デジタルのディレイやリバーブと、アナログの歪みを同じボードに並べたとたん、どこから出ているのか分からないノイズが乗りはじめる。ケーブルを疑い、順番を入れ替え、それでも消えないとなったとき、最後に残る犯人が電源であることは珍しくありません。CAJ DC/DC Station IIは、まさにその混在環境を前提に設計されたパワーサプライです。
全8ポートを個別にアイソレートし、スイッチング電源特有のパルスノイズをフィルター回路で抑え込む。さらに付属のDoubler Cableで電流と電圧を拡張できるため、300mAや500mAを要求するデジタル機、18V駆動のペダルまで一台でまかなえます。ただしそのDoubler Cableには、公式が明示している使用条件があります。
CAJ DC/DC Station IIの基本仕様
DC/DC Station IIは、DC9V・150mAを6ポート、DC9V・500mAを2ポート、合計8系統を備えたパワーサプライです。プラグはいずれもセンターピン2.1mmのセンターマイナス。定格を単純に合計すると1,900mA分の出力ポートを持つ計算になります。
本体へはDC12V・2,000mAを入力し、付属の電源アダプターがAC100V〜240Vに対応しています。海外の電圧環境でもアダプターをそのまま使えるため、機材を持って移動する場面では扱いやすい設計です。
| 出力 | DC9V・150mA × 6/DC9V・500mA × 2(センターピン2.1mm・センターマイナス) |
| 入力 | DC12V・2,000mA(センターピン2.1mm・センターマイナス) |
| 電源アダプター | AC100-240V/50-60Hz、ケーブル長1.5m |
| 本体寸法・重量 | 197mm(幅)× 34.2mm(縦)× 27mm(高さ)/約210g |
| アダプター寸法・重量 | 43.4mm(幅)× 54.1mm(縦)× 82mm(高さ)/約105g |
| 付属品 | DC12V電源アダプター × 1、CAJ DC Cable 2.1 × 8(30cm × 4、60cm × 4)、Current Doubler Cable × 1、Voltage Doubler Cable × 1、リバースケーブル × 1 |
| JANコード | 4571220045455 |
幅197mm、高さ27mmという寸法は、ボードの端やペダルの裏側に収めることを想定したサイズ感です。電源アダプターも100g程度と小型なので、電源まわりだけで想定外のスペースを取られる状況は避けやすくなっています。
スイッチング方式でありながらノイズを抑える構成
トランスを用いるリニア方式に対して、スイッチング方式は高効率で発熱が少なく、軽量に作れるという利点があります。一方で直流電圧を生成する過程に超高速スイッチングを使う都合上ノイズが発生しやすく、音響機器での採用が敬遠されてきた経緯もありました。
DC/DC Station IIは、ハイゲインアンプに接続されるギター用エフェクターへの電源供給を前提としたフィルター回路を持ち、スイッチング電源特有のパルスノイズを抑え込む設計になっています。加えて全出力ポートがアイソレートされているため、ノイズの発生源になりやすいデジタルエフェクターとアナログエフェクターを同一のサプライから同時に駆動できます。
AC/DC Stationシリーズとは別系統の製品です
CAJのパワーサプライには「AC/DC Station」というもうひとつのシリーズがあり、両者を上位・下位の関係と捉えてしまうと選び方を誤ります。DC/DC Station IIはDC・DC Station(初代)のリニューアルモデルであって、AC/DC Stationの後継機ではありません。設計の考え方そのものが異なる、並行するラインナップです。
| DC/DC Station II | AC/DC Stationシリーズ | |
| 電源方式 | スイッチング方式 | リニア方式 |
| 出力のアイソレート | 全ポート・フルアイソレート | アイソレートなし |
| Doubler Cable | 使用可能(付属) | 使用不可 |
AC/DC Stationシリーズはリニア方式によるパルスノイズのないクリーン電源が持ち味ですが、DC9V OUTPUTはアイソレートされていません。そのため、同じ電源ラインにデジタルエフェクターを接続するとノイズが発生する可能性があります。この点はCAJ自身が最新モデルAC/DC Station VIIの製品ページで明記しており、アイソレートされた出力を求める場合はDC/DC Station IIを、と案内されています。
アナログ中心の小規模なボードならAC/DC Stationシリーズ、デジタルとアナログが混在するボードならDC/DC Station II、という切り分けが基本の考え方になります。
Doubler Cableで電流と電圧を拡張する
DC/DC Station IIには、2本のDoubler Cableが標準で付属します。ふたつのDC出力端子に同時に接続することで、供給できる電流あるいは電圧を合算できるケーブルです。
Current Doubler Cable(電流を合算)
- 150mA端子 × 2 → DC9V/300mA
- 500mA端子 × 2 → DC9V/1,000mA
- 150mA端子 + 500mA端子 → DC9V/650mA
異なる定格の端子を組み合わせても合算できるため、残っているポートの状況に応じて柔軟に組めます。マルチエフェクターやデジタルリバーブなど、単体では500mAポートでも足りない機材への給電で効いてくる部分です。
Voltage Doubler Cable(電圧を合算)
- 150mA端子 × 2 → DC18V/150mA
- 500mA端子 × 2 → DC18V/500mA
18V駆動に対応したブースターやプリアンプのために、別途18V出力のあるサプライを用意する必要がなくなります。9Vと18Vの混在したボードを一台で組めることは、スペースと配線の両面で効いてきます。
先端の色で見分ける
2本のケーブルは、エフェクター側プラグの先端の色で区別できます。Current Doubler Cableが黒、Voltage Doubler Cableが黄色です。取り違えれば9V機に18Vを流しかねない組み合わせなので、暗いステージ上でも判別できるこの色分けは実務上ありがたい配慮です。
- 各DC出力端子が完全にアイソレートされたパワーサプライでのみ使用できます。CAJ「AC/DC Station」シリーズ、「PBHUB6-C」、「HUB-6 ver.II」では使用できません。
- Current Doubler Cable:接続する機器の消費電流が、2端子の合計供給電流値以下であること。
- Voltage Doubler Cable:接続する機器の動作電圧が、2端子の合計供給電圧値と同じであること。「合計値以下ならよい」という条件ではありません。
他社製サプライやアイソレートされていないサプライへの流用は想定されていません。仕様が不明な場合は、そのサプライのメーカーまたは代理店への確認が確実です。
なお、Doubler Cableの動作確認済み機器リストがオカダインターナショナルの公式サイトでPDF公開されています(データは2022年2月2日時点)。手持ちのペダルが掲載されているかを事前に確認しておくと安心です。
リバースケーブルでセンタープラス機も同居させる
付属品にはリバースケーブルも1本含まれています。全ポートがアイソレートされているからこそ、極性を反転させたケーブルを使ってセンタープラス仕様のエフェクターへ、他のペダルと同時に給電できます。
アイソレートされていないサプライではこの使い方はできません。ヴィンテージ系のファズなど、極性の異なる機材をボードに組み込みたい場合、電源をもう一系統用意せずに済むのは実際的なメリットです。
デジタルボルトメーターの読み方
本体には電源供給状態を確認できるデジタルボルトメーターが搭載されています。ここで押さえておきたいのは、表示されているのが右側500mAポートの電圧だという点です。全8ポートを個別に監視できるわけではありません。
また、表示電圧には製品ごとの誤差があることが公式に注記されています。他の個体や他機種と数値を比較して不具合を疑うのではなく、同じ個体で普段と違う挙動が出ていないかを見るための目安として使うのが適切です。
付属品とボードへの組み込み
DCケーブルはCAJ DC Cable 2.1が8本付属し、内訳は30cmが4本、60cmが4本です。ポート数と同数が同梱されているため、購入後に追加のケーブルを揃えなくてもそのままボードを組み始められます。
電源アダプターはDC12V・2,000mA、センターピン2.1mmのセンターマイナスという専用仕様です。手持ちの9Vアダプターで代用することはできません。紛失や断線に備えて、DC/DC Station Adapterとして単体でも販売されています。ライブやツアーで機材を動かす機会が多い方は、予備の入手経路があることを覚えておくと安心材料になります。
向いている人、向いていない人
向いている人
- デジタルとアナログのエフェクターが混在したボードを組んでいる
- 300mA〜1,000mAを要求する機材があり、9Vポートだけでは足りていない
- 18V駆動のペダルを同じサプライから動かしたい
- センタープラス仕様の機材をボードに同居させたい
- 海外での使用や、電圧環境の異なる現場での運用を想定している
向いていない人
- 電源方式そのものをリニアで揃えたい方。この場合はAC/DC Stationシリーズが選択肢になります。
- Doubler Cableを使わず、単一ポートで500mAを超える出力が必要な方。
- 12Vや24Vをネイティブで出力したい方。DC/DC Station IIの出力は9Vで、18VはVoltage Doubler Cable経由で得る形になります。
- アナログ数台のミニマルなボードで、5系統あれば十分という方。より小型のモデルのほうがスペース効率で有利です。
- 全8ポートを同時に最大まで使えますか?
-
各ポートの定格を単純に合計すると1,900mAですが、全ポート同時使用時の最大出力についてメーカーは具体的な数値を公表していません。実際の運用では、接続する機材の消費電流の合計に余裕を持たせた設計にしておくのが安全です。
- 付属のDoubler Cableを他社製パワーサプライで使えますか?
-
各DC出力端子が完全にアイソレートされたパワーサプライでのみ使用できます。CAJ製品でも「AC/DC Station」シリーズ、「PBHUB6-C」、「HUB-6 ver.II」では使用できません。他社製品については、そのサプライのメーカーまたは代理店に仕様を確認してください。
- AC/DC Stationとどちらを選べばよいですか?
-
デジタルとアナログが混在するボードにはDC/DC Station IIが適しています。AC/DC StationシリーズはリニアAC電源ですが出力がアイソレートされておらず、同じラインにデジタル機を接続するとノイズが出る可能性があります。アナログ中心の小規模なボードであればAC/DC Stationシリーズも選択肢になります。
- 電源アダプターは市販のもので代用できますか?
-
入力はDC12V・2,000mA、センターピン2.1mmのセンターマイナスという専用仕様です。9Vアダプターなど仕様の異なるものは使用できません。DC/DC Station Adapterとして単体販売もあります。
- ボルトメーターはどのポートの電圧を表示していますか?
-
右側の500mAポートの電圧です。全ポートを個別に監視する機能ではありません。また、表示電圧には製品ごとの誤差があることがメーカーから注記されています。
まとめ
DC/DC Station IIの価値は、8ポートという数そのものよりも、そのすべてがアイソレートされていることで生まれる組み合わせの自由度にあります。150mAと500mAを合算する、9Vをふたつ束ねて18Vにする、極性を反転させてセンタープラス機を混ぜる。どれも出力が独立していなければ成立しない使い方です。
一方で、Doubler Cableには合算値と機材側の仕様を照らし合わせる確認作業が伴います。特にVoltage Doubler Cableは「動作電圧が一致していること」が条件であり、ここを曖昧にしたまま接続すると機材を傷めかねません。付属品として同梱されているぶん気軽に使いたくなりますが、繋ぐ前のひと呼吸が、結局はボード全体を長く安定させることにつながります。
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