true bypassとは?エフェクターの音痩せ・バッファとの違いをやさしく解説

true bypassとは?エフェクターの音痩せ・バッファとの違いをやさしく解説

エフェクターの説明文やレビューでよく見る「true bypass(トゥルーバイパス)」。なんとなく“音に良さそう”というイメージはあるものの、実際に何がどう違うのか、バッファードバイパスとの関係までスッキリ理解できている人は意外と多くありません。

この記事では、「true bypassとは何か」「バッファードバイパスとの違い」「自分のボードではどう選べばいいか」を、できるだけ専門用語を減らしてやさしく解説します。これからエフェクターを買い足したり、ペダルボードを組み直したりするときの判断材料として役立ててみてください。

true bypass(トゥルーバイパス)とは?

オンにしていないとき、信号が“素通り”する仕組み

まずは、true bypassの一番大事なポイントから。true bypassとは、エフェクターをオフにしているときに、ギター(ベース)からアンプまでの信号がエフェクト回路を通らず、ほぼ直結で流れていく構造のことを指します。

イメージとしては、ペダルの中に「エフェクト回路」と「スイッチ」があり、

  • エフェクターオン:スイッチがエフェクト回路側に切り替わり、信号が回路を通って音が変化する
  • エフェクターオフ:スイッチが直結側に切り替わり、回路を通らずに信号が素通りする

という仕組みになっています。オフ時の信号が、回路を経由せず「素のケーブルとほぼ同じ経路」で流れていくので、エフェクターの色づけや劣化要素が入り込みにくい、というのがtrue bypassの考え方です。

なぜ「true(本当の)バイパス」と呼ばれるのか

もともと「バイパス」とは、エフェクターをオフにしたときに、回路をスルーして原音を出す状態のこと。しかし、古いエフェクターや一部のペダルでは、オフ状態でもスイッチング回路やバッファ回路を経由していました。

そこで、「本当に回路を通らない(=trueな)バイパスですよ」という意味を込めて呼ばれるようになったのがtrue bypassです。マーケティング的な側面もありますが、少なくとも構造として、オフ時に余計な回路を通らないように設計されているペダルだと考えてOKです。

図1 true bypassの信号経路 オン時 ギター ペダル(ON) アンプ オフ時 ギター ペダル(バイパス) アンプ

true bypassとバッファードバイパスの違い

バッファードバイパスとは?ざっくりイメージ

true bypassとよく比較されるのが、バッファードバイパス(buffered bypass)です。こちらは、ペダルの中に「バッファ」と呼ばれる信号を整える回路が入っていて、エフェクターのオン・オフにかかわらず、このバッファは通る構造になっています。

つまり、

  • エフェクターオン:バッファ → エフェクト回路 → 出力
  • エフェクターオフ:バッファ → (エフェクト回路はバイパス) → 出力

といった感じで、常にバッファが働いているイメージです。バッファには、長いケーブルや複数のペダルをつないだときに失われやすい高音域(ハイ)を補正し、音痩せを防ぐ役割があります。

音痩せの原因は“エフェクター”だけじゃない

ここで押さえておきたいのは、音痩せの原因はエフェクター単体ではなく「ケーブルの長さ」「接続点の多さ」などの合計で決まるということです。

たとえば、true bypassペダルを5〜6台つなぎ、シールドも長めのものを使っていると、エフェクターを全部オフにしていても「超ロングケーブル」を使っているのとほぼ同じ状態になります。その結果、ハイが落ちてモコっとした音に感じることがあるのです。

図2 true bypassのみのボードとバッファ入り A:true bypassのみ ギター TB1 TB2 TB3 アンプ ・TBペダル+長い配線だけだと音痩せしやすい B:最初にバッファ ギター バッファ TB1 TB2 アンプ ・バッファで信号を補強してからTBペダルへ送ると音が安定しやすい

一方で、最初か最後にバッファ付きのペダルを1台入れておくと、信号がある程度「強く整えられた状態」になるため、長いケーブルでも音が痩せにくくなります。これがバッファードバイパスが好まれる理由のひとつです。

true bypassのメリット・デメリット

true bypassのメリット

true bypassの主なメリットは、次のような点です。

  • オフ時にエフェクト回路の影響を受けにくい(原音に近い状態になりやすい)
  • ペダルによってはバッファのクセや色づけを避けられる
  • シンプルな構成&短いケーブル長なら、非常にナチュラルなレスポンスを得られる

特に、ギターやアンプそのもののキャラクターを大事にしたい人や、必要なときだけエフェクトをかけ、オフのときは完全に素の音を出したい人にとって、true bypass構造は魅力的です。

true bypassのデメリット・注意点

一方で、true bypassにも弱点や注意点があります。

  • ペダルの台数が増えると、全部オフでもケーブル総延長が長くなり、結果的に音痩せしやすい
  • 環境によっては、オン・オフ時に「ポンッ」というポップノイズが出やすい個体もある
  • ボード全体で見たとき、バッファがどこにもないと不安定になるケースがある

つまり、true bypassそのものは良い構造なのですが、「true bypassならどれだけつないでも絶対に音が良い」というわけではない、というのがポイントです。

「true bypass=正義」ではない?よくある誤解

バッファは“悪者”ではなく「助けてくれる存在」

ネット上では、true bypassの評価が高い一方で、バッファを「音を劣化させる悪者」のように扱ってしまうケースも見られます。しかし実際には、バッファは長いケーブルや多くのペダルから原音を守ってくれる存在です。

典型的な例として、

  • 最初にバッファ付きチューナーを置く
  • 最後にバッファ付きブースターやプリアンプを置く

といった組み方があります。こうすることで、true bypassペダルが多くても、全体としては音痩せしにくいボードを作ることができます。

こんな環境なら、true bypassだけだと損するかも

次のような条件が重なる場合、true bypassペダルだけでボードを組むと、かえって音が細くなったり、抜けが悪く感じられたりすることがあります。

  • シールドやパッチケーブルの総延長が15〜20mを超える
  • ペダルの台数が5〜6台以上ある
  • ライブハウスやスタジオで、「今日はなんかハイが抜けてる…」と感じることが多い

こうした環境では、true bypassだけにこだわらず、どこかでバッファを1台入れてあげることも検討しましょう。

自分のペダルがtrue bypassかどうか見分ける方法

カタログ・公式サイトのスペック表をチェックする

一番確実なのは、メーカーの公式サイトや取扱説明書、販売ページのスペック表を確認する方法です。以下のような表記があれば、true bypass構造である可能性が高いです。

  • true bypass
  • true bypass switching
  • mechanical true bypass
  • true hardwire bypass など

海外メーカーでは略して「TBP」などと書かれていることもあります。逆に、「buffered bypass」「input buffered」などとあれば、バッファードバイパス構造だと考えられます。

電源を抜いても音が出るか?の簡易チェック

スペック表がすぐに確認できないときの目安として、電源を外した状態で音が出るかどうかをチェックする方法があります。

  • エフェクターの電池やアダプターを抜く
  • シールドでギター → エフェクター → アンプと接続
  • エフェクターをオフにして音を出してみる

この状態で音が出る場合、スイッチが機械的に入力と出力を直結している可能性が高く、true bypassの構造である場合が多いです。ただし、例外もあるため、「あくまで目安」として考えておきましょう。

迷ったら“型番+true bypass”で検索してみる

どうしても分からない場合は、エフェクターの型番と一緒に「true bypass」などのキーワードで検索してみるのも手です。ユーザーのレビューや、メーカーが公開している詳細ページから構造が分かることがあります。

どんな人・どんなボード構成にtrue bypassが向いている?

true bypassが向いているケース

true bypassのメリットを活かしやすいのは、次のような環境やプレイスタイルです。

  • 自宅メインで、シールドも比較的短い(合計10m前後)
  • ペダルの台数が2〜3台程度のシンプルなボード
  • ギターやアンプの素の音(クリーン〜クランチ)を大事にしたい
  • 「必要なときだけエフェクトをかけて、オフのときは完全に原音を出したい」と考えている

このような環境では、true bypassペダルを中心にボードを組むことで、とてもナチュラルで反応の良いサウンドが得られます。

バッファを組み合わせた方がよいケース

逆に、次のようなケースでは、true bypassだけにこだわらず、バッファ付きペダルを1〜2台組み合わせた方がサウンドが安定しやすくなります。

  • ライブハウスやスタジオを頻繁に利用し、ケーブルが長くなりがち
  • ペダルが5〜6台以上並んでいる
  • クリーン〜クランチの「抜け」や「立ち上がり」を重視している
  • ボードをつないだときに、ギター直よりも「なんとなくモコっとする」と感じる
図3 バッファ+true bypassのボード例 典型的な並び:ギター → バッファ → 歪み → 空間系 → アンプ ギター バッファ付き チューナー 歪み1 歪み2 ディレイ/リバーブ アンプ ・最初にバッファを入れて信号を安定させる ・その後にtrue bypassの歪みや空間系を並べるとバランスがよい

たとえば、次のような構成はよくあるパターンです。

  • ギター
  • バッファ付きチューナー
  • true bypassの歪みペダルを数台
  • ディレイやリバーブなどの空間系
  • アンプ

最初で信号を整え、真ん中はtrue bypassペダルを素直に並べることで、原音に忠実でありつつ、音痩せもしにくいバランスの良いボードになります。

よくあるQ&A(初心者がつまずきやすいポイント)

最後に、true bypassについて初心者が疑問に思いやすいポイントをQ&A形式でまとめます。

Q1:true bypassのエフェクターだけを集めれば、音は必ず良くなりますか?

A1:必ずしもそうとは限りません。ペダルの台数やケーブルの総延長が長くなると、true bypassだけで組んだボードでも音痩せすることがあります。ボード全体の構成やバッファの有無まで含めて考えることが大切です。

Q2:バッファードバイパスのペダルは全部やめた方がいいのでしょうか?

A2:いいえ、そんなことはありません。むしろ、1〜2台のバッファ付きペダルが入っていた方が安定する環境も多いです。特に、最初のチューナーや最後のプリアンプなどがバッファ付きだと「音の輪郭がハッキリした」と感じるプレイヤーも多いです。

Q3:手持ちのペダルをtrue bypassに改造した方がいいですか?

A3:改造にはリスクもあります。メーカー保証がなくなるだけでなく、配線ミスやノイズの増加など、思わぬトラブルにつながることも。まずはボード全体の配線やケーブル、バッファの有無を見直すことを優先し、それでも問題がある場合に、信頼できるショップで相談するのがおすすめです。

まとめ|true bypassは“正解”ではなく、選択肢のひとつ

true bypassは、

  • オフ時にエフェクト回路を通らない
  • 原音に近いサウンドを維持しやすい

という意味で、とても魅力的な構造です。ただし、ペダルの台数やケーブルの長さが増えると、それだけで音痩せの原因にもなり得るため、「true bypassさえ選んでおけば絶対に正解」というわけではありません。

大切なのは、

  • 自分のプレイ環境(自宅かライブ中心か)
  • ペダルの台数やケーブルの総延長
  • 「原音のまま」が好きなのか、「抜けの良さ」を優先したいのか

といった要素を踏まえて、true bypassとバッファードバイパスをどう組み合わせるかを考えることです。この記事を参考に、自分のボードを一度見直してみると、「なんとなくモコっとしていた音」がスッキリ解決するかもしれません。

「true bypassとは何か?」が腑に落ちれば、エフェクター選びやボードの組み方がぐっと楽しくなります。ぜひ、自分の理想のサウンドに近づくためのヒントとして活用してみてください。