「足元に、Dr. Zの魂を。」 200V真空管が吠える、EQD究極のプリアンプ
エフェクター市場において、これほど胸が熱くなるコラボレーションがあったでしょうか。
独創的なペダルを世に送り出し続けるEarthQuaker Devices (EQD) と、ブラッド・ペイズリーやジョー・ウォルシュなど数多のレジェンドに愛されるブティックアンプメーカー Dr. Z Amplification。
この両雄がタッグを組んで開発したのが「ZEQD-Pre」です。
一見するとただの「真空管入りドライブペダル」に見えるかもしれません。しかし、その中身はペダルというよりも「アンプそのもの」と言っていいでしょう。アンプレス(アンプを使わない)環境や宅録システムのクオリティを劇的に向上させる、この「エンド・オブ・チェーン」ソリューションの全貌に迫ります。
ZEQD-Preとは? EQDとDr. Zが目指した「エンド・オブ・チェーン」
ZEQD-Preの開発コンセプトは非常に明確です。それは、ペダルボードだけで音作りを完結させる現代のプレイヤーに向けて、シグナルチェーンの最後尾に「本物の真空管アンプの挙動」を加えること。
最近はアンプを持ち運ばず、足元のボードから直接PAやレコーディング機材へ音を送るスタイルが定着しています。しかし、デジタルモデリングや一般的なアナログペダルだけでは、どうしても「本物のアンプ」が持つ独特のコンプレッション感や、空気感のあるレスポンスを再現しきれないジレンマがありました。
ZEQD-Preは、Dr. Zアンプの回路設計思想をそのままペダルサイズに凝縮することで、この問題を解決しようとしています。つまり、これは歪みエフェクターとして使うだけでなく、「プリアンプ」として常にONにし、ボード全体のサウンドを支配する司令塔として設計されているのです。
心臓部は本物の真空管「EF86」&200V高電圧駆動
このペダルの最大のトピックは、内部に搭載されたEF86真空管の駆動方式にあります。
市場には「真空管搭載」を謳うペダルが多く存在しますが、その多くは低い電圧で動作させており、あくまで「風味付け」にとどまるケースも少なくありません。しかし、ZEQD-Preは違います。
妥協なき200V昇圧回路
EarthQuaker Devicesは、一般的な9V電源を内部回路で200Vのプレート電圧(Plate Voltage)にまで昇圧しています。これにより、真空管アンプのプリ部と全く同じ環境でEF86管を動作させることに成功しました。
なぜ「EF86」なのか?
Dr. Zのアンプ(Z-28やRoute 66など)でも象徴的に使われるEF86は、一般的な12AX7などのプリ管に比べてゲインが高く、非常にリッチな倍音と太いサウンドが特徴のペントード管です。
200Vで駆動するEF86は、ピッキングの強弱に対する反応(タッチセンシティビティ)が圧倒的です。優しく弾けば透き通るようなクリーン、強く弾けば粘りのあるクランチへと、手元の操作だけで表情が激変します。これこそが、デジタルでは再現が難しい「アナログの魔法」です。
実践的な2つのモードとコントロール
ZEQD-Preは、ギタリストが直感的に扱える2つのモードを搭載しています。
1. プリアンプモード(EQ ON)
通常のアンプのように音作りを行うメインモードです。搭載された3バンドEQ(Treble, Middle, Bass)はDr. Zのアンプ同様の挙動を示し、パッシブ回路ならではの自然な効き味が特徴です。
- Treble: 煌びやかな高域の調整
- Middle: 音の太さや抜けに関わる中域
- Bass: アンサンブルを支える低域
このモードで「基本の音」を作り込みます。Dr. Zらしい、芯の太いクリーントーンから極上のクランチサウンドまでをカバーします。
2. ブーストモード(EQ Bypass)
フットスイッチ(Boost)を踏むと、EQ回路が完全にバイパスされ、純粋な真空管ブースターへと変貌します。
トーン回路を通らないため、信号はよりダイレクトに、よりラウドになります。専用の「Boost」ノブで音量を設定できるため、ギターソロやここぞという場面で、真空管のパワーを全開にしたリードトーンを叩き出すことが可能です。
ライブから宅録まで。全方位対応の接続環境
ZEQD-Preが現代のミュージシャンにとって「最強のツール」となり得る理由が、充実した入出力端子です。特筆すべきは、以下の3つの出力がすべて同時に使用可能である点です。
- Main Output
通常のアンプのインプットへ接続します。アンプの前段で音色を整えるドライバーとして機能します。 - XLR Direct Out(キャビネットシミュレーター搭載)
ミキサーやオーディオインターフェースへ直接接続するためのバランス出力です。ここにはアナログ回路によるキャビネットシミュレーターが搭載されており、まるで4×12キャビネットを鳴らしているかのようなリアルな空気感をライン信号に乗せることができます。 - Headphone Out(キャビネットシミュレーター搭載)
深夜の練習や、ステージ袖でのサウンドチェックに便利です。こちらもキャビシミュが効いているため、ヘッドフォンでも「アンプの音」で演奏できます。
活用例:ライブでの「ハイブリッド接続」
ステージ上のアンプにはMain Outputから信号を送り(中音)、PA卓にはXLRから完成されたライン信号を送る(外音)。これにより、マイキングの手間や被り(ブリード)を気にすることなく、最高品質の真空管サウンドを会場に届けることができます。
導入前に知っておくべき注意点(電源)
このペダルを導入する際、一つだけ絶対に注意しなければならない点があります。それは「電源」です。
真空管を200Vで駆動させるため、ZEQD-Preは500mAという非常に大きな電流を消費します。
一般的なアナログ歪みペダル(数mA〜数十mA程度)とは桁が違います。電源供給には、必ず500mA以上を供給できるアイソレートされたパワーサプライ、または付属のアダプターを使用してください。電流不足の状態では本来のサウンドが出ないばかりか、故障の原因にもなりかねません。
ZEQD-Preはどんなプレイヤーにおすすめ?
EarthQuaker DevicesとDr. Zが送り出す「ZEQD-Pre」は、単なるエフェクターの枠を超えたデバイスです。
- アンプを持ち運ばず、ペダルボードだけで完結させたい方
- ライン録音でも、デジタル臭さのない「真空管の質感」が欲しい方
- Dr. Zアンプのファンで、そのサウンドをどこでも再現したい方
ZEQD-Preは間違いなく導入する価値のある機材。足元に「本物の真空管アンプ」を置く贅沢と実用性を、ぜひ体験してみてください。



