アンプ直の音そのものは気に入っているのに、バンドで鳴らすと輪郭がぼやけて前に出てこない。かといって歪みを足すと、せっかくのクリーンな質感まで濁ってしまう——ブースターを探し始めるきっかけは、たいていこのあたりにあります。CATALINBREADのEpoch Boost Miniは、Maestro Echoplex EP-3のプリアンプ部をCatalinbread流に再構成したミニサイズのブースター/プリアンプです。オリジナルと同じ22V動作による高いヘッドルームを土台に、音色の芯を保ったまま前に押し出す。踏みっぱなしで使うことを前提に設計された、いわば「音の下地」を作るためのペダルです。
Epoch Boost Miniの概要
Epoch Boost Miniは、Catalinbreadのフラッグシップ・ブースターであるEpoch Boostを、ペダルボードに置きやすいミニ筐体へ収めたモデルです。中身の出発点はMaestro Echoplex EP-3。テープエコーとして知られる機材ですが、その内部に組み込まれたトランジスタ・プリアンプが独特の色付けを持っており、エコーを使わずにプリアンプだけを目当てに持ち歩くギタリストがいたほど評価されてきました。
EP-3プリアンプ回路のうち、オリジナルのテープユニット特有の風味を生んでいた出力フィルタリングと供給電圧を受け継ぎ、そのうえでクリアな音色エンハンスメントを狙ったのがこの回路です。Catalinbreadはこのペダルを常時オンで使う製品として位置づけており、Mini版もその設計思想をそのまま小型筐体に引き継いでいます。
22V駆動がもたらすヘッドルーム
Epoch Boost Miniの内部は、オリジナルEP-3と同じ22Vで動作します。供給するのは一般的な9VDCですが、内部のチャージポンプ回路が電圧を引き上げる仕組みです。Catalinbreadがこの22V動作に見出しているのは、置き場所を選ばずに機能する高ヘッドルームのパンチ。ペダルの核となる部分です。
ヘッドルームに余裕があるということは、入力レベルが大きくなっても信号が頭打ちになりにくいということです。ハムバッカーで強くピッキングしたときや、前段にコンプレッサーを置いてレベルを持ち上げているときでも、ペダル側が先に潰れてしまう場面を抑えやすくなります。EP-3由来の出力フィルタリングによる色付けと、この余裕の組み合わせが、Epoch Boostシリーズのキャラクターの中心にあります。
2つのノブの役割
コントロールはPREAMPとBOOSTの2つだけですが、それぞれの働きは一般的なブースターの「ボリューム」「ゲイン」とは少し異なります。
PREAMP
PREAMPは単純なボリュームではなく、2つの異なる信号経路のあいだをパンするコントロールです。前半はボリュームとして機能し、後半は簡易的な周波数エンハンスとして働きます。12時を超えたあたりから各周波数帯域が穏やかに持ち上がっていき、音量感としてのピークは2時と3時のちょうど中間あたり。ピックアップセレクター、あるいは少し変わったEQと考えると、動きのイメージがつかみやすいはずです。
この挙動の元になっているのは「Early」と呼ばれる初期型EP-3で、Catalinbreadが挙げる総生産数は500台未満。実機で体験した人はごく限られる、という背景を持ったコントロールです。数値で追い込むというより、耳で気持ちのいいポイントを探すタイプのノブだと考えると扱いやすくなります。
BOOST
BOOSTを完全に反時計回りに絞った状態では、ブーストはかからずユニティゲイン(PREAMPの設定分は加算されます)となります。この位置がいわば素のEchoplexトーンで、音量を変えずに色付けだけを得たい場合の基準点です。そこから上げていくとプリアンプのゲイン量が設定され、輝きと音量が加わっていきます。Catalinbreadが狙うのは、反応の鈍いアンプにも渡り合えるだけの押し出しです。
Catalinbreadが挙げる使い方のひとつが、アンプをブレイクアップ寸前に設定しておき、BOOSTを好みの量まで上げるというもの。ゲインを足すというより、アンプ側の反応を引き出すための一押しとして扱う発想です。
使い方とセッティングの方向性
Epoch Boost Miniは、目的によってノブの組み合わせを変えるとキャラクターが分かりやすく切り替わります。
- 常時オンの音質補正として:BOOSTを絞り、PREAMPで音量が変わらないポイントを探る。EP-3プリアンプの色付けだけを常に通しておく使い方です。
- クリーン〜クランチの押し出しに:PREAMPを12時より上に振り、帯域の持ち上がりを利用してバンドの中での抜けを確保する方向。
- 歪みペダルの前段で:BOOSTを上げて入力レベルを稼ぎ、後段のオーバードライブやディストーションのハリを出す使い方。
- チェーンの最後に:Catalinbreadが紹介しているのは、プロを含む多くのユーザーがEpoch Boostをチェーン末尾の常時オンとして使い、全体をまとめる役割を持たせているという使い方です。
ミニサイズであることは、この「置きっぱなし」の使い方と相性のよい要素です。ボードの隙間に収めてしまえば、あとは踏む機会もほとんどありません。
電源に関する注意
電源は9VDC、消費電流は18mAです。ここで必ず押さえておきたいのが、9Vを超える電圧では使用できないという点。内部で電圧を昇圧するチャージポンプ回路を積んでいるためで、Catalinbreadは9Vより高い電圧での使用を明確に禁止しています。保証の無効化を含む問題につながるため、例外はありません。
18Vや可変電圧に対応したパワーサプライを使っている場合は、出力の設定を確認してから接続してください。電流については必要量を上回る供給は問題ありません。
こんな方に向いています
- アンプの音色を大きく変えずに、輪郭と押し出しだけを足したい方
- EP-3プリアンプ由来のトーンに興味があるものの、実機の入手や管理はハードルが高いと感じている方
- 常時オンで通しておく「下地」としてのペダルを探している方
- ボードのスペースが限られており、フルサイズ筐体を追加する余裕がない方
- ノブが多いペダルよりも、2つで完結する分かりやすさを重視する方
実勢価格は国内で税込2万円台前半が中心です。販売店やタイミングによって変動するため、購入前に最新の価格をご確認ください。
よくある質問
- 18Vのパワーサプライで駆動できますか?
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できません。内部にチャージポンプ回路を搭載しているため、Catalinbreadは9Vを超える電圧での使用を明確に禁止しています。保証の無効化を含む問題につながるので、必ず9VDC・センターマイナスで使用してください。
- 音量を上げずに音色の変化だけを得ることはできますか?
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BOOSTを完全に絞った位置がユニティゲインにあたり、ここが素のEchoplexトーンです。あとはPREAMPで音量バランスを取れば、色付けを中心にした使い方ができます。
- PREAMPノブはボリュームとして考えていいですか?
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前半はボリュームとして機能しますが、12時を超えると2つの信号経路のバランスが変化し、周波数帯域が穏やかに持ち上がる領域に入ります。音量感のピークは2時と3時の中間あたりなので、後半はEQ的なコントロールとして捉えるのが実用的です。
- フルサイズのEpoch Boostとの違いは何ですか?
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Mini版はフルサイズのEpoch Boostをコンパクトな筐体に収めたモデルで、EP-3プリアンプの再構成という基本コンセプトとPREAMP/BOOSTの2ノブ構成、22V動作は共通です。筐体サイズや内部仕様の細部については、購入前に販売店へ確認されることをおすすめします。
まとめ
Epoch Boost Miniは、音を派手に変えるためのペダルというより、今の音の輪郭を整えて前に出すための土台に近い存在です。22V動作による高いヘッドルーム、EP-3由来の出力フィルタリング、そしてBOOSTを絞れば純粋なEchoplexトーンが残るという設計。この3点が、常時オンで置いておく価値をつくっています。
2ノブという構成もあって、セッティングに迷い続けるタイプのペダルではありません。ボードの隙間に収めて、あとは音の底上げを任せる。そういう付き合い方ができる一台です。

