい方
- ピッキングやボリューム操作でニュアンスをつけるプレイスタイルの方
- クリーンブーストから軽いクランチまでを1台でまかないたい方
- ボードのスペースを増やさずに歪みを2種類使い分けたい方
- Bluesbreaker系の穏やかな歪み方が好みの方
向いていない人
- 踏んだ瞬間に音色が劇的に変わるタイプを求めている方
- 単体でメタル系の高いゲイン量を出したい方
- 中域を強く押し出すTubescreamer的なキャラクターが目当ての方
- 電池駆動でシンプルに使いたい方(本機は電池に対応していません)
実売価格は3万円台が中心で、コンパクトエフェクターとしては安価な部類ではありません。ただし「アンプに足りないニュアンスを補う」という性格上、機材を買い替えずに手持ちのリグを引き上げる選択肢として考えると、費用対効果の見え方は変わってきます。
※価格は時期や販売店により変動します。最新の情報は各販売ページでご確認ください。
Morning Gloryのバージョン履歴
中古で探す際にどの世代かを見分けたい方のために、JHS公式が公開しているバージョン履歴をまとめます。
| 世代 | 特徴 |
|---|---|
| V1 | 大きめの白い筐体にブラックのノブ。ブライトカットスイッチとロゴなし |
| V2 | 現行の小さめの筐体へ変更。ゴールドのパウダーコート塗装を採用 |
| V3 | ブライトカット・トグルスイッチを追加 |
| V4 | ヘッドルームが2倍に。GAINトグルスイッチを追加し、Red Remoteシステムに対応 |
見た目でいちばん分かりやすいのは、フロント面にブライトカットスイッチがあるかどうかです。フロントにトグルがあればV3、フロントのトグルがGAINで側面にブライトカットがあればV4と判断できます。
製品仕様
| タイプ | オーバードライブ |
| コントロール | VOLUME、DRIVE、TONE、GAINトグルスイッチ、ブライトカット・トグルスイッチ |
| 入出力 | IN、OUT、Remote Gainジャック |
| 電源 | 9V DC センターマイナス(電池駆動不可) |
| 消費電流 | 43mA |
| サイズ | 約66mm × 122mm × 41mm(2.6インチ × 4.8インチ × 1.6インチ) |
| 生産国 | アメリカ(カンザスシティ) |
※消費電流とサイズはJHS Pedals公式サイトの表記に基づいています。流通情報の中には旧世代の数値が残っている場合がありますのでご注意ください。
よくある質問
- 電池で駆動できますか?
-
電池には対応していません。9V DCセンターマイナスのアダプター、またはパワーサプライからの給電が必要です。
- どのくらいの容量のパワーサプライが必要ですか?
-
JHS公式の表記では消費電流は43mAです。一般的なパワーサプライの9V出力1系統で十分にまかなえる範囲です。
- Red Remoteは必ず必要ですか?
-
必須ではありません。Red Remoteは別売で、GAINトグルを足元から操作したい場合に追加するアクセサリーです。手で切り替える運用であれば本体だけで問題なく使えます。
- V3から買い替える価値はありますか?
-
基本のトーンキャラクターは共通ですが、V4ではヘッドルームが2倍になり、ブーストモードとRed Remote対応が加わっています。ブースターとしての用途を重視する方や、歪み量を2段階で切り替えたい方にとっては明確な違いがあります。
- ハイゲインアンプの前段でも使えますか?
-
使用できますが、原音の質感をそのまま押し出す性格のため、すでに歪んでいるアンプでは変化が分かりにくくなる傾向があります。クリーン〜クランチのアンプと組み合わせたときに持ち味が出やすいタイプです。
まとめ
Morning Glory V4は、手持ちのギターとアンプの持ち味を消さずに、足りないニュアンスだけを補ってくれるタイプのオーバードライブです。V4で加わったGAINトグルによって歪み量を2段階で使い分けられるようになり、1台でカバーできる範囲はさらに広がりました。
アンプの音は気に入っているのに、歪ませると別物になってしまう。そんな状態から抜け出したい方にとって、有力な候補になる一台です。

