strymon TIMELINE vs BOSS DD-500――両者は多くのプレイヤーに支持される人気のディレイ。どちらも音は良く、悩むのは使い回しだ。曲間で素早くプリセットを呼びたい、同一曲で二系統のディレイを切り替えたい、トレイル(エフェクトを切っても残響が自然に消える)を使いたい、ルーパーの録音時間やMIDI連携は外せないなど、要件は多い。
本特集記事では、どちらを選べばいいか迷っている人向けに、用途・操作・運用の三軸で“選ぶ基準”を紹介したい。
目次
まずは結論|タイプ別のおすすめ
こんな人に | 推奨モデル | 根拠(公式機能の要点) |
---|---|---|
アンビエントや質感づくりを重視。ノブ中心で直感的に詰めたい | Strymon TimeLine | 12 “Delay Machines”、30秒ステレオ・ルーパー(Pre/Post切替)、フィードバック・ループ、フルMIDI、アナログ・ドライ、Trails対応 |
画面で全体を把握しながら細かく編集。二系統運用や並列ルーティングを使いたい | BOSS DD-500 | グラフィックLCD、A/B同時(Simul)/Series/Parallel/Insert Loop、60〜120秒フレーズ・ルーパー、USBエディタ、Carryover(Buffered時) |
パッチ(曲数)が多く、緻密に管理したい | BOSS DD-500 | 198/297メモリー切替 |
電源が読みにくい場面の保険が欲しい | BOSS DD-500 | 単三×4本駆動可+AC(PSA) |
スペック早見表
トレイル=OFFにしても残響が自然に消える挙動/アナログ・ドライ=原音はデジタル変換を通らない(遅れが出にくい)/サンプルレート=音の“コマの細かさ”。
項目 | Strymon TimeLine | BOSS DD-500 |
---|---|---|
エンジン/モード | 12 Machines(Digital/Dual/Pattern/Reverse/Ice/Duck/Swell/Trem/Filter/Lo-Fi/dTape/dBucket) | 12 Modes(Standard/Analog/Tape/Vintage Digital/Dual/Pattern/Reverse/Tera Echo/Slow Attack/Filter/Shimmer/SFX) |
プリセット/メモリー | 200(100バンク×A/B) | 198(99×A/B)/297(99×A/B/C)切替 |
ルーパー時間 | 30秒・ステレオ(Pre/Post切替) | 60秒(96kHz/モノ・48kHz/ステレオ)/120秒(48kHz/モノ) |
最大ディレイ | ―(Machineに依存) | 最大10秒(Modeに依存) |
変換/処理 | 24bit AD/DA・96kHz/32bit float | 32bit AD/DA・96kHz/32bit float |
ドライ経路 | アナログ・ドライ | アナログ・ドライ |
バイパス/トレイル | True/Analog Buffered(Trails可) | True(リレー)/Buffered(Carryover可) |
画面/UI | 7ノブ+小型表示 | グラフィックLCD+多機能アサイン |
ルーティング | Feedback Loop(外部FXを繰り返し経路へ) | A/B Simul/Series/Parallel/Insert Loop |
電源 | 9V DC(300mA) | 単三×4 or PSA-AC/200mA |
Strymon TimeLine の特徴(モデル解説)
サウンドエンジン:12 “Delay Machines”
Digital/Dual/Pattern/Reverse/Ice/Duck/Swell/Trem/Filter/Lo-Fi/dTape/dBucket。テープ模倣(dTape)やBBD系(dBucket)で古い機材の質感、Lo-FiやFilter、Swell、Iceでテクスチャを重ねやすい。
操作:7ノブ中心の直感UI
本体前面に7ノブ+小型ディスプレイ。数値に縛られず素早く追い込める。エクスプレッションは任意のノブを複数同時に割り当て可能。
ルーパー&ルーティング
30秒・ステレオの内蔵ルーパーはPre/Post切替が可能。ループ素材にディレイをかける/かけないを選べる。さらにフィードバック・ループで繰り返しの経路に外部エフェクトを挿入できる。
保存・連携・バイパス
200プリセット(100バンク×A/B)。MIDI対応でプリセット呼び出しや各種制御が可能。アナログ・ドライを採用し、True/Analog Bufferedを選択できる。Trails(OFF後も残響が自然に続く)に対応。
電源
9V DC/約300mA。電源容量に余裕を持たせてボード設計すると安定する。
BOSS DD-500 の特徴(モデル解説)
サウンドエンジン:12 Modes
Standard/Analog/Tape/Vintage Digital/Dual/Pattern/Reverse/Tera Echo/Slow Attack/Filter/Shimmer/SFX。ShimmerやTera Echoの広がり系からアナログ/テープ模倣まで幅広い。
表示・編集:グラフィックLCDと多彩なアサイン
大きめのグラフィックLCDでタイム、フィードバック、モジュレーション等を一覧。TAP/CTLにWarp/Twist/Holdなどを割当可能。USB接続のエディタ(Win/macOS)でパッチの編集・バックアップが容易。
ルーティングと二系統運用
A/B同時(Simul)、Series/Parallel、Insert Loopに対応。2種類のディレイを直列/並列で組み替えたり、外部エフェクトを間に挟んだりできる。
ルーパー・メモリー・バイパス
フレーズ・ルーパーは60〜120秒(サンプルレートとモノ/ステレオで変動)。メモリーは198/297を切り替え可能。アナログ・ドライ、True/Buffered選択に対応し、Carryover(トレイル)も設定で有効化できる。
電源
単三×4本でも駆動、ACアダプター(PSA)にも対応。消費電流約200mA。
使い回しで差が出るポイント
プリセット(メモリー)
- TimeLine:200プリセット。A/Bを曲順に並べる運用がしやすい。
- DD-500:198/297切替。曲数が多いセットでも余裕が生まれる。
トレイル(Carryover)の挙動
- TimeLine:Analog Buffered選択でTrails有効。
- DD-500:Buffered時のみCarryover有効(Trueでは不可)。
ルーパーの使い分け
- TimeLine:30秒・ステレオ。Pre/Post切替で「ループ素材にディレイをかける/かけない」を選べる。
- DD-500:60〜120秒。長尺フレーズや重ね録りに向く。
操作性の違い(UIと足元操作)
- TimeLine:7ノブ中心。必要十分な表示で迷いにくい。EXPで複数パラメータを同時制御。
- DD-500:グラフィックLCDでタイムやパッチ情報を一画面で把握可能。TAP/CTLにWarp/Twist/Hold等を割当。
電源・ボード設計のメモ
- TimeLine:9V/300mA。電源は余裕を見て手配。
- DD-500:単三×4本またはPSAアダプター、200mA。屋外や急なセッションの保険になる。
シーン別の選び方
シーン/要件 | 最適 | 理由 |
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曲中で“クリーン反復 → 壊し系テクスチャ”を切替えたい | TimeLine | “質感系”Machinesが多彩。EXPで複数ノブ同時に動かして一気に表情を変えられる |
1曲内で2種類のディレイを重ねる/並列に分けたい | DD-500 | A/B SimulやSeries/Parallelで二系統運用が柔軟 |
ループ素材をディレイの前/後で切替えたい | TimeLine | ルーパーがPre/Postで切替可能 |
長いフレーズを重ね録りしたい | DD-500 | 60〜120秒のフレーズ・ルーパー |
パッチ切替で残響を自然に残したい | どちらも可 | TimeLineはAnalog Buffered+Trails/DD-500はBuffered+Carryover |
FAQ(よくある質問)
Q. プリセット(メモリー)数は?
A. TimeLineは200。DD-500は198/297へ切替可能。
Q. ルーパーの録音時間は?
A. TimeLineは30秒(ステレオ)。DD-500は60秒(96kHz/モノ・48kHz/ステレオ)/120秒(48kHz/モノ)。
Q. トレイル(Carryover)は使える?
A. 両機とも対応。TimeLineはAnalog BufferedでTrails、DD-500はBuffered時のみCarryover有効。
Q. アナログ・ドライ経路は採用している?
A. どちらもアナログ・ドライを採用(原音はデジタル変換を通らない)。