コンプレッサーは必要だと分かっているものの、かけると音の芯が痩せてしまう。あるいは粒は揃うけれど、そのぶんアンプの前で作り込んだキャラクターまで平坦になってしまう。そんな理由でボードから外してしまった方も多いのではないでしょうか。
Diamond Pedals の COMP/EQ は、その「潰したあとの音をどう整えるか」という部分にEQセクションを持たせたコンプレッサーです。黄色い筐体でおなじみの名機 CPR-1 の回路構造を受け継ぎながら、中音域のコントロールとアタックの切り替えを新たに搭載しています。
Diamond Pedals COMP/EQ とは
COMP/EQ は、カナダ・モントリオールで製造されるオプティカルコンプレッサーです。ブランドを象徴する黄色いコンプレッサー「CPR-1」の回路アーキテクチャを維持したまま、レンジと機能性を拡張した後継モデルにあたります。
ここで補足しておきたいのが、ブランドそのものの経緯です。Diamond Pedals は2021年に一度活動の停止が伝えられましたが、同じモントリオールに拠点を置く SolidGoldFX が2023年に親会社から Diamond Pedals を取得し、ブランドが継続されることになりました。両ブランドは同じ工房で製造されながら、それぞれ独立したブランドとして維持される方針が公式にアナウンスされています。
つまり COMP/EQ は、名機のリイシューでも別物のリニューアルでもなく、オリジナルの設計思想を引き継いだうえで現代的な部品と製造工程に置き換えられたモデル、という位置づけになります。
COMP/EQ の3つの特徴
1. カスタム仕様のオプトアイソレーターによる光学式コンプレッション
コンプレッションの心臓部には、Diamond が独自に仕様を指定した米国製のオプトアイソレーターが採用されています。メーカーは、この光学式回路によるコンプレッションを「絹のように滑らかで自然」と表現しています。
光学式コンプは、素子の応答特性そのものがアタックとリリースのカーブを決めるため、VCA方式のように数値でカチッと制御するタイプとは質感が異なります。掛かり始めが穏やかで、深めに設定してもポンピング感が出にくいのが方式としての一般的な傾向です。
2. TILT と MIDS による2系統のEQセクション
COMP/EQ の名前の後半を担うのが、このEQセクションです。TILT は中音域を支点としたシーソー型のコントロールで、右に回すと高域がブーストされて低域がカットされ、左に回すとその逆に動きます。1つのノブで音色の重心を前後に振れるため、ギターの持ち替えやアンプの違いに素早く追従できます。
もう一方の MIDS は、CPR-1 にはなかった新設計のコントロールです。800Hz を中心に ±10dB という広い可変幅を持ち、TILT では触れない中音域そのものを持ち上げたり削ったりできます。TILT が ±6dB であることを考えると、MIDS はかなり積極的に効くコントロールだといえます。
3. ATTACK スイッチによる2つのコンプレッションキャラクター
ATTACK スイッチは、コンプレッサーの応答速度を2段階で切り替えるものです。片側は Diamond の代名詞である超スナッピーなクイックレスポンス、もう片側はレスポンスが緩やかで、潰し感の少ない透明なコンプレッションとサステインの伸びが得られる設定になります。
ファンクのカッティングのように粒立ちを立たせたい場面と、クリーントーンの最終仕上げとしてうっすら掛けたい場面。この2つを1台で行き来できるのが、COMP/EQ が「常時オン」で語られる理由です。
なお、スイッチの上下と挙動の対応については海外の資料と国内の資料で記載が分かれています。実機のマニュアルで確認されることをおすすめします。
コントロールの役割
| コントロール | 役割 |
|---|---|
| COMP | コンプレッションの深さを調整 |
| VOLUME | 出力レベルを調整。ブースターとしての使用時にも使用 |
| TILT | 800Hz を支点に高域と低域をシーソー状に増減(±6dB) |
| MIDS | 800Hz を中心とした中音域のブースト/カット(±10dB) |
| ATTACK スイッチ | クイック/スロー、2つのアタックレスポンスを切り替え |
セッティング例
常時オンのトーンシェイパーとして
COMP を9〜10時あたりの浅めに設定し、ATTACK はスロー側へ。TILT と MIDS はセンターを基準に、使用するギターの弱点を補う方向へわずかに振ります。ハムバッカーでこもりがちなら TILT を少し右へ、シングルコイルで線が細く感じるなら MIDS を少し右へ、といった調整です。コンプとしての存在を主張させず、EQで音の重心だけを整える使い方になります。
カッティング・ファンク向け
ATTACK をクイック側にして、COMP を12時前後まで上げます。TILT を右に振って高域を持ち上げると、ピッキングのアタックが前に出て、リズムの輪郭がはっきりします。MIDS を軽くカットすると、バンドの中でカッティングが抜けやすくなります。
ソロ用のブースターとして
COMP を低めに抑えたまま VOLUME を上げ、MIDS をブースト方向へ振ります。歪みペダルの後段に置くことで、歪みのキャラクターを変えずに音量と中域だけを押し出すことができます。
接続位置で変わる使い方
COMP/EQ はチェーン内のどこに置くかで役割が変わります。メーカーが挙げている使い方は次の3通りです。
- チェーンの最前段:ギター本来のダイナミクスに対して掛ける、オーソドックスなコンプレッサーとしての使い方
- チェーンの最後段:ボード全体の出力をまとめるリミッターとしての使い方
- 歪み系の後段:COMP を低めに設定し、ソロ用のブースターとしての使い方
特に最後段に置く使い方は、EQセクションを持つ COMP/EQ ならではです。歪みもモジュレーションも通したうえで、最後に全体の帯域バランスと音量を整える。メーカーが「エフェクトチェーンのマスタリング」と表現しているのは、この運用を指しています。
スペック
| インプットインピーダンス | 1MΩ 以上 |
| アウトプットインピーダンス | 10kΩ 以下 |
| バイパス方式 | リレー式トゥルーバイパス |
| 電源 | 9V〜18V DC センターマイナス/2.1mm |
| 消費電流 | 22mA(9V 時) |
| TILT EQ 支点周波数 | 800Hz ±6dB |
| MID EQ 中心周波数 | 800Hz ±10dB |
| サイズ | 122 × 66.98 × 39.64mm |
| 重量 | 280g |
| ジャック | トップマウント |
| 生産国 | カナダ |
オーディオパスは Burr-Brown 製オペアンプを用いたオールアナログ構成です。ジャックがトップマウントであること、筐体が省スペース設計であることから、ボードの奥行きを取りにくい環境でも組み込みやすくなっています。
BASS COMP/EQ との違い
Diamond Pedals には、ベース用として BASS COMP/EQ も用意されています。名前が似ているため混同されやすいのですが、こちらはオリジナルの “BCP-1” の回路構造を継承したモデルで、ベース帯域に合わせたチューニングが施されています。
| COMP/EQ | BASS COMP/EQ | |
|---|---|---|
| ベースとなる回路 | CPR-1 | BCP-1 |
| アタック切り替え | ATTACK スイッチ(2段階) | ― |
| TILT の支点周波数 | 固定 | TILT FREQ スイッチで3段階に切り替え |
| 主な対象 | ギター | ベース |
ギターで使うのであれば COMP/EQ、ベースが主軸であれば BASS COMP/EQ を選ぶのが基本になります。
よくある質問
- 電池では駆動しますか?
-
電源はDCアダプターによる供給が前提です。9V〜18V DC、センターマイナス、2.1mmのプラグに対応しており、消費電流は9V時で22mAとなっています。
- 18Vで動かすとどう変わりますか?
-
メーカーは9V〜18Vの範囲での動作を明記しています。一般に電圧を上げるとヘッドルームが広がる傾向がありますが、COMP/EQ における具体的な変化についてメーカーは言及していません。指定範囲外の電源を使用すると保証の対象外となる点にはご注意ください。
- ギター用のCOMP/EQをベースに使えますか?
-
接続自体は可能ですが、TILTとMIDSの支点/中心周波数はいずれも800Hzで、ギターの帯域を想定した設定になっています。ベースが主軸であれば、支点周波数を3段階で切り替えられるBASS COMP/EQのほうが適しています。
- オリジナルのCPR-1とは別物ですか?
-
メーカーはCPR-1の回路アーキテクチャを維持したうえで、レンジと機能性を拡張したモデルだと説明しています。MIDSコントロールとATTACKスイッチの追加、部品と製造工程の刷新、リレー式スイッチングの採用などが主な変更点です。
- 保証はありますか?
-
公式サイトおよび正規販売店で購入した製品には、部品の欠陥や製造上の不良に対して3年間の保証が付帯します。ただし外観上の傷や経年劣化は対象外で、不適切な電源の使用は保証の失効事由となります。
まとめ
COMP/EQ は、コンプレッサーとしての完成度に加えて、潰したあとの帯域バランスまで1台で決められる点に価値があるペダルです。TILTで音の重心を、MIDSで中域の量を、ATTACKで粒立ちのキャラクターを。この3つが手元にあることで、ボードのどこに置いても役割を持てる懐の深さが生まれています。
コンプを掛けると音が痩せる、という感覚に心当たりがあるなら、その原因の多くは失われた帯域を補う手段がないことにあります。COMP/EQ が「常時オンで使える」と語られる理由は、まさにそこにあります。

