初心者からはじめる「エフェクター自作 講座」〜 部品編(後編)〜

初心者からはじめる「エフェクター自作 講座」〜 部品編(後編) 〜

エフェクターを自作してみたいけど何から始めればいいんだろう?道具やパーツは何が必要?費用は一体どれくらいかかるんだろう…。

そこで!これからエフェクター作りに挑戦してみたい初心者の皆さまにむけて自作エフェクター入門講座を開講いたします。

講師は”痛エフェクター”のパイオニア的ブランド「Sound Project “SIVA”」を主宰するビルダー小澤博氏。エフェクター作りの基本や基礎知識が学べるのはもちろん、実際に小澤氏が使用しているおすすめの工具やパーツもご紹介していただきます!趣味としてはもちろん、もっとスキルアップしたい方、さらには将来自分のエフェクターブランドを立ち上げてみたい本格派の方も必見のコンテンツです。


小澤博氏プロフィール
小澤博氏プロフィール
”痛エフェクター”のパイオニア的ブランド「Sound Project “SIVA”」を主宰するエフェクタービルダー。完全オリジナルのイラストを纏ったケースはもちろん、優れた機能とハイクオリティサウンドで世界中のアーティストから注目を集めている。最近ではエフェクターのみならずアンプキャビネットの開発を行うなど活躍の幅を広げている。
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エフェクター自作 講座メニュー

こちらでは、エフェクターの自作をこれから始めてみたいという初心者向けの内容から初めて、オリジナルのエフェクターを作るところまでを連続講座としてご紹介してまいります。

 
≫ 道具編
≫ 部品編(前編)
≫ 部品編(後編)
≫ 筐体加工編
≫ 塗装編
≫ 基板製作編
≫ 組み立て編
≫ 回路図記号と回路図のルール
≫ 各種作例(comming soon)
≫ PCB基板製作編[KiCAD](comming soon)
 

※メニュー項目は予定となります。再編する場合がございますのでご了承ください。
部品編(後編)

前回に続きまして、部品編の後編をお届けします。

8:可変抵抗器(POT)、ノブ

可変抵抗器(POT)はシャフトを回転させることで抵抗値が変化する抵抗器です。ツマミを回してボリューム操作をするときの内部にある部品です。

シャフトを上にした状態で見て、左から1、2、3番の端子があります。最大になる抵抗値がそれぞれ設定されており、500Ωくらいから1MΩくらいまで様々な値があります。
本体の径が16mmのものがよく使われますが、さらに小さい9mmの角形で基板に直接取り付けるタイプのものもあります。

POTの種類

シャフトを右に回すと1番と2番端子の間の抵抗値が大きくなり、2番と3番端子の間の抵抗値が小さくなります。

完全に右に回し切ると、1番と2番端子の間の抵抗値が最大となり、2番と3番端子の間の抵抗値が0になります。左にシャフトを回すと、逆の動きになります。
1番と3番端子の間の抵抗値は常に一定です。

POT抵抗値の変化1

▼POT(可変抵抗器)の抵抗値の変化

抵抗値の変化のしかたは、直線的に変化するBカーブ(Liner)と対数的に変化するAカーブ(Log)とAカーブの逆の変化カーブを描くCカーブ(Rev Log)の3種類が一般的です。エフェクターで使うのは、ほぼAカーブかBカーブです。

POT抵抗値の変化2

Aカーブを使うところにBカーブのPOTを置き換えても動作はします。ただし、使用感に違いが出ます。

例えば音量を調整するボリュームでは直線的な変化をするBカーブを使うと、人間の耳は急激に音量が変化したように感じてしまい使いづらいものになります。ボリューム操作にはAカーブを使って、徐々に音量を上げていくようにすると、人間の耳はスムーズに音量が変化したと感じます。同じ抵抗値のPOTでも、このように途中の抵抗値の変化の仕方で操作感に違いが生まれます。

シャフトの形状は数種類あります。太さは、ミリ(6mm)規格とインチ(1/4インチ(6.35mm))規格。形状には、ギザギザが付いていてノブを押し込んではめるスプリットシャフト、ギザギザの付いていないノブをネジ止めするソリッドシャフトなどあります。

シャフトをそのままむき出しで使うと回しづらいので、ノブをシャフトに取り付けて使います。デザインやサイズに様々なものがあるので、好みや用途で選びましょう。

POTシャフトの形状

つまみ

9:ジャック

ケーブルについたプラグを挿して接続するための部品です。楽器からエフェクターへ(Input)、エフェクターからその先へ(Output)つなぐジャックには1/4インチフォンジャックを使います。Inputにはステレオフォンジャック、Outputにはモノラルフォンジャックをよく使います。

フォンジャックの種類

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Inputにステレオジャックを使うのはステレオ信号を受けるためではなく、Inputにプラグを挿した時にだけ電源が入るようにするためです。その仕組みは連載後半の記事『組み立て編』で解説します。

フォンジャックには端子がついています。それぞれの端子がプラグの各部に繋がるようになっています。モノラルジャックにはTip端子とSleev端子。ステレオジャックにはTip端子、Ring端子、Sleev端子があります。

フォンジャックの端子

電源を取るためのジャックには内径2.1mmのDCジャックを使います。内部に電池を内蔵できるように、電池スナップを接続出来るタイプもあります。電池の内臓をしない場合は小型のDCジャックを選び、ケースにあける穴の経を小さくすることができます。

DCジャックは、挿したプラグに内側から接触する端子と外側から接触する端子が付いています。それぞれにサイズがあり、エフェクターで使うのは外径が5.5mm、内径が2.1mmのものをよく使います。

DCジャックの種類

DCジャックの内径と外径

DCジャックの端子の接続先

10:電池スナップ

エフェクターでは一般的に電源電圧は9Vを使うことが多いので、四角い9V電池(006p)を繋げられるものを使います。

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電池に接続する部分に繋がっている線はそれほど頑丈ではないので、丁寧に扱いましょう。
赤い線は電池のプラス極、黒い線はマイナス極に繋がっています。

電池スナップ

11:スイッチ

エフェクター作り一番多く使うスイッチは、On/Offの切り替えるためのフットスイッチだと思います。このスイッチはボタンを押すたびに、三つの回路が一度に切り替わる3PDT(3ポール ダブルスロー)スイッチです。

他にも二つの回路が切り替わるDPDT(ダブルポール ダブルスロー)や一つの回路が切り替わるSPDT(シングルポール ダブルスロー)などもあります。

スイッチ写真

スイッチの動作(3PDTの場合)

三つの回路が一度に切り替わる3PDT(3ポール ダブルスロー)の他に、二つの回路が切り替わるDPDT(ダブルポール ダブルスロー)や一つの回路が切り替わるSPDT(シングルポール ダブルスロー)など回路数の違うものがあります。

回路数から見たスイッチの種類

スイッチの切り替えをボタンではなく、レバーの操作で行うトグルスイッチもエフェクターではよく使います。

また、前述のように回路の接続先が操作で交互に切り替わる『On-On』のものだけでなく、レバーがまっすぐ立つ中間位置のある『On-Off-On』のものなど、トグルスイッチには様々な接続の仕方のものがあります。

各種スイッチの動作(トグルスイッチの場合)

12:ケース

基板やスイッチなどを収めるケースです。エフェクターは足で操作するので、頑丈で加工がしやすいアルミダイキャスト(鋳造)のものが良いでしょう。これに穴を開けてジャックやスイッチなどの部品を取り付けます。
より安価な1mm厚の板金ケースもありますが、強度を考えるとダイキャストケースをお勧めします。

あまり小さいものを選ぶと作業がしづらくなるので、作るエフェクターに合った適当なものを選びましょう。一般的にエフェクターで多く使われているサイズは、MXRのDistortion+などで馴染みのBサイズと呼ばれているHammond製の1590Bと言うものや、それより大きめの1590BB、ミニエフェクターで人気の1590Aなどがよく使われます。

Hammond製各種アルミダイキャストケース

Hammond製1590Bケース

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13:配線材

部品どおしをつなぐために使います。ビニールなどの皮膜で周りをコーティングされているビニール線として、いろいろなものが売っています。場合によってはビニールでコーティングされていない裸線も使います。

最初に購入される時は、メーター単位で切り売りされているものを3mから5mくらい買われるのが良いでしょう。いきなりリール単位(30mとか300m単位)で買う必要はありません。

配線材写真

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ビニール線には、細かい線を撚って一本の線にした『撚り線』と、一本の針金状の線でできている『単線』があります。

撚り線と単線の模式図

撚り線と単線の違い

撚り線は、一部が切れても他の撚り合せた線でカバーできて全体として断線しにくいのですが、細かい穴に通す時に線がばらけてしまうことがあります。単線は、ばらけることがなく扱いやすいのですが、何度も曲げていると皮膜の中で断線してしまうことがあります。それぞれの特徴が表裏となって、それぞれのメリットデメリットになります。撚り線も単線もそれぞれ一長一短なので、好きな方を選んで大丈夫です。

よほど細くて頼りないものでなければ、扱いやすさと値段で選んで大丈夫です。
具体的には0.2平方(0.2sq AWG24相当)から0.3平方(0.3sq AWG22相当)の太さのものが、適度な太さで扱いやすいと思います。

撚り線と単線のメリット、デメリット

14:熱収縮チューブ

熱を加えることで縮むビニール製のチューブです。部品の絶縁目的で使います。具体的には、基板を使わずジャックなどに直接部品を取り付ける際に、部品を中に通して他のパーツに当たってショートしないようにするために使います。

収縮前の状態で3mm径くらいのものが使いやすいです。
半田ごての根元の辺りの熱を使ったり、ドライヤーの熱で収縮させて使います。

熱収縮チューブ

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おすすめ部品購入先リスト

熱収縮チューブや配線材などはホームセンターでも売っていますが、専門のパーツ屋さんで買うのうが一気に揃えられて便利です。東京近郊に住んでいる方なら秋葉原、大阪近郊の方なら日本橋にパーツ屋さんがたくさんあります。地方在住の方でも、今は通販をしてくれるお店がたくさんあるのでそちらを利用すればどこでもエフェクターを作る材料は購入が可能です。

東京秋葉原地区

・秋月電子通商
http://akizukidenshi.com/catalog/top.aspx

・千石電商
https://www.sengoku.co.jp/

・マルツ
https://www.marutsu.co.jp/

秋葉原の電子部品屋さん3巨頭です。だいたいここを覗けばエフェクターの部品はそろいます。それぞれ通販も行ってくれます。

・桜屋電機店
http://www.sakurayadenkiten.com/

東京ラジオデパートの2階にある電子部品屋さんです。エフェクターパーツ専門店では?と言うくらいエフェクター作りに特化した商品ラインナップです。加工済み、塗装済みのケースなども売っているので、ケース加工や塗装はハードルが高いと言う方は、それを利用すると良いでしょう。前述の三店では置いていない珍しいトランジスタやオペアンプなども扱っています。通販もしてくれます。

大阪日本橋地区

・千石電商
https://www.sengoku.co.jp/

・デジット
http://digit.kyohritsu.com/

日本橋で大きなパーツ屋さんといえばこの二店でしょうか。通販に出ていない特価品があったりと、リアルでお店に行くのも楽しみの一つです。通販も行ってくれます。

通販

・サウンドハウス
https://www.soundhouse.co.jp/

ジャックや配線材など、意外にエフェクター自作に役立つものが多く売られています。

・Garrettaudio
https://www.garrettaudio.com/

エフェクター自作の材料はほぼここで全て揃います。抵抗器やコンデンサを一個単位で売ってくれるのはとてもありがたいです。

本講座をもとにエフェクターを製作される際は、安全に留意のうえ個人責任で行ってください。作り方や道具の取り扱いを誤ると怪我や火災など大きな事故につながる可能性もあります。万一損害や不利益が発生した場合でも、当サイトおよび執筆者は一切の責任を負う事はできませんので、あらかじめご了承お願いいたします。

次回からは実際にエフェクターを作る工程を紹介して行きます。

ご注意
本講座をもとにエフェクターを製作される際は、安全に留意のうえ個人責任で行ってください。作り方や道具の取り扱いを誤ると怪我や火災など大きな事故につながる可能性もあります。万一損害や不利益が発生した場合でも、当サイトおよび執筆者は一切の責任を負う事はできませんので、あらかじめご了承お願いいたします。
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こちらでは、エフェクターの自作をこれから始めてみたいという初心者向けの内容から初めて、オリジナルのエフェクターを作るところまでを連続講座としてご紹介してまいります。

 
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