スルーゼロフランジャー(Thru Zero Flanger)とは、オープンリールテープとそのコピーを同時に再生した際、2つのテープの再生速度のずれにより、あるポイント(ゼロポイント)で位相がキャンセルされることにより起こるエフェクトです。再生中のオープンリールテープの縁(フランジ)を触れることによって、その摩擦で再生速度を微細に変えることができることからフランジャーという名前が付いたと言われています。
フランジングの起源について、正確なことがわかっているわけではありません。おそらくマルチトラックレコーディングの限界を試そうとした結果、2つのテープマシンが完全に同期できていなかったのかもしれませんし、もしかしたらスタジオでレコーディングなどの作業中、誤ってテープの縁に触れてしまったことがことの起こりかもしれません。もしそうだとしたら、それはマルチトラックレコーディングを多用したレス・ポールか、スタジオで様々な実験を行ったジョン・レノンと、そのプロデューサー、ジョージ・マーティンだったのかもしれません。一般にフランジャーの起源はビートルズだと言われていますが、実際のところは明確になっているわけではないのです。
ことの起こりがどうあれ、それから10年も経たないうちに、電気的な回路によってフランジャーというエフェクトが誕生したことは事実です。
電気的なアプローチによるフランジャーエフェクトはとても素晴らしい物でしたが、80年代にあまりにも多用されすぎてしまいました。Catalinbreadでは、フレッシュなフランジャーを作るため、スルーゼロフランジャーをよみがえらせることにしました。そしてCatalinbreadは、元来のフランジャーの仕組みと効果を知り尽くしていました。
Zero Pointは、かつてスタジオでオープンリールテープを触って起こしていた操作に最も近づいたフランジャーペダルです。
本来のスルーゼロフランジャー同様、Zero Pointは“リアルタイムエフェクト”です。多くのモジュレーションエフェクトとは決定的に違います。そこにはLFOも、設定どおりのアップダウンスウィープもありません。80年代に使い古されてしまった“フランジャーエフェクト”とは全く違います。
だからこそ、Zero Pointにノブやトグルスイッチは必要ありません。両手で楽器をプレイしながら操作できるコンパクトペダルとして進化していますが、当時のスルーゼロフランジャー同様、テープの縁を押す、それが唯一のコントロールとなるのです。